虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

外から見える変化 と 内から起こる変化 2

2016-08-31 07:20:34 | 工作 ワークショップ

『オセアノ号、海へ!』というポップアップ絵本を見てから工作タイム。

この『オセアノ号、海へ!』は、保育士おとーちゃんさんが、ブログでお子さんの誕生日プレゼントに選んだと紹介されていた本。

ページ数こそ少ないですが、この本を開いたとたん、2,3歳の子から小学校高学年の子まで、イラストに圧倒された様子で、

「わぁ~!」「すごいっ!」と、大きなため息を漏らすのです。(本を見せるとき、最初は、海面の下部分をテーブルでかくしています。)

氷山の一角というたとえを、言葉のまんま目にする瞬間です。

海面の上にあるのは、わたり鳥1わで手狭になるほどの小島なのに、海面の下には、あっと驚くような全貌が潜んでいるのです。

ちょこんと飛び出た氷の突起の下に眠る巨大な氷の塊の数々。

海面に見えるのは、三角の小さな切れ端のようなもの。

でも、実はそれはくじらの尾の先で、その下にはでっかいくじらが泳いでいるという絵。

 

ユースの晩、寝しなにこの本を見せたので、翌朝、朝食がすむやいなや、子どもたちは、「朝になったら、海の中の絵本を作るって約束したでしょう?」

「昨日見たあの本みたいな、海が作りたい!」と大騒ぎでした。

 

紙に海面を貼って……。

 

小2のAちゃんの大きな魚、ナイスです。

 

小2のBちゃんの作品。

たこつぼをつりさげて、たこを捕まえるところ。

 

年中のCくん。得意の深海魚をたくさん描いて、暗くて深い深海を作っていました。

 

年中のDちゃん。イルカのショーが見られる仕掛けをつくっていました。

 

小1のEちゃんのたこつぼつりのおじさんはいい味でてますね。

すごくいい作品ができていたのに、写真を撮りそびれた子がいて残念。

 

写真を紹介していたら、タイトルの内容を書くところまでいきませんでした。

次回に続きます。


外から見える変化 と 内から起こる変化 1

2016-08-30 09:41:35 | 工作 ワークショップ

年中~小2の子たちとユースホステルのレッスンに行ってきました。

ホームセンターで見つけた1mくらいの筒状の梱包材を3本もっていったところ、養生テープでつないで2段ベッドの上段から上段にビー玉を移動させる通路になっていました。

 

非日常な光景に子どもたちは大興奮。

ベッドのはじごを上ってはビー玉を転がしあっているだけなんですが、遊園地どころじゃない高揚感を味わっている様子でした。

 

これを目にした3歳の妹ちゃん。お姉ちゃんたちの遊びに入りたいし、ビー玉が転がしたいのですが、ちょっと危なっかしい。

お母さん方に紙を丸めてビー玉コースターを作ってもらっていました。

満足そうに遊ぶ妹ちゃん。

 

それを見たお姉ちゃんたちは、

「わぁ」と目を輝かせて妹ちゃんのベッドの下に集まってきました。

平たい紙が筒になって、それをつなぐと長いビー玉通路になることは、どの子も知っていることながら、実際に目にすると何もないところから、必要なものが生まれてきたような感動があるのです。

人の知恵とかアイデアとか問題解決法といった目には見えない頭の中にあるものが、可視化される瞬間に立ち会えるのは身近に物づくりがある環境の醍醐味です。

 

みんなで手分けして筒をつないで、

いつの間にか、2段ベッドからベッドへとつながる紙のビー玉通路が開通していました。

 

次回に続きます。


年少さんたちの工作と算数タイム

2016-08-28 07:40:34 | 算数

 

年少の女の子たちのレッスンの様子です。

木片とペットボトルのふたをつかった工作。

夏休みの工作用に売っている木片は、年齢を問わず人気の素材です。

たっぷり用意して自由に貼りあわせたり、色を塗ったりできるようにすると、どの子も熱心に何か作っています。

 

Aちゃんは木片をTの形につないで、「ぎったんばっこん」と言いながら揺らしました。シーソーに見立てたようです。

年少グループでは、養生テープを使って簡単に接続ができるようにしています。

ペットボトルのキャップは、貼るだけで、車や船や遊具の座席になるので、作ったらとにかく小さいお人形を乗せます。

遊びたいこの時期の子たちが大好きな素材。

 

