虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『篠秀夫さんと遊ぼう in 京都』ワークショップのご紹介

2017-09-30 19:39:32 | 連絡事項

2017年

11月3日(金)4日(土)5日(日)に

京都の亀岡と美山で

『篠秀夫さんと遊ぼう in 京都』ワークショップが開かれます。

興味のある方はぜひご参加ください。

 

くわしい情報はこちらでご確認ください。

  https://www.facebook.com/events/147187922542143/


「失敗は終わりではないということ」という記事を読んで

2017-09-28 21:29:09 | 日々思うこと 雑感

 Follow your bliss

というtamakiさんのブログで、

失敗は終わりではないということ

 という記事を読みました。

その中にゲド戦記の著者として有名なル・グウィンの

「左ききの卒業式祝辞」という文章が

紹介されていて、いろいろなことを考えさせられました。


誰もが一直線に成功を目指して、どのポジションについたか、何を獲得したか

で人の優劣を判断したり、人生の価値を品定めしたりするのは、

自分の持てるすべてで宝くじを買って、上位の当選を夢みて

生きるようなものなのかもしれません。

宝くじが当たらなかった時、手元に残ったくじをすべて

紙屑と化してしまいます。


でも実際の人生では、成功という当たりくじは、

親の期待やその時代の世間の見方が与えた幻想で、

個人的な生きる喜びを感じることや自分を活かせる場、

自分を高めていく機会は、はずれくじだと思っていたものの方に

あるのでは……とも思います。


「目をくらませる明かりの中ではなく

栄養物を与えてくれる闇の中で、人間は人間の魂を育むのです。」

というル・グウィンの言葉が心に響き、ふいに、

心理療法士のP・フェルッチのこんな言葉を思い出しました。


「(人生とは)試み、失敗、学習体験、そして成功などから成っている旅。

より大きな意味と気づきへの進行形の旅。あるいは旅になり得るもの。」

「人は偶然や、間違いや、思いがけないことからトランスパーソナル・セルフ

(生物的構造の中にある中核)を充分に実感することができません。

すべての注意を傾け、役立つものはすべて役立てる系統的な

アプローチによってのみ、実感することができるのです。」


P・フェルッチは、境界、執着、所有、競争、死への不安などの上に築かれる

わたしたちの通常の自己感覚に対して、

トランスパーソナル・セルフにある自己感覚は、

存在の純粋な気づきと「すべてのもの」との一体感に基づくものと説明しています。


ル・グウィンの「暗闇で生きてください」という言葉が、

何ついて語っていたのか、

想像するしかできませんが、わたしたちが「成功」のイメージを

フェルッチのいう通常の自己感覚の枠内で設定するなら、

ル・グウィンが語る暗闇とは

後者の「すべてのもの」との一体感に基づく自己感覚

が横たわっているところなのだろうと感じました。

 


暗闇といえば、まだ息子が小学生だった頃、息子の質問をきっかけに

こんな詩を書いたことがありました。


11歳の孤独

 

子どもたちと接していると、どの子にもいえることなのですが、

自分の生きている世界や自分自身について深く考えるようになる年がくると、

子ども時代の根拠のない万能感は失われていきます。

自分を客観視できるようになるほど、

特別でも完璧でもない地球上に数えきれないほどいる

ちっぽけな自分が感じられるようになるのです。

そうして、身ひとつで、あちこちにぶつかりながら歩いていくことしかできません。

 

でも、そんな小さな存在が、頭の中に広大な宇宙を取り込んで思考していくこと、

混沌から自然に立ち現れてくる秩序について気づき、夢想すること、

自分の内奥を探っていく孤独な仕事に取り組みだす姿に触れると、

人の不思議を思います。

人の中核にあるもの、能力や体験が生じてくる源を垣間見たような心地になります。

 

話が脱線しますが、トランスパーソナル・セルフについての話題が出たついでに、

P・フェルッチが教育について述べている言葉をここに書いておこうと

思います。(一部を要約して引用しています)

