知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

副引用例に相違点と同一の構成が記載されていない場合に進歩性を否定した事例

2009-01-02 18:41:12 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10049
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年12月22日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

・・・
 そして,前記(2)に認定した刊行物2の係止片の形状,機能,クリップ本体における位置,取付用突起との関係等の技術事項に照らして見れば,合成樹脂材で一体成形される刊行物1記載の発明において,刊行物2の係止片を適用するに当たり,これを挿入部に相当する頭部の内側から垂下する一対の挟持部として構成することは,当業者がさしたる困難もなく試行し得た範囲の事項であると認められるから,相違点に係る本願発明の構成は当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(4) これに対し,原告らは,本願発明では,挿入部の内側から垂下する「挟持部」と挿入部の両側において外側に張り出した「係止肩」が,共に挿入部から延設され,クリップの拡開方向に対して「挟持部」が内側に,「係止肩」が外側に,独立する別部材として形成され,2重構造をしているが,刊行物2には,本願発明のこの2重構造に係る「挿入部の内側から垂下する一対の挟持部」との技術事項は記載されていないと主張する

 しかしながら,本件においては,審決は,本願発明と刊行物1記載の発明との相違点について,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術事項を適用して容易想到であると判断しているのであるから,刊行物2記載の技術事項を適用した結果として,相違点に係る本願発明の構成を容易に想到することができたかどうかが問題なのであり,必ずしも刊行物2において,相違点に係る本願発明の構成と全く同一の構成が記載されている必要はないというべきであるから,原告らの上記主張は,相違点についての審決の判断の誤りを指摘するものとして的確な主張とはいえない。
 加えて,相違点に係る本願発明の構成が,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術事項を適用して容易に想到し得たものであることは,上記(3)に説示したとおりである。

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