作りたいものとして、「ふね」という声があがったので、みんなで『オセアノ号、海へ』という絵本を見ました。

海の中の世界を目にすることができるポップアップ絵本です。

「うわぁ~!!」と感動の声。

子どもたちから思った以上の反応がかえってきました。それからは、みんな舟やボート作り。

 

↓Aちゃんのお姉ちゃんが舟にオールやハンドルをつけてくれました。

 

たくさん舟ができたので、水に浮かべて遊ぶことにしました。

魚や釣り竿も作って、魚釣りを楽しみました。

 

年少の子たちのこうした遊びにつきあっていると、子どもの内面から、「期待して待つ」「期待して結果を見守る」「ドキドキしながらうまくいくか確かめる」といった集中力が引き出されてきます。

 

すると、それが、「3つあるボートに3人のお人形。全部乗せられるかな?」

「4つの椅子に4ひきの犬。全部座らせられるかな?」といった、算数の世界の気づきを伴う活動に自然につながっていきます。

 

算数タイムの『動物にごはんをあげよう』というゲーム。

回転盤を回して、矢印のところにとまった動物と、ミッフィーが持っている食べ物とがマッチしたら、食べ物をもらうことができます。

子どもたちはとても熱心に参加していました。

子どもたちには、「1点か2点、どちらかの得点が取れるよ」と話しています。

次第に、食べ物をゲットできたことと得点をゲットできたことのつながりに気づいていきます。

 

動物は、何匹だったかな?

数えた後で、数の指遊びをしました。

 

絵柄が作れる積み木で、「真っ暗闇の夜」「お昼」「小さい黒と小さい黒と小さい黒と小さい黒が集まって……小さい四角」などを作りました。

 

子どもはどの子も、「やってみたい」と心が動き、ちょっと苦労してやり遂げたときに、今、やっていることに、真剣に心と頭を傾けるようになります。

「数を数える」のにしても、「数えてごらん」と数えさせると、いやいやつきあううちに数ぎらいになってしまうのがオチですが、

写真のように「水風船をふくらまし機でふくらます」「ストローをテープでつける」「人形に持たせる」という作業を自分でした場合、進んで数えようとします。

「風船の数は足りるかな?」といった問いも一生懸命考えようとします。


子どもたちを夢中にしたものと興味を膨らませる活動 1

2016-08-27 08:58:34 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

教室では、子どもたちが興味を持ったものとさまざまな形で触れ合い、発展させるお手伝いをしています。

これまで子どもたちを夢中にしたものと、興味を膨らませるためにした活動の数々を紹介します。

(近いうちに、算数にかかわることで、子どもたちを夢中にしたものと興味を膨らませる活動を整理することにします)

 

<子どもたちを夢中にさせたもの>

●ピタゴラ装置作り

 教室やユースホステルの部屋全体を使った大がかりなものからストローの中をビーズが滑っていくミニサイズのピタゴラ装置まで

さまざまなものを作りました。数えきれないほどしかけのアイデアが試されています。

 

●影絵劇、映画作り

 ブロックで作るミニシアターから、2mほどのスクリーンを使ったものまで、さまざまな影絵劇や映画を作りました。

 

 

●工場作り ごみ処理場

ベルトコンベアーで移動させる算数の工場、

 

●頭脳パズル

 

 

●ハンバーガーショップ作り

 

●エレベーター作り クレーン作り

 

 

●忍者

 

 

●戦国武将 お城

 

 

●ドールハウス作り

 

 

●ガチャポン作り

 

 

●レジ作り

 アルミホイルを貼ったお菓子の箱にレジのバーコードを読み取る機械をつけると、ピッと鳴ります。

 

●パソコン作り 携帯電話作り

 

 

●元素カード

 

●海賊船 大型フェリー

 

 

●ポップアップのしかけ

 

 

●かばん作り

 

 

●すごろく作り

 

●歴史的建造物

 

 

●深海魚

 

●おばけ屋敷作り

 

●宇宙

 

 

●ポケモンゴーのゲーム作り(ブザーが鳴るマッチング式のゲーム作り)

 

 

●わたがし機作り (モーターを使った工作)

 

 

● 生きものの生態

 

●電車の世界

 

 

●電子工作

 

●プログラミング

 

●洋服屋さん

 

● レオナルド・ダヴィンチ

 


自発性と創造性を育てるには……?

