知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

本願発明が引用発明の後退発明である時の動機付け

2006-03-02 22:08:56 | 特許法29条2項
◆H17. 9.21 知財高裁 平成17(行ケ)10026 特許権 行政訴訟事件
条文:特許法29条2項

【概要】
 本件特許出願は、特許出願(特願平3-332242号)をし、その一部につき、新たな特許出願(特願平11-111391号)をし,さらに,上記分割出願の一部につき、新たな特許出願(特願2000-331145号)をしたもの。
 本件出願は、平成13年8月7日に拒絶査定を受け、不服審判に係属。特許庁は、これを不服2001-15789号事件として審理し、「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をしたが、東京高等裁判所は、上記審決を取り消した。
 特許庁は,不服2001-15789号事件について更に審理して「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。

【争点】
 引用例1は、分波器及び周辺回路をモジュール化しようとするのが目的であって、分波器モジュールから、分波器の部分だけを取り出すという変形をすること自体が引用例1の目的に反するものであるから、そのような変形をして分波器単体部分を取り出すことを可能にする動機付けがあるとはいえないか、
 
【判示事項】
 『要するに、原告のいう、分波器モジュールから,分波器の部分だけを取り出すという変形とは,分波器とその他の部品とを分離することであって,単に,引用発明1を従来の技術に戻すということにすぎないのである。そして,進歩した技術を進歩する前の技術に戻すことに格別の動機付けが必要とはいえない』

(感想)
 引用発明を引用発明の従来技術相当の構成に戻すことには、動機付けはいらないと明言している。あたりまえのように思うが、実は、意外におおい状況設定ではないかと思う。
 結論は、やはり、判示事項のようにすべきだと思う。