norinorimiffyの日記

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志村ふくみ 作品展

2016年02月12日 | 芸術

ずっと前に 何気なくテレビを見ていたら

一心に機を織る一人の女性の姿がありました。

彼女は染色家で 様々な色に糸を染め 機を織っていたのでした。

その時  画面でふと目にした桜色の糸。

そのあまりに優しい色合いが わたしの心をひきつけました。

桜の花びらの色? でもそれよりもまだ初々しいこの感じは・・・

そう思ってみていると 染める工程が映し出されました。

驚いたことに そのやさしい色は 花びらからではなく 樹皮から出た樹液で染め上げたものでした。

後に 大岡 信さんの「言葉の力」という文章の中に こんな一節を見つけました。


志村さんは続いてこう教えてくれた。この桜色は一年中どの季節でもとれるわけではない。桜の花が咲く直前の頃、山の桜の皮をもらってきて染めると こんな上気したような えもいわれぬ色が取り出せるのだ。と

 

およそ桜色とは縁遠く感じる 桜の樹皮から美しい色を取り出して染め上げる

その女性のことが わたしの心に深く残りました。

 

その女性。志村ふくみさんの 母衣(ぼろ)への回帰 という作品展が

京都国立近代美術館であるというので 昨日早速行ってまいりました。

 

素敵な色のストールも売っていたのですけれど ちょっと手に届かなかったので 作品を写したポストカードです。

こんなものでは あらわし尽くせない色がたくさんあったのですけれど

どれも 草木で染めたもの。

藍はもちろんおなじみですが 玉ねぎ ベニバナ 百日紅 朴の木などいろいろな植物で染め上げてありました。

わたしは 着物を着ることがほとんどありませんが こんな着物ならちょっと着てみたい。そんな気持ちになりました。

 

機を織っていて しばしば手は考えていると 実感することがある。

頭で考えているより先に手が色を選ぶ。リズムをつかむ。

そういうとき 思いがけない音色が生まれる。(志村ふくみ)

 

音に色があるように 色にも音がある。そんな気がした 作品展でした。