2016-08-27 08:32:10 | 日々思うこと 雑感

↑ユースホステルでの月の観察。

仲の良い……とても信頼できる友だちや知人、数名から、相田みつをの本をいただいたことが何度かあります。

口を揃えて言うのは、「大衆的だと思って敬遠していたけれど、とてもよかったの」という言葉。

私も、読むたび、年々、その良さが、心に響くようになった気がします。

一番好きな著書は、『育てたように子は育つ(相田みつを 書/佐々木 正美 著』『相田みつを 書/佐々木 正美 著)』。

この本には、子育ての実話が相田みつをの書といっしょに載っていて、とても考えさせられるものです。

ささいな親の注意にカッとして、母親のろっ骨を折ってしまったり、窓を割ったりする若者に共通しているのは、小さい頃「素直ない

い子」なのだそうです。

「やらなければならないこと」を優先する習慣がついて、本当にやりたいことをやる能力を失ってしまったのです。

それに大きな悔いと不満を感じ、混乱し、人生をやり直そうとしているかのような行為。

両親は自発性や創造性が育つよう、干渉し過ぎないやり方で根気よくやりなおさなくてはならないそうです。

相田みつを の 待つ という美しい書に、佐々木氏が次のような話をそえています。

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子どもに限らず草花でも農作物でも、何でも育てることが上手な人は、待つことが上手な人だと思う。

待っていることに喜びや楽しみを感じていられる人である。

日常で、最善をつくしているという実感があれば、待つことの楽しみは最大になるであろう。

結果を問わない気持ちができていれば、待つことは安らぎでもある。

子どもを育てるとき、努力と結果を問題にするならば、先の結果より、努力の「今」に共感してやりたい。

休息の「現在」であれば、その現在を静かに見守ってあげたい。

休息が終わって活動を再開するのを、いつまでも待ってやりたい。

はた目には待ってやったことが無駄だったように見えても、かけがえのない親子のような関係の者にとっては、苦楽を分かち合ったものにしかわからない

存在の重みの感動が必ず残る。

だからじっと待ってやりたい。

子どものなかの自律性や自立性は、待ってやるからこそ育つ。

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わが子も、教室の子も、とてもすばらしい成果を目の当たりにするときというのは、他のようにできなくても、のんびりゆっくり待ってあげた結果だな~と思います。

好きなことばかりして、苦手なことから逃げてばかりいる

すぐお友だちに手が出る

かんしゃくを起す

よく泣く

何をするのも遅い

よく忘れる 

子どもが大人の期待通りに動いてくれないときに、しつけたり、子どもに正しい見本を見せたりして最善はつくす

でもできるできないは、時を待つ。

とのんびりゆっくり構えていたら、どの子もすばらしい才能をしめしはじめます。

特に、他の子の何倍も時間がかかって、それを待っていてあげた子は本当にすばらしい力を発揮し始めるんですよ~。

わが子にしても、「この子のこういうところすばらしいな~」と感激する部分は、教えた結果でなく、「待った」結果、身についたことばかりなのです。

「小さい頃にきちんとしつけないと、わがままな子に育つ」と言っておどす人は多いと思います。

でも、小さい頃に親の言いなりでいい子をしていても、思春期になれば、ほとんどの子は生意気で軽はずみな行動が多くなってきますよね。

でも、待ってあげる という親の姿勢は、子どもの心に深く届いて、義務ではなく自分の本心から生じる優しさを生むように思います。

かつて勉強を見ていた近所の子に、大きくなって久しぶりに会うとき、小中学生の頃は好き放題言うので、私もずいぶん勝手を聞いてあげたものだけど、

本当に優しくしっかりした子に育って、自分で考え、ばりばり仕事しながらがんばっている姿を見て心からうれしく感じています。


シングルフォーカスに陥ったり、注意散漫になったりする子に教えるコツ 1

2016-08-25 18:12:03 | 算数

小学2年生の★くん。

知力は高いけれど、シングルフォーカスに陥ったり、注意散漫になったりする、

「できる時」と「できない時」の開きが大きい子です。

 