ここに書かれている教育について思う時、ただ、他者に勝利してよいポジションを

勝ち取ることを教育のなかで後押ししていくことのむなしさに気づきます。

そこで自分の意志とは関係なく煽られる子どもたちはなおさらです。

成績で評価できるテストに合わせて、子どもの資質を価値づけして、

伸ばしたり、無視したりしている現状をどうとらえるべきか、

ひとりひとりの人の個性や才能を育んでいくには、どのような考え方を土台に据え

る必要があるのか、

多くの人が、教育について、じっくりと考えをめぐらせていくことを願います。

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自然に秩序が生まれる現象のなかに、

人の心にもともとある混沌から現れる一貫性と

思いもよらない調和が生まれることの類似性を見ることができます。

直観力、創造性、美しいものを見る喜び、自然や宇宙との一体感といったものは、

フロイト博士の古い人格構造や不安な抑圧よりむしろ

新しい科学である幾何学によって理解することができます。

自分のいのちにも他者のいのちにもあるトランスパーソナル・セルフを

忘れることは、限りない問題と苦悩する結果になり、

病的ないつわりの存在を生み出す結果として導かれます。

自分自身やほかの人の、知性、愛、創造性などのすばらしい能力を否定したり、

無視したり、ばかにすること、またそのような姿勢が、制度、

教育システム、人間関係、労働条件や生活条件など、

社会全体の土台となるのを許してしまうこと……

これは、不幸と不調和と不健康を生みだすだけです。

ですから、トランスパーソナル・セルフが、あらゆる分野、とりわけすべての成長、

健康、幸せに特に関連ある分野で認められることが大切で、まず第一に、

教育の分野に当てはまります。

子どもや生徒のなかにトランスパーソナル・セルフの存在を認めることは、

その人のなかの価値あるすべてのものにいのちを与えることを意味します。

本当の意味での教育とは、人がトランスパーソナルセルフへ

の道を歩むのを手助けすることなのです。

発明の才能、共感、勇気、集中、美の鑑賞、直観力、細部への注意、

 分析的な考え方や統合的な考え方、

身体を通じて喜びを呼び覚ます能力、目に見えない世界への

気づきと意識の広がり、苦痛への建設的な態度など、

能力や体験はすべて、認知し、刺激することが可能なものです。

このような教育は、もはや単に情報を伝えるだけのものではなく、

「ユニバーサル(普遍的)な人間」を呼び起こすものです。


      『人間性の最高表現』P・フェルッチ 誠信書房 より引用

       (一部、要約したり省略したりしています)

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 これまで話題から少し逸れますが、

共感した記事が会ったので、リンクしておきます。

不登校の子供が話してくれたこと。

「みんなと一緒がいい」「このままがいい」の本当の意味。


アメリカで、虹色教室とコラボしたディスカバリープレイ・クラスが開講されることになりました♪

2017-09-26 19:33:54 | 連絡事項

 

アメリカのシアトルのシークレットガーデン・プレスクールで、

虹色教室とコラボしたディスカバリープレイ・クラスが開講されることになりました。

関心のある方は、ぜひ、リンク先のホームページに

飛んでみてくださいね。

Discovery Play Class

(日本語で見ることもできます)


 

 

 

虹色オンライン算数をご購入しただいた方々へお知らせ>


虹色オンライン算数の 教室で見かける年長児の姿

年長児と日常の関わりのコーナーに、

「重さを感じるおもちゃ」の作り方と遊び方と学び方アップしました。

 2,3歳の子も遊べる内容ですし、小学生向けの計算を楽しくするアイテムとしても

役立ちますので、年長以外の年齢の子をお持ちの方もごらんください。




秋になると流行る頭脳パズル、推理ゲーム 2

2017-09-25 21:19:32 | 通常レッスン

夏休みの日々が子どもたちを内部から成長させるからか、秋になると

何だか急に大人っぽくなったように感じる子どもだち。

算数パズルやじっくり考えて取り組む手間のかかる活動に

熱中する姿を毎日、目にします。

(運動会シーズンになると、調子を崩す子も多いのですが……。)

上の写真は、『コードマスター』というプログラミングロジックゲーム

で遊ぶ年中さんたち。とても真剣に取り組んでいました。

年中のAくんが電車の絵を描いていた時、「本当の電車みたいに

線路を走るようにさせたい」と言いました。

そこで、実際の電車のおもちゃに紙を当てて

展開図を描く方法を教えました。(これはわたしが自閉っ子の男の子に

教えてもらった方法です)

Aくんは、最初、「難しそう」と言っていたのですが、

紙を当てて、えんぴつで形をなぞった時点で、何とかできそうだ、という

表情になって、上手に展開図を切り取ってから、

各側面の絵柄の方向を間違えることなく描きこんでいました。

展開図を描いて、立体にする作業は、

一度、できるようになると、子どもにとって魅力的で不思議を伴う

活動のようです。そういえば、うちの息子も幼稚園の頃、

よく展開図を描いて、さいころを量産して遊んでいました。

 

