知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

検討済みが立証も、記載はなし

2006-02-26 16:51:37 | 要旨変更・新規事項の追加
◆H14.12.12 東京高裁 平成13(行ケ)294 特許権 行政訴訟事件

(特定事例での説明のみで、問題の一般化した不等式も記載無し)
『当初発明では,この不等式を導き出すに当たり,「現像ローラーのシャフトの最大撓みW1」を,材料を特定しない一般式を基に検討するのではなく,ステンレス鋼の縦弾性係数を用いて算出しており,ステンレス鋼以外の材料については,W1を算出し,「W1<2×W2」が成立するかどうかについての検討をしていないことは,前記のとおりである。したがって,ステンレス鋼以外のシャフト材の縦弾性係数を用いた式で,シャフトの半径rがどのような不等式で表される値になるのかは記載されていないのである。』

(検討はされていたと立証しても、記載されていない事実は変わらない。)
『現像装置に使用される通常のシャフト材一般について,補正後の不等式により,適切なシャフトの半径rが算出しうることが実際に検証されていたとしても(付言するに,そうであると認めるに足りる証拠はない。),その事実は,現に補正後の不等式が記載されていないという事実を,解消し得るものではない。』

(当初明細書の記載に基づき,補正後の不等式が自明ということはできない。)
『当初明細書の記載から,シャフト材をステンレス鋼からそれ以外の一般に用いられる材料に変更した場合に,シャフトの半径rを規定する不等式において,当初の不等式において前提となっているステンレス鋼の縦弾性係数の数値を,ステンレス鋼以外の具体的な材料の縦弾性係数の数値あるいは一般的にEsと変更して変形しただけで,現像ローラーと潜像担持体の良好な圧接状態を保つことができる条件を示すことが,本件出願当時当業者にとって自明であった,ということはできない。すなわち,当初明細書の記載に基づき,補正後の不等式が自明ということはできない。』

(感想)
 当初明細書から自明であるかどうかを、挙証責任を原告(出願人)に負わせて検討している。検討していることが立証されても、記載されて(いるに等しく)なければならないとするのは、通説どおりで、そして、それは、もっとも合理的であると思う。

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