知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

違法複製に係る損害賠償請求の時効と損害の立証

2008-02-10 11:51:15 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)16218
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 設樂隆一

8 争点9(消滅時効の成否)について
(1) 原告Aは,本件土地宝典の著作権の譲渡を受ける以前に,Cから,法務局や役所等で勝手に土地宝典のコピーを取らせるために,土地宝典の販売がうまくいかず,改訂版の発行すらできない状況になってしまったとの趣旨のことを聞かされていた(甲22)。また,原告らは,平成12年6月30日に本件土地宝典の一部を買い取って以降,複数の不動産鑑定士に本件土地宝典の買い取りを打診したものの,それらの者がいずれも,土地宝典は法務局でコピーを取得することが可能なため,一般需要者へ販売することは極めて困難である,との理由で買い取りを拒絶したため,原告らにおいて,順次本件土地宝典を買い取ることにしたものである(甲22)。
さらに,原告らは,本件土地宝典の著作権の譲渡を受ける際,その各譲渡契約書に「甲の権利として認められる違法コピー等に対する損害賠償請求権等の求償権は本日以降乙に無償にて移転すると明記している(甲7の1ないし甲7の10)。

そうすると,原告らは,遅くともかかる譲渡契約のうち最終のものが締結された平成13年10月31日までには,各法務局において本件土地宝典が貸し出され,それが無断で複製されていたとの事実,及び,これにより既に損害が発生し,今後も損害が発生し得べきことを知っていたものと認められる

 したがって,原告らが本件土地宝典の著作権の譲渡を受けた日から本訴提起日の3年前である平成14年8月7日までの間の違法複製に係る損害賠償請求権については,原告らは損害賠償請求権の発生と同時に,加害者たる被告に対する賠償請求が可能な程度に損害の発生を知ったものというべきであり,これらについては本件訴訟提起前に消滅時効が完成したものと認められる。そして,被告がかかる消滅時効を援用したことは当裁判所に顕著な事実であるから,被告の消滅時効の抗弁は理由がある。

(2) これに対して,原告らは,被害者たる原告らが損害の発生を現実に認識したのは,本件訴訟における被告の答弁の時であり,早くてもいくつかの法務局を調査して内容証明郵便を発送した平成16年9月30日であるから,平成17年8月8日の本訴提起により消滅時効は中断した旨主張する。
 しかしながら,本件について,個々の法務局における具体的な違法複製行為の認識が必要であると考えると,本件訴訟を提起した後に消滅時効の起算点が到来することになるが,このように権利行使したにもかかわらず消滅時効の起算点が到来していないという考え方は,権利を行使することができる時から消滅時効が進行する旨を定める民法166条1項と相容れないものというほかなく,採用することができない。

 また,既に述べた本件土地宝典の著作権の各譲渡契約書の記載によれば,原告らは,本件土地宝典の著作権の譲渡時において,既に法務局における本件土地宝典の違法複製により現に損害が発生し,今後も損害が発生し得べきことを知っていたものと認められるから,いくつかの法務局を調査して内容証明郵便を発送した平成16年9月30日が消滅時効の起算点になるとの原告らの主張も採用することはできない

9 争点10(不当利得の成否)について
 原告らは,被告が,法務局内のコインコピー機における不特定多数の一般人による本件土地宝典の無断複製行為について,その侵害主体であることを前提として,法律上の原因なくして,本来支払われるべき本件土地宝典の使用料を免れてこれと同額の利益を取得した,と選択的に主張する。

本件において,本件土地宝典を違法に複製した共同侵害主体と評価し得る者が被告と民事法務協会であることは前記認定のとおりである。したがって,被告は,民事法務協会と共に,法務局内において不特定多数の一般人により行われた本件土地宝典の複製行為により本来支払われるべき使用料の支払を免れてこれと同額の利益を得たものというべきであり,原告らは,これにより損失を被ったものである。よって,原告らの不当利得の請求は理由があるので,消滅時効が成立する期間内の侵害行為について,不当利得の請求が認められる

10 争点4(損害額)及び損失額について
(1) 原告らは,被告が法務局備付けの本件土地宝典を利用者に貸し出して,法務局内に設置のコインコピー機により利用者をして無断複製行為をなさしめたことにより,本件土地宝典の販売部数が減少し,逸失販売利益の損害を被ったと主張する。

