知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

「ひよこ」の立体商標は登録商標になれない

2006-12-03 12:14:36 | Weblog
事件番号 平成17(行ケ)10673
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成18年11月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
裁判長裁判官 中野哲弘

『 法3条2項は,法3条1項3号等のように本来は自他商品の識別性を有しない商標であっても,特定の商品形態が長期間継続的かつ独占的に使用され,宣伝もされてきたような場合には,結果としてその商品形態が商品の出所表示機能を有し周知性を獲得することになるので,いわゆる特別顕著性を取得したものとして,例外的にその登録を認めようとしたものと解される。
そして,この理は,平成9年4月1日から施行された立体商標についてもそのまま当てはまると解されるが,この場合に留意すべきことは,本件事案に即していえば,法3条2項の要件の有無はあくまでも別紙「立体商標を表示した書面」による立体的形状について独立して判断すべきであって,付随して使用された文字商標・称呼等は捨象して判断すべきであること,商標法は日本全国一律に適用されるものであるから,本件立体商標が前記特別顕著性を獲得したか否かは日本全体を基準として判断すべきであること等である。』

『 当裁判所は,被告の文字商標「ひよ子」は九州地方や関東地方を含む地域の需要者には広く知られていると認めることはできるものの,別紙「立体商標を表示した書面」のとおりの形状を有する本件立体商標それ自体は,未だ全国的な周知性を獲得するまでには至っていないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。
・・・略・・・
被告の直営店舗の多くは九州北部,関東地方等に所在し,必ずしも日本全国にあまねく店舗が存在するものではなく,また,菓子「ひよ子」の販売形態や広告宣伝状況は,需要者が文字商標「ひよ子」に注目するような形態で行われているものであり,さらに,本件立体商標に係る鳥の形状と極めて類似した菓子が日本全国に多数存在し,その形状は和菓子としてありふれたものとの評価を免れないから,上記「ひよ子」の売上高の大きさ,広告宣伝等の頻繁さをもってしても,文字商標「ひよ子」についてはともかく,本件立体商標自体については,いまだ全国的な周知性を獲得するに至っていないものというべきである。』

『したがって,本件立体商標が使用された結果,登録審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができたと認めることはできず,本件立体商標は,いわゆる「自他商品識別力」(特別顕著性)の獲得がなされていないものとして,法3条2項の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」との要件を満たさないというほかない。』

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