理解力や創造力が高い反面、細部の一点に集中しはじめると、全体が見えなくなったり、頭が切り替えられなくなるという欠点を持っています。

勉強以外の遊びや生活の場面でも、何かをしている途中で、ひとつでも気にかかるものが現れると、最初の目的を忘れがちです。

また、気が乗らない作業をしているときは、注意散漫になって上の空になりがちです。

学校のテスト中も、適当に読み飛ばしてミスを連発することが多々あるようです。

 

教室では、まず次のような問題を解いてもらいました。

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①よこの 長さが たての 長さの 6ばいよりも 2㎝長い長方形が あります。

たての長さが 4㎝と すると、

この長方形の まわりの 長さは、何㎝になりますか。

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★くんが困っているようだったので、ヒントの代わりに、

★くんの中から答えを引き出すような質問をしてみることにしました。

 

「★くん、何の話だった?」とたずねると、「長方形」と答えます。

その絵を描いてもらいます。(★くんの答案はえんぴつの線が見ずらかったので、写真は私が同様の図を描きなおしたものです)

次に、「長さが出ているけれど、比べるものはあるの?」とたずねると、

「たてとよこ」と答えると、次のような線分図を描きました。

 

「★くん、6ばいってどういうこと?」とたずねると、指でたての幅を作って、6回それをつなぐ真似をします。

 

ここまできて、★くんは、この問題を解いていくだけの力がありそうなことはわかりました。

 

ただ、困ったことに一度問題に目を通すものの解きはじめた後につまずいても、自分の頭から何かを絞りだそうとするように目を宙に向けて首をかしげるばかりで、決して問題を見直そうとしません。

「比べるならどのようにちがうのか、問題をきちんと見て」と言うと、次のように描くことができました。

(本当は最後につけた2㎝を、途方もなく長くかいていたのですが、それでもだいたいのところは写真のように正しく描けていました)

★くんに、「よこの長さはどれくらいになると思う?」とたずねると、「えっ5センチ?ちがうかな10センチかな?」などと、またも宙を見ながら、首をかしげて答えます。

 

「★くん、何を見て考えればいいんだった?」とたずねると、

「ああ、そうだった」と自分が描いた線分図を見て、4~8~12……24と2で26㎝!」とちゃんと答えます。

そして、さっさと答え欄に26㎝と書きこんでしまったので、

「何が質問されていたのか間違えないためには、どうすればいいの?」とたずねると、「問題の最後のとこを読む」と言います。

 

「そう、読んで」

「あっ、まわりの長さだったから、26+26+4+4=60 答え60㎝だ」

と正しい解答を出すことができました。

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★くんタイプの子が問題が解けなくて困っているとき、問題の意味がわかっていないのだと思って、解き方を説明しても、いっこうにできるようにならない場合があります。

知力はあるのに、シングルフォーカスに陥りがちだったり、注意散漫だったりして解けなくなる子には、

何を考えていたのかわからなくなって混乱した時に、自分に投げかけるといいシンプルな質問を教えておいてあげると、ボーっとなりそうになると、

心の中で自分で自分に質問を投げかけて、夢から覚めたように続きを解いていくことができるようになる場合があります。

 

また、どのようなところに注目したらいいか、目の使い方も教えます。

こうした子は「問題の意味がわからない」のではなくて、よそ見をして解いているときに、どのタイミングで問題を読み返したらいいのかコツがつかめないのです。

また、うろ覚えの内容について読み返すことの大切さがわかっていないのです。

どちらも身体の使い方の問題です。

 

「うろ覚えでも見直さなくてもいいや。間違えてもいいや」と適当に構えている子に懇切丁寧に解き方を説明していると、

「どうせ言ってもらえるからいいや」とますます依存的になって、他人事のように勉強をするようになりがちです。

こうしたタイプの子は、とても頭が良い子でも、算数の問題を解いている最中に、自分が何をしているのだったか忘れていることがあります。

何か、心を奪われた一点で頭が占められて、ぼんやりしたまま元の状態に戻れないのです。

たとえば、問題にザーッと目を通した瞬間、難しそうな言葉があったりすると、そこに気を取られて、次に何をしたらよいのかわからなくなってしまうのです。

 