下の写真は、小学生の子が作った船(教室用にもらいました)に

魚を捕る網をつけて遊んでいました。

 

下の写真は年中のBくんが作ったパワーショベルです。

箱の切り方次第で、いろいろな形ができます。

工作ですが、立体パズルをしているようです。

 

レーザーメイズは、年中~小学校高学年まで大人気。


秋になると流行る頭脳パズル、推理ゲーム と 年長さんの算数レッスン

2017-09-23 22:40:22 | 通常レッスン

毎年、秋になると、虹色教室内で、頭を使ってじっくり取り組む

ゲームやパズルが流行りだします。

読書に熱中する子が増える季節でもあります。

そうした季節による好みの変化の影響か、

「急に算数の力がメキメキついてきました。」

「算数の苦手感がなくなってきたようで、進んで問題を解くようになりました」

といううれしい報告も、何件かいただいています。

上の写真は『ドメモ』という数当てゲームです。年長くらいから、3人以上で遊べます。

 

パターンを作っていくおもちゃに群れる男の子たち。

 

将棋に似たポケモンのバトルチェスも人気です。

 

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年長さんたちとの算数の時間に、

図の中に正方形や直角三角形がいくつ隠れているか探す問題にチャレンジしました。

 

最初に「直角探し棒」を作って、教室内の直角を探してあるいた後で

問題を解くと、子どもたちは意欲的に問題に取り組んでいました。

「3,4、5、8」の数カードを使って2ケタの数を作る問題にチャレンジ中。

じっかり考えて、一番大きい数や一番小さい数を作っていました。

そこで、3ケタの数も作ってみることにしました。

数のカードを操作して考えるのは楽しいです。

 

 


事務宛てのメールアドレスを変更いたしました。

2017-09-21 20:49:34 | 連絡事項

こんばんわ。

虹色教室事務です。

事務宛てのメールアドレスが変更しましたのでご連絡させていただきます。

今後、教室やオンライン教材などのお問い合わせは、こちら↓

nijiirokyousitsu@gmail.com

までお願いします。

オンライン教材HPのお問い合わせフォームから問い合わせていただくことも可能です。

オンライン算数教室

http://nijiiroonline.moo.jp/senden/

オンライン工作教室

http://nijiiro.lekumo.biz/kousakusample/

(※お子様の相談などについては教室で直接先生にお願いします。)


「先生、やって!」から、自ら進んで行動し、よく考えて行動する姿へ 6

2017-09-20 15:38:11 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

 

AちゃんBちゃんCちゃんの年中児3人のレッスンのなかで、こんなことがありました。

部屋を暗くしてから、それぞれが作った星雲を映しだしました。

色水の背後から懐中電灯を当てると、天井にはゆらめきながら変化する

黄色、緑色、赤色の光がきれいでした。

 

ついでに、恐竜のフィギュアを使った影絵遊びをしました。

それぞれ懐中電灯を手に、恐竜を走らせたり、

互いに取っ組み合う形で動かしたり、1匹の影を2つに増やしたりして

遊びました。

懐中電灯はひとり1つずつ持っているのですが、

わたしが2つの懐中電灯を使って影を増やす見本を見せたので、

Bちゃんが、「懐中電灯、2つ使いたい。貸してよ」と

Cちゃんの懐中電灯に手を伸ばしました。

でもCちゃんも、「わたしもふたつ使いたい。早くやってみたい!」と

譲りませんでした。

こんな場合、「ひとり1つずつだから」と我慢させることもできるし、

「順番に貸しあいましょう」と、先にじゃんけんさせることもできますが、

それよりも、2方向の光で影が増えることを不思議に思う気持ちを

優先させて、子どもたちにさらに1本ずつ懐中電灯を渡すことにしました。

すると、2本ずつ使っていろいろ実験した後で、

Bちゃんがみんなの懐中電灯を集めて6本全て使って、

光が作り出す不思議な世界を探求していました。

その姿を見ると、年少さんんたちの「やりたい!やりたい!」

「もっとたくさんほしい」「わたしもほしい」という騒ぎとは

ちがう「2つにしたら、どうなるかな?」「3つにしたらどうなるだろう?」

「4つにしたらどうなるかな?」という知りたい気持ちに基づいているのが

わかりました。

 

