くじけないで
柴田トヨ
ねえ 不幸だなんて
溜息をつかないで
陽射しやそよ風は
えこひいきしない
夢は
平等に見られるのよ
私 辛いことが
あったけれど
生きていてよかった
あなたもくじけずに
今朝の新聞の訃報欄に 優しい笑顔がありました
柴田トヨさん101歳 20日老衰のため死去
2009年に平易な言葉で日常を綴った「くじけないで」を自費出版 2010年に飛鳥新社から出版され
前向きな作風が中高年女性らの共感を集め 詩集では異例の150万部突破のベストセラーとなった
100歳を迎えた 2011年には「百歳」を出版 両作で計200万部を超えた
はじめに ご紹介した 「くじけないで」は 詩集「くじけないで」の中の詩です
100年近く生きていれば 辛いこと いっぱいいっぱいあったと思います
だからこそ
生きていてよかった
という言葉には実感を感じます
「くじけないで」には まだまだ素敵な詩がたくさんあります
幾つか ご紹介したいと思います
朝はくる
一人で生きていく
と 決めた時から
強い女性になったの
でも 大勢の人が
手をさしのべてくれた
素直に甘えることも
勇気だとわかったわ
(私は不幸せ・・・・・)
溜息をついている貴方
朝はかならず
やってくる
朝陽も
射してくる筈よ
素直に甘えることも勇気 朝はかならずやってくる
その言葉に 救われます
トヨさんがどんな方だったのか よく知らない私ですが
ちょっとユーモラスで 彼女らしいな と わたしが勝手に思っている詩を 二つご紹介します
先生に
私を
おばあちゃん と
呼ばないで
「今日は何曜日?」
「9+9は幾つ?」
そんな バカな質問も
しないでほしい
「柴田さん
西条八十の詩は
好きですか?
小泉内閣を
どう思います?」
こんな質問なら
うれしいわ
九十六歳の私
柴田さん
なにを考えているの?
ヘルパーさんに
聞かれて
困ってしまいました
今の世の中
まちがっている
正さなければ
そう思って
いたからです
でも結句溜息をついて
笑うだけでした
前向きで おきゃんな柴田さん
向こうでも 詩を書き続けてくださいな
ご冥福をお祈りいたします
合掌