虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

愚か者の船(1965/米)

2004年07月07日 | 映画感想あ行
SHIP OF FOOLS
監督:スタンリー・クレイマー
出演:オスカー・ウェルナー シモーヌ・シニョレ ヴィヴィアン・リー リー・マーヴィン

 1933年、メキシコからドイツまでの船に乗り合わせた人々の深刻でもあり、滑稽でもある人生のさまざま。いわゆるグランド・ホテルドラマ。

 船中という限られた空間の中で繰り広げられる、それぞれの人生の一こま。悲しいこと、滑稽なこと、切ないこと、さまざまなことが起こり、そして目的地で皆バラバラに散っていく。
 ちょうどヒトラーが政権についた時期。幸せそうに家族と再会したユダヤ人の前を横切っていくナチス党員。身の置き所がわからないといった感じの痛々しいヴィヴィアン・リー。気はよさそうだが、粗野なムードのリー・マーヴィン(これが「キャット・バルー」の酔っ払いと同年の映画?)余命いくばくもない船医と、女の盛りを過ぎた政治犯の伯爵夫人のぎりぎりのところでの恋…それも実ることはない。そして無名の彫刻家の死…
 戦争の時代を前にした、暗雲を孕んだ平穏の…というように見えるのは、戦後の映画だから当然かもしれないが、その後のそれぞれの運命をも考えさせられてしまう。
 狂言回しのような小人症の男の妙な明るさが印象的。