しかし,本件に顕れたすべての証拠を精査検討しても,本件土地宝典について,そもそも不特定多数の者による本件土地宝典の違法複製行為が各法務局においてどの程度の頻度でどの程度なされたかが不明であり,また,違法複製行為を放置したことにより,本件土地宝典の販売部数の減少が生じ得るとしても,複製行為をした者のうち,どの範囲の者が複製行為をすることができなければ本件土地宝典を購入したかについても全く不明である。
したがって,本件については,被告が違法複製行為を放置したことにより,原告らに本件土地宝典の逸失利益の損害が生じたとしても,その損害の額を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。

(2) しかし,原告らには,本件土地宝典の不特定多数の一般人による無断複製行為により,使用料相当額の損害が生じており,原告らは,民事法務協会と共にその共同侵害主体である被告に対し,同額の損害賠償を請求することができる民法709条,719条,著作権法114条3項)。
 ただし,本件においては,上記のとおり,違法複製行為がなされた回数を特定することが極めて困難であるから,原告らに損害が生じたことは認められるものの,「損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるとき」(著作権法114条の5に当たる
・・・
 また,原告らは,消滅時効が認められる期間については,使用料相当額の不当利得の主張をしており,この使用料相当額も,本件土地宝典各1冊につき1年当たり平均1万円として,120冊全体で1年当たり120万円と認めるのが相当である(著作権法114条の5の類推適用。』

損害賠償請求権を譲り受けた数年後に権利を行使したのは信義則に反し権利の濫用であるし権利の濫用であるか

2008-02-10 11:50:23 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)16218
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 設樂隆一

『7 争点8(信義則違反の有無)について
 被告は,原告らが,本件土地宝典の著作権を損害賠償請求権と共に譲り受け,その数年後に権利を行使したのは,信義則に反し,権利の濫用である,と主張する。
 しかし,本件に顕れたすべての証拠を精査検討しても,原告らの損害賠償請求権の行使が信義則に反し,権利の濫用に当たると認めるに足りる証拠はなく,被告の主張は失当である。

 被告は,Cが法務局における第三者による無断複製行為を黙認していたと主張する。しかし,そのような事実を認めることができないことは既に述べたとおりである。
 また,権利者が権利を行使するかしないか,行使するとしてもそれをいつ行使するのかは権利者の自由であり,権利者が一定期間権利を行使しなかったことは消滅時効制度によって権利者に不利益となるのが原則であり,権利の濫用を基礎付ける有力な事情の一つとして評価されるのは例外的な場合に限られるというべきである。

 本件においても,原告らは,後に述べるとおり,一定期間権利を行使しなかったことにより,消滅時効制度により不利益を被っているのであり,それ以上に,これを権利の濫用を基礎付ける有力な事情の一つとして評価して,自ら不法行為を継続した被告を救済すべき事情は見当たらない。』

著作権法38条4項の趣旨は法務局窓口での貸出に及ぶか

2008-02-10 11:42:04 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)16218
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 設樂隆一

『5 争点6(著作権法38条4項の趣旨は法務局窓口での本件貸出に及ぶか)について被告は,著作権法は,38条4項に基づいて書籍等を借り受けた者が,私的使用以外の目的で複製した場合についても,著作物の貸出しが著作権を侵害することを予定していないと解するのが相当である,と主張する。

 しかし,著作権法38条4項は,昭和59年の法改正により貸与権(26条の2)が創設されたのに伴って,改正前から行われていた図書館,視聴覚ライブラリー等の社会教育施設やその他の公共施設における図書や視聴覚資料の貸出を,地域住民の生涯学習の振興等の観点から,改正後も円滑に行うことができるようにする目的で,貸与権を制限することにしたものである。

 このように,著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない。被告の主張は採用することができない。

 また,本件土地宝典については,その利用者である不動産関係業者や金融機関の関係者が業務上利用する目的で,貸出を受けた上でこれを複写することが多いことは明らかであるから,これらの行為が著作権法30条1項の私的使用目的での複製に該当しないことも自明である。この点に関する被告の主張も採用することができない。』

コピー機設置場所の提供が著作権を侵害する不法行為に該当するか

2008-02-10 11:41:23 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)16218
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 設樂隆一

『3 争点3(被告の行為(本件土地法典の貸出及び民事法務協会に対する法務局内におけるコピー機設置場所の提供)が本件土地宝典の著作権を侵害する不法行為に該当するか)について
(1) 証拠(甲30,甲33,甲34,甲35,乙20,乙21)によれば,次の事実が認められる。

ア 本件土地宝典の管理状況
 法務局にある本件土地宝典は,法務局職員により管理されており,一般人が本件土地宝典の閲覧及び複写を申し込むと,法務局職員が本件土地宝典を申込者に貸与する。ただし,貸与された本件土地宝典の閲覧は,改ざん防止のため,法務局内においてのみ許されており,これを外部に持ち出すことはできないため,その複写をする場合は,法務局内に設置されたコインコピー機によってのみ複写することになる。

