徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

原始日本語のはなし。

2015-02-05 20:19:25 | 歴史
 郷土史について勉強を始めると、地名や村名などの名称が気になってきて、最近、原始日本語に関する図書を読み始めた。というのは、中にはムリヤリな当て字としか思えないものも結構あるからだ。人間の言葉というのは、音がまずあって、それに文字が生まれて当てはめていったものが多いのだろう。だから、言葉の意味を漢字から読み取ろうとすると間違うことが多いのではないかと思う。
 例えば、熊本市に「八景水谷(はけのみや)」という湧水で有名な行楽地がある。この名前は肥後細川藩五代の綱利公が、ここに茶屋を作り、近江八景になぞらえて命名したと伝えられる。しかし、ここは菊池台地の崖下にあり、もともと「ハケ」と呼ばれていたという。原始日本では崖のことを「ハケ」「ハキ」「ホキ」「ホケ」「ツエ」「クエ」等々、地方によっていろんな言葉で言い表してきたという。だから、四国徳島の名勝、大歩危・小歩危(オオボケコボケ)峡や、大分県の中津江(ナカツエ)村、熊本県小国町の杖立(ツエタテ)なども、原始の日本語がその由来かもしれない。そう言えば崖が崩れることを「クエル」とか「クユル」というのを思い出した。
 話は変わるが、柳田國男の「踊の今と昔」の「念佛踊」の章に「肥後上盆城郡乙女村大字津志田なるヒナイ神の社頭に於ける七月十四十五日の念佛踊」と肥後國志からの引用が見られる。この「ヒナイ神」なる神の名も原始の日本語と考えられる。「ヒナイ」という地名は日本各地にあり、「比内」とか「火内」などいろんな漢字表記が見られるが、これがまさに当て字なのだろう。「ヒナイ」とは「小石の川」や「沢」のことを表す原始語だと説明する文献もあり、その語源は西表島に残るアイヌ語の痕跡「ピナイ」であると説明する研究者もいる。


八景水谷公園