虫干し映画MEMO

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ボルベール<帰郷>(2006/スペイン)

2008年03月06日 | 映画感想は行
VOLVER
監督: ペドロ・アルモドバル
出演: ペネロペ・クルス    ライムンダ
    カルメン・マウラ    イレーネ
   ロラ・ドゥエニャス    ソーレ
   ブランカ・ポルティージョ   アグスティナ
   ヨアンナ・コボ    パウラ

 ライムンダは失業中の夫と15歳の一人娘パウラを養うため、働きつづけている。彼女には、10代の頃、確執のあった母と父が一緒に火事で亡くなってしまうという苦い過去があった。ある日、夫がパウラに関係を迫り、抵抗したパウラに刺し殺されてしまう。ライムンダは夫の死体を処理し事件の隠蔽を図る。そこへ故郷ラ・マンチャに住む伯母の急死の報せが。ライムンダの姉ソーレが葬儀へ駆けつけたところ、彼女はそこで死んだはずの母イレーネの姿を見掛けたという噂を耳にする。

 ちょっと溝口や成瀬を見てるような気になる映画でした。もちろん色彩感はまるで違います。オープニングのお墓のシーンは、お彼岸の乾燥・極色彩版です。でも、男に振り回されて不幸になる女たちのお話なのに、その男たちの存在感の薄いこと、薄いこと。美しく、たくましく、時にもろい女性たちの背景からしか見えてきません。
 現在の殺人・過去の殺人・失踪・家庭内の性的虐待という重い事件がこの映画の展開の軸になっていますが、画面の色彩はあくまで華やかで、ペネロペ・クルスはいよいよ美しく、お話は淡々と進みます。
 おまけに、殺された男は(あくまで男です)殺されてもそれほど「ひどい」とは思えませんです。彼女たちの行為を肯定しそうになります。「トーク・トゥ・ハー」の時は主人公のヒロインに対する行為があんなに嫌だったのに。意思に反する性行為は嫌悪して、殺人につい共感してしまうというのは、なんたることぞや、と思いますが、実際そう思ってしまいます。私が主人公に感じるのは激しい憎しみとかどろどろとかよりも、もっと沈潜した痛みとにわたる傷です。母娘3代にわたるその傷を、パウラとライムンダの行動がいわば代償して晴らしているようで、そこに共感させられてしまいます。


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2 コメント

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風習 (kimion20002000)
2008-04-09 00:04:42
TBありがとう。
このドンキホーテのふるさとでは、週に何度も、ああいう墓磨きの風習があるんですって。驚きました。
まあ、男たちは、お酒をかっくらっているみたいですけどね。
墓磨き (ningyo)
2008-04-10 09:05:20
TB、コメントありがとうございます。
冒頭のシーンでは、思わず「お彼岸やってる!」
と驚きました。
でも、スペインのほうがお墓に行く頻度が高そうですね。