イ 法務局内のコインコピー機の管理状況
・・・

ウ 民事法務協会と被告の関係
 民事法務協会は,法務省所管の財団法人であって,その事業の一つとして,法務局において公図等を閲覧する人の利便等を図るため,同所にコインコピー機を設置し,その管理運営に当たっているものである。
 すなわち,民事法務協会は,法務局の貸与する図面等の複写について独占的な事業を営んでいるものである。そのため,コインコピー機の利用料金は市中にあるコインコピー機よりやや高額に設定されている。なお,被告は,コインコピー機の設置に関し,国有財産法18条3項及び19条に基づいて,法務局の建物の一部の使用を許諾し,民事法務協会から,国有財産の使用料を徴収している。

(2) 上記認定事実によれば,本件土地宝典は,広範な地域の公図及び不動産登記簿等の情報を一覧することができるため,不動産関係業者等が郊外地や山林地などの物件調査をするにあたって重用されており,また,各種申請における添付資料とされていることなどから,遅くとも原告らが本件土地宝典の著作権を譲り受ける以前から,現在に至るまで,不動産関係業者等をはじめとする不特定多数の第三者が,上記のような業務上の利用目的をもって,各法務局に備え置かれた本件土地宝典の貸出を受けて,各法務局内に設置されたコインコピー機において複製行為をなしてきたことは容易に推認し得るところである(甲14)。

 一方,このような公的申請の添付資料や物件調査資料としても使われるという本件土地宝典の性質上,貸出を受けた第三者がこれを謄写することは十分想定されるのみならず,閲覧複写書類の改ざん防止の見地から,コインコピー機は法務局が直接管理監督している場所に設置されているものであるから,各法務局は,本件土地宝典が貸し出された後に複写されているという事情については,十分に把握していたはずである。また,民事法務協会がコインコピー機を設置しているとはいえ,同協会は法務省所管の財団法人であって,被告が同協会に対し法務局内のコインコピー機設置場所の使用許可を与えており,かつ,実際にコインコピー機設置場所の管理監督をしているのは上記のとおり,各法務局である。

 よって,被告(各法務局)は,本件土地宝典の貸出を受けた者がこれを複写しているという事情を十分に把握していたのであるから,この複製行為を禁止する措置をとるべき注意義務があったのに禁止措置をとらず,漫然と本件土地宝典の貸出行為及び不特定多数の一般人による複製行為を継続させたことにおいて,本件土地宝典の無断複製行為を惹起させ,継続せしめた責任があるといわざるを得ない。
 また,民事法務協会は,コインコピー機の直接の管理者であり,不特定多数の一般人をして本件土地宝典の無断複製行為をさせ,これにより利益を得ていたのであるから,本件土地宝典の複製行為については,その侵害主体であるとみるべきである。そして,被告(各法務局)が本件土地宝典の複製を禁止しなかった不作為についても,被告が民事法務協会に対しコインコピー機の設置許可を与え,同設置場所の使用料を取得し,同コピー機が法務局が貸し出す図面の複写にのみ使用されるものであること,法務局がコインコピー機の設置場所についても直接管理監督をしていることを考慮すると,各法務局がコインコピー機の使用に関し,民事法務協会と共に直接これを管理監督していたものと認められ,各法務局についても,不特定多数の一般人による本件土地宝典の複製行為について,単なる幇助的な立場にあるとみるよりは,民事法務協会と共に共同正犯的な立場にあるとみるのが相当である。

 以上によれば,民事法務協会と被告とは,本件土地宝典の不特定多数の一般人による上記複製行為について,共同侵害主体であると認めるのが相当である。

 なお,被告は,本件土地宝典の複製行為により直接の利益を得ているわけではない。しかし,被告は,本件土地宝典の複製行為により利益を得ている民事法務協会からコインコピー機の設置使用料を取得しているものである。また,本件土地宝典の複製行為については,民事法務協会と被告とが共同侵害主体であると評価すべきことは前記のとおりであるから,共同侵害主体と評価し得る者のいずれかが複製行為により利益を得ているだけで足りると解すべきである。

 被告は,本件のように,被告の行為による権利侵害の蓋然性は高いとはいえず,被告には結果発生の予見可能性すらない上,現実に権利侵害が発生している立証すらない場合については,被告の行為を著作権侵害行為と評価できない,と主張する。

