三日前の記事「寺社めぐり(4)」の余談になるが、彦根在勤時代、滋賀県内の高校をリクルートして廻った。彦根から琵琶湖東岸を南下し、琵琶湖大橋を渡ると堅田高校や北大津高校を廻って比叡山高校へというルートをとった。その比叡山高校からほど近いところにあったのが山王系神社の総本社日吉大社である。当時は能楽にはあまり興味を持っていなかったが、リタイア後、能楽に親しむようになってから日吉大社が能楽史上とても重要な存在であったことを知り、当時のことがとても残念でならない。日吉大社が鎮座する坂本は近江猿楽の拠点の一つとなっていた比叡座があったところ。天女舞で知られる犬王(道阿弥)は世阿弥の能にも大きな影響を与え、今日、能の重要な要素である「幽玄」は犬王の芸風から始まったといわれる。その後、消滅した近江猿楽を、近江猿楽の拠点の一つであった琵琶湖東岸の多賀大社の地域住民の皆さんが復元活動を行っておられるようで心強い。多賀大社は彦根時代の住まいに近く、初詣や来客の案内もした馴染み深い神社なので、いつか復元された近江猿楽を見に行きたいと願っている。
日吉大社東本宮楼門
天女舞
日吉大社東本宮楼門
天女舞