 下の写真は別の日に来た年中のDくんとEちゃんの姿です。

Dくんは輪ゴムをつないでいったものを椅子に引っかけて、引っぱって遊んでいます。

ただ引っぱると楽しいというだけでなく、どれだけ伸びたのか、

1mのものさしをあてて調べる作業に真剣に取り組む姿が

この時期の子だな、と思いました。

 

「こうしたら、どうなるか、目で確かめたい。

こうしてみたらどうなるか、それも、目で確かめたい」という

確かめることに貪欲な姿。

 

 

Eちゃんにゴムのつなぎ方を教えると、すぐにマスターして、どんどん

長いゴムを作っていました。手本を見る力が向上したのを感じます

 

 

長いゴムに太めのストローを切ったものを通していく作業を提案すると、

ゴムがひっかかって途中で細いストローで押し出さないと通すことができない

作業のややこしさがEちゃんにヒットしていました。

 

 

 DくんもEちゃんも「先生、やって」と頼んできたシーンこそ

ありませんでしたが、年中さん特有のやりにくさやわかりにくさが

見え隠れしました。

Dくんは最初工作をしていたのですが、作業途中のゴムを引っかけて伸ばしだすと、

どれくらい伸びるか、どんな風に伸びるか、といったことに夢中になって、

ずっとそれで遊んでいました。

Eちゃんは、これまでよりもひとつひとつの遊びが短くて、

パッと見たところ、遊び方が幼くなったようにも見えました。

でも、よく見ると、どちらも頭のなかの世界がこれまでより

活発に動いているため、あれこれ確かめる活動の様子が、

同じことばかり繰り返しているうようにも、

飽きて次々と遊びの対象を変えているようにも

見えるのだろうと思いました。

 

Dくん、Eちゃんにしても、Aちゃん、Bちゃん、Cちゃんにしても、

子どもたちが夢中になっているものに

こちらも関心を寄せて、疑問を口にしたり、子どもの意見に耳を傾けたり

していると、ちょっと気になる言動から一転して、

自発的にさまざまなことに取り組み、よく聞き、

理解し、よく考えて行動する姿を見せるようになっていました。

 

 

 


あっという間に崩れて、新しく生まれ変わる

2017-09-18 19:13:35 | 工作 ワークショップ

祝日の教室模様。

『地下鉄のできるまで』という絵本を見て感動した

1年生のAくんとBくんがせっせと地下鉄の世界を作っていました。

 

渾身の力作を壊すのが惜しくて、

午後のレッスンの子が来るまで残しておきました。

 

午後に来たのは工作好きの3人の男の子たち。

妹や兄弟もいっしょに来たので、6人の子たちが

興味津々に地下鉄の世界を眺めていました。

午後に集まった子たちがやりたがったのは、工作です。

 6人で工作するとなると、地下鉄を残したままではあまりに手狭です。

「午前の子たちが作った作品は先生が片付けるから、それぞれ、

自分の作りたいものに必要な材料は何か考えて」

そう言ったとたん、6人総出で一気に地下世界を壊し始めて、

あっという間に見る影もなくなりました。

 下の写真は、上の写真からわずか1分後の教室の様子です。

まだ地下鉄の残骸で散らかったままの部屋で、

子どもたちは自分の作業用のテーブルや見本、

道具などを出して、もりもり作りだしています。

 

壊す行為は、創造的な気分を盛り上げてくれるものでもあります。

戦国時代の陣を作りながら、自分の作品を舞台に遊び出す子たち。

年長の妹ちゃんはパソコンを作っています。5年生のお兄ちゃんは大きな船を作っていました。

 

工作上手の2年生のCくんは、電車の鉄道運転シュミレーターを作りました。

 シュミレーターに画像を映すのに苦労しましたが、無事成功しました。

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今日の算数の時間の一コマ。

1年生のAくんが計算を速くするため、すごいアイデアを思いつきました。

 

問題は下の写真のおもちゃです。

1~12までのタテの列に

12個ずつ玉が入っています。

「並んでいる玉は、全部でいくつでしょう?」とたずねると、

最初は、12たす12は、24で、それから12たすと……と計算していましたが、

途中でこんがらがってしまって、「もう、無理。」と言いました。

そこで、12×12の玉でできている正方形に線を入れる真似をして、

「ここは、10が10個だね」と言うと、

「だったら、そこは、100で、その隣のところは、10がふたつだから20で、

上のところは、2が10と2が2個だから……と、4つのパーツに分けて考えて、

144という答えを出しました。

Aくんは紙を切り分けて、立体の空き箱の表面に貼って工作するのが

好きな子ですが、その体験で蓄えた知恵を

計算をする時も発揮できるようになったようです。

 