おそらく、前回まで(算数の文章題を考えるためのワザ4)の記事で紹介した「筋肉豆腐」の問題も、

「タンパク質なんて難しそうな言葉にぶつかって、そのまま白昼夢の世界へ飛んでいってしまった子もけっこういたのでは?」と想像しています。

そこで、子どもには、問題を読むとき、「何の話だったのか?」という急所をシンプルな一言で表すように教えています。

「おりがみの話」「長方形の話」「列で並んでいる話」などいろいろあるはずです。

それを絵にしてみます。

 

子どもがひとりで問題を読むときも、何を読んでいるのかを忘れてしまわないために「何が出てくる?」という最初の問いを心に持って、問題を読んでいくようにして、絵を描いてみると、

解きはじめでつまずきは減ってきます。


「言葉の遅れ、人と関わる力の弱さ、叱られると笑うところが気になります」の続き 1

2016-08-25 09:23:52 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

言葉の遅れ、人と関わる力の弱さ、叱られると笑うところが気になりますの記事の続きは、

別のタイトルで書いています。

 

怖いものしらずで聞き分けのない2歳児。強く叱った方がいい? 1

 

怖いものしらずで聞き分けのない2歳児。強く叱った方がいい? 2

 

 


言葉の遅れ、人と関わる力の弱さ、叱られると笑うところが気になります 5

2016-08-23 20:47:37 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

現在は、「子どもになりきる」まなざしがなくなりやすい環境です。

情報が多すぎるし、携帯電話やテレビやベビーカーといった大人と子どもの間に見えない壁を作ってしまいがちな道具があふれていますから。

 

また子どもの側に、生まれたときから、大人を不安にさせたり、挑発したり、無関心にさせたりするような素質があった場合、

いくら親御さんが良い親になりたいと考えていても、心優しい性格だったとしても、次第に親御さんの自信がくじかれていって、そうしたまなざしになれなくなるのも仕方がないことです。

 

ですから、「子どもになりきる」まなざしになれない自分は悪い……と捉えるのではなしに、ちょっと自分の心のチャンネルを子どもサイド見方に切り替えるくらいの気楽な気持ちで、この状態を意識的に作るようにしていると、子どもの言葉の遅れが劇的に回復することもよくあるのです。

 

言葉の遅れのある子のなかには、一方的に単語を言ったり、要求を口にすることはできるけれど、相手からたずねられたことに返事をすることがなかなかできない子がいます。

 

★ちゃんにしても、「これなあに?」とか「じいじいは?」とたずねても、自分に向かって何かをたずねられているということがわかっていない様子でした。

また、たずねられたことに自分から応じていこうという意志が感じられませんでした。

 

そんなときに、もし★ちゃんのお母さんが、完全に★ちゃんになり変わって返事をするのでもなく、「じいじいはお外っていいなさい」と指示を出すのでもなく、

★ちゃんが主体であることをわかった上で、★ちゃんになりきって、そっと★ちゃんの身体をたずねた相手の方向に向けながら、身体そのもので言葉を受け入れる態勢を作ってあげながら、

「りーんーご」とか、「じいじいは、えーと、どこかなどこかな、あっち」と身振りもまじえて、いっしょにお返事してあげると(最初のうちは大人だけの返事になるでしょうが)

★ちゃんが言葉を覚えていきやすいように思いました。

 

「子どもになりきる」というのは、絵本を読むシーンでも大事です。

★ちゃんは、絵本を手にして「読んで」という素振りをします。

でも、ただ絵本の文字を読んであげるだけでは、2ページ目に移る前にふらりとその場を去ってしまいます。

それを繰り返していると、★ちゃんのお母さんも拍子抜けして、「~してよ」と能動的な★ちゃんの働きかけに対して、

「どうせちゃんと聞かないんでしょ」といういやいや従うような態度で応じることになりがちです。


言葉の遅れ、人と関わる力の弱さ、叱られると笑うところが気になります 4

2016-08-23 06:57:43 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

子どもに言葉の遅れがあるとき、その子のお母さんの子どもとの関わり方にちょっと気になる特徴を感じることがあります。

もちろん、言葉の遅れというのは子どもの側に原因があるかもしれず、

まるで育て方が原因で言葉の遅れが起こるかのような指摘はよくないのかもしれません。

でも、先に子どもの言葉の習得の遅れがあって、それが原因で後から親御さんの態度が変化したものかもしれないけれど、ひとつの共通する特徴のようなものがあるのです。

それはどのような特徴かというと、

「子どもになりきる」まなざしが少ないということです。

 

