少し前に、発達障がいの子の記事に対して次のような質問をいただいていました。
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奈緒美先生のブログだったかどうかははっきり覚えてないのですが、
“人の気も知らず、エジソンだなんだ言うのはやめてくれ”といった
親御さんの記事を目にしたことがあるのですが(断片的でゴメンナサイ)
こういったことに関してどのようにお考えですか?
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ちまたで「エジソンやアインシュタインが発達障がいだったのでは?」という話題が
よく取り上げられるため、
それに関して過敏に反応する方もいらっしゃるのだと思います。
発達障がいの子はどの子もエジソンのような天才的な能力を発揮する
ことができるとまで言ったら、極端で問題のある意見ですよね。
でも発達障がいのある子の「こだわり」や「過集中」といった特性が、
最もよい形で使われたなら、
それはその子の潜在能力を大きく開花させることにつながると
思っています。
わたしは発達障がいのある子ほど
「その子らしさ」に気づいて、それを支えることで伸びていく子らはいない
と感じています。
それは発達障がいのある子たちの身近にいる方の多くが
実感しておられることだとも思います。
エジソンやアインシュタインのようになれる子がいると言えばオーバーでも、
「エジソンやアインシュタイン並みに
寝ても冷めても○○のことばかり……それにどれだけ情熱と時間を
注げるかという点では世間で言う天才に引けを取らない……
という発達に凸凹のある子らは
一般的なバランスの取れた発達をしている子の
何十倍にものぼるのではないでしょうか。
バランスが悪い、凸凹がある、とは
裏を返せば、そういうことでもあるからです。
それが天才を生み出す確率にどう影響するかまでは
わかりません。
でも、そうした発達に凸凹のある子の凸部分やこだわることや、過度に集中することに
スポットライトを当てて、
「その子らしさ」を大事にしながら成長を見守ることで、
その子の成長する力は加速すると感じています。
「その子らしさ」や成長の可能性の芽は、
子どもの好きなことや喜ぶことで見つかるのはもちろん、
親御さんの目からすると心配しか感じ取れないようなシーンでも
たくさん見つかります。
たとえば、2、3歳の自閉っ子がお友達から
何かを奪い取りにいくことを繰り返すとします。
そんなシーンも、
客観的にふたつの視点から眺めれば、
子どもの成長のための鍵を見つけることができるかもしれないのです。
ふたつの視点というのは、
ひとつは、見たままに、
「他の子から物を奪い取る」という行為を止めに行って
「お友達のものを取っちゃダメ」と教えたり、相手の子を気づかったりすること
で、
たいていの方がそうした対応に追われて疲れ果ててしまっている
ことでしょう。
もうひとつの視点は、しつけはしつけとして対処しつつも、
奪い取りに行こうとする行為も、「その子らしさ」として
コミュニケーションを避けがちな自閉っ子にしては
成長のきっかけになるかもしれない、と捉えるのです。
「この子は何に惹きつけられて。繰り返し取りに行こうとしているんだろう?」
「物を取るという行為とはいえ、お友達に接近することは嫌でない様子。
もめない形で遊びを成り立たせる工夫はできないか?」
「この子がしつこくこだわる物の色は?素材は?
触った感触は?音は?動きは?お友達のどのような持ち方に
欲しい気持ちが刺激されているの?」
「この子の物を取りに行こうとするエネルギーをもっと肯定的な活動に
変化させられないかな?」
「物を奪おうとする時に、大人が相手をして、じらしたり、
アイコンタクトを取ったり、やり取り遊びのきっかけを作れないかな?」
そうした問いを自分にかけながら
子どもの姿を眺めて、いろいろと子どもへの働きかけを
ためしてみるとよいのではないでしょうか。
「その子らしさ」がなかなか見つからないようなタイプの子も
少し視点を変えて子どもの活動を眺めることで
新たな発見があるものですよ。
最初の質問からちょっと話が逸れてしまいましたね。
「人の気も知らず」というのは、親御さんの言葉なのか、
発達障がいの当事者の方の言葉なのかはわかりませんが、
おそらく辛い現実にたくさん遭遇されたのだと思います。
でも、凸凹のある人が生き辛く能力を発揮することができないのは、
ハンディーのせいだけでなく、
凸凹を許さない周囲の不寛容にも原因があるはずです。
シアトルに来て、こちらで暮らしている方に聞いたところ、
アメリカではADHD等の発達障がいを持った方が社長になっている率が
とても高いのだそうです。
アメリカでは人の能力に凸凹があることを
そのままでよしとして認めているお国柄があって
そうしたことが可能になっているという話でした。
アメリカにはアメリカの問題点もあるのでしょうが、
「人間、少しくらい凸凹があったっていいんじゃないか?」という
おおらかな考え方が、ハンディーがあってもがんばって努力していく力のもと
にもなるのではないか、と感じました。