知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

実施可能要件を充足するとした事例

2013-05-07 22:34:53 | 特許法36条4項
事件番号 平成24(行ケ)10020
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、 裁判官 井上泰人,荒井章光

ウ 被告は,原告が主張する蛍光体の効率を低下させる因子は,本件明細書には記載されておらず,そのほかの因子も存在するから,本件発明1の赤色蛍光体において,どの因子が重要で,どの因子が重要でないかは,当業者でも理解できないし,窒化物蛍光体及び酸窒化物蛍光体には,化学組成により様々な結晶構造を有する蛍光体が存在するから,様々な種類の蛍光体の製造に当たり,確実に内部量子効率の向上をもたらす普遍的な製造方法は知られていないと主張する。

 しかしながら,前記のとおり,原告が指摘する各因子がいずれも蛍光体の効率を低下させるものであることは,本件出願時において当業者に周知の事項であったと認められるから,蛍光体を製造する際に,これらの因子について通常の試行錯誤を行うことは当業者の通常の創作活動というべきであって,当業者にとって困難なことということはできない。また,蛍光体化合物の種類によって,いずれの最適化方法を採用するかについて試行錯誤を行うことも,同様に,当業者の通常の創作活動というべきである。

(4) 小括
 よって,仮に,本件構成3について,個々の蛍光体の内部量子効率がそれぞれ80%以上であることが必要であると解するとしても,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者が内部量子効率80%以上の赤色蛍光体を製造することができる程度の記載がされているものということができるから,本件発明1について,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足しないとした本件審決の判断は誤りである。

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