鄙ぶりの唄
茨木のり子
それぞれの土から
陽炎のように
ふっと匂い立った旋律がある
愛されてひとびとに
永くうたいつがれてきた民謡がある
なぜ国家など
ものものしくうたう必要がありましょう
おおかたは 侵略の血でよごれ
腹黒の過去を隠しもちながら
口を拭って起立して
直立不動でうたわなければならないか
聞かなければならないか
私は立たない 坐っています
演奏なくてさみしい時は
民謡こそがふさわしい
さくらさくら
草競馬
アビニョンの橋で
ヴォルガの舟歌
アリラン峠
ブンガワンソロ
それぞれの山や河が薫りたち
野に風は渡ってゆくでしょう
ちょいと出ました三角野郎が
八木節もいいな
やけのやんぱち 鄙ぶりの唄
われらのリズムにぴったしで
卒業式が近くなると あの歌を歌うか歌わないかが 問題になります
ここでは その是非について 述べるつもりはありません
ただ 歌わなければ 罰を与えるまでして
この歌を 歌わせることにこだわるのか
わたしには 理解することができません
どんな歌であれ
歌う自由も 歌わない自由も あると
わたしは思います
茨木のり子
それぞれの土から
陽炎のように
ふっと匂い立った旋律がある
愛されてひとびとに
永くうたいつがれてきた民謡がある
なぜ国家など
ものものしくうたう必要がありましょう
おおかたは 侵略の血でよごれ
腹黒の過去を隠しもちながら
口を拭って起立して
直立不動でうたわなければならないか
聞かなければならないか
私は立たない 坐っています
演奏なくてさみしい時は
民謡こそがふさわしい
さくらさくら
草競馬
アビニョンの橋で
ヴォルガの舟歌
アリラン峠
ブンガワンソロ
それぞれの山や河が薫りたち
野に風は渡ってゆくでしょう
ちょいと出ました三角野郎が
八木節もいいな
やけのやんぱち 鄙ぶりの唄
われらのリズムにぴったしで
卒業式が近くなると あの歌を歌うか歌わないかが 問題になります
ここでは その是非について 述べるつもりはありません
ただ 歌わなければ 罰を与えるまでして
この歌を 歌わせることにこだわるのか
わたしには 理解することができません
どんな歌であれ
歌う自由も 歌わない自由も あると
わたしは思います