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知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

引用形式の請求項の訂正で独立特許要件の検討を要する場合

2007-07-14 10:38:37 | Weblog
事件番号 平成18(行ケ)10485
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年07月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

『(2)アところで,平成3年1月28日に出願された本件特許の訂正に適用される平成6年法律第116号による改正前の特許法126条によれば,

1項:特許権者は,第123条第1項の審判が特許庁に係属している場合を除き,願書に添付した明細書又は図面の訂正をすることについて審
判を請求することができる。ただし,その訂正は,願書に添付した明
細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず,か
つ,次に掲げる事項を目的とするものに限る。
 1 特許請求の範囲の減縮
 2 誤記の訂正
 3 明りょうでない記載の釈明

2項:前項の明細書又は図面の訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない。

3項:第1項ただし書第1号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特
許を受けることができるものでなければならない。
 とされていることから,本件訂正に係る(新)請求項5ないし11(訂正事項2~8)が「特許請求の範囲の減縮」に該当すれば上記独立特許要件(上記126条1項3項)が訂正の可否の審査要件となるが「誤記の訂正」又は「明りょうでない記載の釈明」であれば独立特許要件が訂正の可否の審査要件となることはないことになる。』

『『(イ) 訂正事項4
この訂正は,前記認定のとおり,旧請求項7を新請求項7とするものであって,訂正前の旧請求項1または旧請求項6を引用する請求項の形式から旧請求項6のみを引用する請求項の形式に変更するものであるから,内容が実質的に減少しており,特許請求の範囲の減縮に該当するというほかない
被告は,旧請求項7と新請求項7,8とを対比すれば,その技術的内容に変更がないのであるから,特許請求の範囲の減縮に該当しないと主張する。しかし,平成6年法律第116号による改正前の法36条5項の規定等から明らかなように,特許請求の範囲は,特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した項である請求項に区分して記載しなければならず,同発明の有効性(新規性,進歩性等)についてもかかる各請求項毎に独立して判断され,放棄も各請求項毎にできるものであることに照らせば,減縮の有無も各請求項毎に判断されるべきものであるから,被告の上記主張は失当である
(ウ) 訂正事項5
この訂正は,前記認定のとおり,訂正前の旧請求項1又は旧請求項6を引用する旧請求項7から旧請求項1を引用する請求項を独立請求項に変更するとともに,請求項の項番を新たな新請求項8とするものであって,上記(イ)に照らし,特許請求の範囲の減縮に該当する。
・・・
(オ) 訂正事項7
この訂正は,訂正前の旧請求項1又は旧請求項8を引用する請求項の形式から,旧請求項8のみを引用する新請求項10に変更するものであって,上記(イ)に照らし,特許請求の範囲の減縮に該当する。
(カ) 訂正事項8
この訂正は,訂正前の旧請求項1又は旧請求項8を引用する請求項から旧請求項1を引用する請求項の形式を独立請求項の形式に変更するとともに,請求項の項番を新たな新請求項11とするものであって,上記(イ)に照らし,特許請求の範囲の減縮に該当する。』

『ウ上記イの検討によると,本件訂正の訂正事項4,5,7及び8については「特許請求の範囲の減縮」に該当するところ,審決は,前記のとおり「明りょうでない記載の釈明」に当たるとして,独立特許要件の判断をしないで本件訂正を認容したものであるから,違法というほかない
エもっとも,訂正に係る新請求項5ないし11について独立特許要件が具備されていると判断されるのであれば,上記判断の遺脱は審決の結論に影響を及ぼさないと解する余地がある。しかし,新請求項5ないし11が引用するのが新請求項1(訂正発明)であれば後記のとおり独立特許要件を具備していると解されるものの,前記のとおり新請求項5ないし11が引用しているのは実質的には旧請求項1であって,同請求項は,第1次審決(甲11)が指摘するように,特許要件を欠くと解されるから,結局,上記判断の遺脱は審決の結論に影響を及ぼすというべきである。』

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