つまりいつも大人から、他者から……というまなざしで子どもの動きを捉えているように見えるということです。

 

それなら、「子どもになりきる」というのは、どのようなまなざしかというと、たとえば、子どもが重たいものを引きずって運び始めたら、

見ている方も知らないうちにふんばって息を止めて、「よいしょ、よいしょ」と心の中でつぶやくことってよくありますよね。

子どもがすっぱいものを口にすると、こっちまで肩をしぼめて、すっぱいときのキューッと顔の筋肉を縮めたような表情をしてしまうものです。

特に幼い子を育てている親御さんは、本能的に子どもの姿を目で追いだけで、そうした「子どもになりきる」状態にしょっちゅう

なっていることと思います。

子どもに何かを教えるときも、自分の身体までが勝手に動いて、言葉がただの言葉ではなくて、

「こーうしーて~こーうしーて~」と見聞きしている側のかもしだしているリズムに合わせて提示しているのです。

それを真似ようとする幼児の動きを今度は教えていた側が、真似ているような形で、さまざまなことが伝えられます。

 

こうした大人の側が「子どもになりきる」形の伝達は、幼い子が言葉や生活習慣を学んでいく上では、必ずといっていいほど必要なものだと思います。

とても本能的で普遍的な活動だからです。たいていの親御さんは、遊んでいるときも、いつの間にか、子どもの目線で世界を見、子どもの感じるものを自分で感じているかのように反応しながら、遊びに興じています。

知らない間に、呼吸の速度まで子どもと同じになっているのです。

でも、言葉の遅れのある子の親御さんのなかには、いつでも大人の立ち位置、大人のまなざし、大人の判断、大人の思考、大人の分析を手放さないで、

とまどいながら子どもと接している方が多々あるのです。

 

次回に続きます。


言葉の遅れ、人と関わる力の弱さ、叱られると笑うところが気になります 3

2016-08-22 19:58:33 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

★ちゃんのような発達に気になるところがある子の場合、

療育をしている教室に通うように勧められて、

週1回くらい同年代のお友だちと過ごしながら

人と関わる力を学んでいく子が多いです。

それ自体は大切な体験ですが、

実際、そうして療育にこれまで通ってきたとおっしゃる方々にお会いすると、

異口同音に、療育を勧められて通ううちに何だかよくわからないままに日が過ぎて、

具体的な親子関係の作り方を教えてもらえるわけでも、接し方のコツがわかるわけでもないので

家庭での療育がなおざりになってしまったとおっしゃるのです。

 

そうして、親御さんの子どもへのまなざしは

どこか遠いところから異星人を眺めるようにわが子に注がれていて、

子どもの側は、親御さんが不安そうに見ている遊びにばかり没頭していて、

呼ぶと、プイッと背を向けて次のおもちゃに向かっていき、

きちんと遊びが成り立たないままで、

親御さんとの関わりは、危険を制止するときと、

お片付けをうながすときだけという危うい関係ができあがっていることがよくあるのです。

 

子育てに困り感を抱えている親御さんに必要なのは、

だっこされるのを嫌がる子をどのようにしてだっこして、

甘えることが心地よいことだと学ばせていくのか、

絵本を読んであげようとすると、無理矢理閉じで、どこかに行ってしまう子に

どうやって絵本を読んであげるのか、

遊びに誘っても、背を向けて走り出していく子と

どうやって遊べばいいのか……

 

そうした具体的な技術を体得してもらって

親としての自信をつけてもらうことだと実感しています。

虹色教室は療育の場ではないのですが、

そうした親子関係の作り方について、具体的な方法を学んでいただいています。

とてもうまくいった方法について、これからも記事にしていきますね。