 しかし,本件土地宝典の貸出とコインコピー機の設置により,不特定多数の一般人による本件土地宝典の違法複製行為が発生する蓋然性が高く,実際に複製行為がなされていたこと,及び,被告がその結果を十分に予見し,かつ,認識し得たことは前記認定のとおりである。被告の上記主張は採用し得ない。』

土地宝典の著作物性

2008-02-10 11:40:45 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)16218
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 設樂隆一


『1 争点1(本件土地宝典の著作物性)について
(1) 地図の著作物性について
 本件土地宝典は,地図の一種であると解されるので,まず,地図の著作物性について検討する。

 一般に,地図は,地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号によって,客観的に表現するものであるから,個性的表現の余地が少なく,文学,音楽,造形美術上の著作に比して,著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例である。
 しかし,地図において記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては,地図作成者の個性,学識,経験等が重要な役割を果たし得るものであるから,なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そこで,地図の著作物性は,記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して,判断すべきものである。

(2) 本件土地宝典の著作物性について
本件土地宝典は,民間の不動産取引の物件調査に資するという目的に沿って作成されるものであり,次のような特徴を備えている。
ア 本件土地宝典は,
・・・

イ本件土地宝典においては,素材とされた複数の公図が単に接合されてい
るにとどまらず,・・・

ウ 以上によれば,本件土地宝典は,民間の不動産取引の物件調査に資するという目的に従って,地域の特徴に応じて複数の公図を選択して接合し,広範囲の地図として一覧性を高め,接合の際に,公図上の誤情報について必要な補正を行って工夫を凝らし,また,記載すべき公図情報の取捨選択が行われ,現況に合わせて,公図上は単に分筆された土地として表示されている複数の土地をそれぞれ道路,水路,線路等としてわかりやすく表示し,さらに,各公共施設の所在情報や,各土地の不動産登記簿情報である地積や地目情報を追加表示をし,さらにまた,これらの情報の表現方法にも工夫が施されていると認められるから,その著作物性を肯定することができる。

エ これに対して,被告は,次のように反論する。しかし,これらの主張はいずれも理由がない。

a) 被告は,公図をまとめ,地目,地積等を表示するという形式は,明治初期に刊行された土地宝典において既に採用されており,本件土地宝典はその模倣ないし亜流にすぎないから,公図の二次的著作物といえるだけの創作性は認められないと主張する。

 しかし,被告が本件土地宝典に先立って発行された土地宝典と本件土地宝典とで同一である旨指摘する点は,抽象的な編集方法ないし編集方針(アイディア)の共通性にすぎないというべきである。特定の地域を対象とする本件土地宝典とその余の土地宝典とで,その対象とする地域が異なる限り,そもそも地図の対象となる素材が異なるのであるから,抽象的な編集方法ないし編集方針が共通していたとしても,これにより本件土地宝典の創作性が否定されるものではない。なお,本件土地宝典と同一の地域を対象とし,本件土地宝典より先立って発行されたとする土地宝典が存在するとの証拠もない。

b) 被告は,本件土地宝典は,地目,地積等の情報は付加されているものの,その資料としての価値の大部分は,法務局備付けの公図をそのまま縮小した点にあり,したがって,本件土地宝典が,公図を接合し,各種情報を付加して作成されていても,それは,公図を変形,翻案して新たな地図として創作されたというまでには至っていないというべきであり,本件土地宝典は公図の二次的著作物とは認められない,と主張する。

 しかし,本件土地宝典は,上記のとおり,複数の公図を選択し,これを接合してより広範囲の地図とし,その際に公図上の誤情報を補正したり,また,公図情報に加え,道路,水路,鉄道などの現況情報,公共施設の所在情報,地積,地目表示などの不動産登記簿情報を付加して作成されたものであり,不動産取引の前提となる物件調査に必要な民有地の情報を優先して取捨選択して表示したものである。
 そして,土地宝典といっても,その作成者により,その情報の取捨選択や表示方法に個性が存在することは前記のとおりであるから,本件土地宝典を公図の二次的著作物として保護すべきである。被告の主張は採用することができない。

c) 被告は,公図自体が,水路は青,道路は赤で彩色しているのであり(乙16),本件土地宝典は色を変えたにすぎない,とも主張する。
 しかし,公図によっては,例えば,水路を水色に表示するものもあるとしても(乙16),前提となる事実認定のとおり,このような表記方法は一部のものにすぎず,公図については各都道府県により異なった表記方法となっているのであり,本件土地宝典に対応する公図については,前記認定のとおり,現況が水路や道路等でも,単に分筆された土地として表示されている部分も多いのである。被告の上記主張は,採用することができない。』