自閉症スペクトラムの中程度~軽度の子らといっしょに、
ユースホステルでのレッスンに行ってきました。
子どもたちそれぞれと、自分が毎日、
かんしゃくを爆発させてしまっていることについて、
分岐する矢印を書きながら、気持ちや態度を書き上げていく作業をしました。
すると、子どもたちに思わぬ大ヒットで、「ぼくのも作りたい」「わたしのも作りたい」
とすごく盛り上がっていました。
どこで、自分が「やっちゃった」という事態に進んでいくのがわかったようです。
上の写真のような2つに分岐する矢印を書きながら、
気持ちや思いがどんな展開に進むのか言い合っていくんです。
自閉っ子は大きな子でもこうした作業をひとりでするのは難しいと思います。
だから、矢印を書きながら、心の軌跡をたどるのを支援していきます。
この矢印を子どもたちと作るうちに、わたしが思っていなかったような原因で、
周囲があぜんとするような切れ方につながることに気づきました。
子どもたちの声を集めると、自閉の程度こそちがえど、
激しい感情爆発やがんこなこだわりはだいたい同じ流れをたどっているようでした。
思っていなかったような原因というのは、こうなんです。
まず、宿題が難しい時、「めんどくせー、むずかしくて腹立つ、やりたくない」など思うのですが、
次に続く矢印では、「宿題を出した学校、作った先生などが悪い」
「問題をむちゃくちゃにしてやりたい。えんぴつでぐるぐるぬりつぶしてやりたい」などと思うそうです。
この部分で、集まった子全員が、まるで、宿題の問題自体が嫌がらせをする対象であるか、
問題に出した先生や学校というものが貼りついていて、それが自分の目の前で妨害している
かのごとく近く感じるようでした。
そして、次の矢印の先では、宿題に向かっていた怒りは、
それをやるように見張っているお母さんへの怒りになります。
そして、お母さんが「ゲーム禁止」「お父さんに言いつける」
「さまざまな罰」「しかりつけてだっこしてくれない」などの罰を加える
のではないかという気持ちにつながるということでした。
親としたら、目の前のふたつの選択肢でしぶっているように見える時、
自閉っ子は自分の頭がこしらえたあまりに大きな敵を相手にしているので、
言うことをきけるはずがないし、死に物狂いの癇癪は当たり前なのかな、と感じました。
で、実際にそうした罰を親がしたからそれがトラウマになっているのかというとそうでもないんです。
むしろそうした罰を与えない親のもとで、そうした妄想が膨らみやすいようでもありました。
それは見たところ、普段罪悪感を感じていないかのように見える自閉っ子の
自動生成する罪悪感のなれのはてのようでもありました。
自分が悪いことをしているという思いが、大好きな人からすごく罰せられるの
ではないかという不安につながり、難しい問題を見た時点で、
あらゆる恐ろしい罰や大人たちの怒りが自分に迫ってくるような感覚があるようでした。
他の自閉っ子たちも、問題が難しいと認識した時点で、
悪い方向の矢印の思考の流れを瞬時にたどっているようでした。
そしてお母さんが、「難しいなら、こういう風にやったら?」とやり方をアドバイスしようにも、
子どもの頭の中では壮大な罰絵巻が展開していて、それを戦っているので、とうてい、悠長に
そんな指示に従っていられないようでした。
そうした自分の脳内の自動生成システムを、子どもたちの声を集めながら
洗いざらい書いていった後で、
今度は、いい方向に進む矢印をいっしょに書いていきました。
すると、そのいい方向の矢印を進む時点で、それぞれの子に、
その矢印が先に進めなくなるような思い込みがあり、
矢印を遮断する決めつけが存在していました。
たとえば、「絵を描くと、難しくなくなるかも」というと、
「絵を描いたら、先生に怒られる」というのです。
そこには過去の記憶の認知のずれからくる間違った解釈がありました
上の決めつけをしていた子は、よく聞くと、テスト中にプリントにらくがきをしていて注意されたらしいんです
それ以来、「勉強中は絵を描くと怒られる」の反射的に判断を下すんです。
また、良い方向の先に、「お母さんにほめられる」ということがあると、
「でも、ほめられなかった。できたのにほめられなかった。だから、やってもむだ」と、
過去の一度の経験の記憶によって、
悪い方向しか選択肢がないという思い込みへといざなわれているのです。
教育関連の仕事に就いている知人は、
「困った感のある子が罪悪感を多く持ち合わせているのはとても理解できます。
自分はうまくできないという罪悪感が怒りに変化して、
またその行動から怒られて負のスパイラルに入ることがよく職場でもあります」
とおっしゃっていました。
わたしはこの矢印の紙を作って、まずいっしょに楽しみながら、
悪い方向に思いが展開するのを指でたどりながらいっしょに、ネガティブな言葉を吐いて、
不安がすっきりするようにします。
そそれから、いい方向に向かう選択肢の分岐点に物をおいて、
「あーこれだけひとつすれば、いいんだよね。いけるかな、どうしよう。どきどきするねー」
といいながら、子どもが、「長い文章題の1行だけ読んでみる」など、
できそうな課題に分割した難しい問題をひとつずつクリアしていくのを助けました。
大事なのは、悪い思考の展開を大人といっしょにオープンに味わってみて、
無意識の世界から意識の世界で眺めて笑えるものにすることなんです。
悪い思考の流れを大人が罰すると思っていることで、
その悪い思考のループから抜けられなくなりますから。
先日も苦手な問題にぶつかると、激しいかんしゃくを起こす小5のAくんと、
いっしょにこの矢印の先の内容を埋めているうちに、
爆発寸前だったAくんが自分でも図の中に書き込みをするうちに、
落ち着いたすがすがしい気持ちになってきて、
嫌がってののしっていたケタ数の多い計算に取り組んでいました。
後から指でたどって、今どの分岐点にいるのか見れるようにしたことで、
思いが暴走して、不安で何も手がつけられなくなる状態から抜けられたようです。