norinorimiffyの日記

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鄙ぶりの唄

2010年02月23日 | Weblog
    鄙ぶりの唄
       茨木のり子

 それぞれの土から
 陽炎のように
 ふっと匂い立った旋律がある
 愛されてひとびとに
 永くうたいつがれてきた民謡がある
 なぜ国家など
 ものものしくうたう必要がありましょう
 おおかたは 侵略の血でよごれ
 腹黒の過去を隠しもちながら
 口を拭って起立して
 直立不動でうたわなければならないか
 聞かなければならないか
      私は立たない 坐っています

 演奏なくてさみしい時は
 民謡こそがふさわしい
 さくらさくら
 草競馬
 アビニョンの橋で
 ヴォルガの舟歌
 アリラン峠
 ブンガワンソロ
 それぞれの山や河が薫りたち
 野に風は渡ってゆくでしょう
 
    ちょいと出ました三角野郎が
 八木節もいいな
 やけのやんぱち 鄙ぶりの唄
 われらのリズムにぴったしで


卒業式が近くなると あの歌を歌うか歌わないかが 問題になります
ここでは その是非について 述べるつもりはありません
ただ 歌わなければ 罰を与えるまでして
この歌を 歌わせることにこだわるのか
わたしには 理解することができません

どんな歌であれ
歌う自由も 歌わない自由も あると
わたしは思います