 


「先生、やって!」から、自ら進んで行動し、よく考えて行動する姿へ 5

2017-09-17 17:50:53 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

Bちゃんの指示通りにストロー2本をつなげて作った取っ手を太めのストローに

通すと、伸び縮みするようになりましたが、

引っ張るとストローが抜けてしまいます。

セロテープのストッパーをつけることを提案すると、

それを見ていた子どもたちが、感心した様子で、

「長くしても取れないね」と言いました。

 

子どもたちと工作する時、いつも感じるのですが、

どんなにささやかなアイデアでも、発見でも、

子どもが自ら気づいたことは、他の何ものにも代えられないやる気のもとで

あり、もっともっと自分で考え、自分の手で取り組んでいこう

とする態度の起爆剤です。

 

年中の子たちというのは、「自分が気にしているポイント」については、

こうしたい、ああしたい、これは違う、こんな風になっている、

こことここはいっしょ、など、それは細かく言いたいことがあるものです。

思いが複雑になった分、自分の手にあまることも

やりたくて、うまくできない自分に

不安を覚えたり、イライラしたりしています。

 

伸び縮みする取っ手を作ったBちゃんは、今度は、スーツケースの側面にも

取っ手がつけたかったのです。

でも、困ったことが起きました。

上下の伸び縮み、右左の伸び縮みの取っ手を

スーツケースの背面に貼り付けると、ストローとストローが交差して重なり合って、

不格好な上、動かなくなるのです。

そこで、側面の取っ手は穴を開けて内側に貼ってはどうか?とたずねると、

とてもうれしそうでした。

こんな風に大人が解決した方法も、「そうか、そんなやり方があるのか」と響くのが

この時期の子ですが、手出しや何かを学ばせる働きかけは、全体の1、2割にして、

作業の面でも、方法を考える面でも、

ほとんど自分でやり遂げたという満足が残るように気をつけています。

 

下の写真は、スーツケースの内部の様子です。側面の取っ手が

スーツケースの中で伸び縮みするようになっています。

今回の話題は、年中児を中心に書いているのですが、

どの年代の子も、「あれれ?困ったな」と映る気になるところと

表と裏で一体となっている「この年齢ならではの新しい魅力や可能性

の芽」があるのを感じます。

対応はというと、「あれれ?困ったな」に大人が足をすくわれずに、

対になっているこれから育っていく肯定的な側面に

じっくりていねいにつきあっていると、いつの間にか、

最初に目にした否定的な面は、影をひそめてしまいます。

 

たとえば、年長児のそれは、

「やりたいことがないよ」「そんなのつまんない」という

めんどくさそうな態度です。

年中までは、それが何であれ、「やりたい!」「やらせて!」

と飛びついていたことに対して、「そんなのやったって面白くないもん」

「どうせ作ったってお母さんが捨てちゃう」

「あんまり大きいもの作ったら、持って帰ったらダメって言われるよ。

うちのお母さんは、これくらい(ティッシュ箱くらいを手で作り)じゃないと

だめっていうと思う」「どうせ~じゃない?」なんて生意気な言葉を

つぶやくようになります。

 

倦怠感を帯びたこうした年長児の姿と対になっているのは、

「急に全体像が見えてきた」「先が読めるようになって、やった後のことまで

見えてきた」という自分のしていることをメタな視点でとらえだした

兆しがあります。

 

次回に続きます。

 


「先生、やって!」から、自ら進んで行動し、よく考えて行動する姿へ 4

2017-09-16 13:15:56 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

「そんなことで?と感じる場面で尻込みする姿」と

「行動することだけでなく、行動する内容の質を気にかけるようなった姿」が、

表と裏、合わせてひとつのセットとなっているような年中さんたち

を目にして、年少までの姿との違いを思いました。

 

シャッターの棒を下ろす作業は、年少の子たちもやりたがります。

でも、たいていは、危なっかしく棒をふらふらさせて突起に引っ掛けた挙句、

グーッと力を込めて棒を下に引く段になると、力が抜けて、

「もういい」とこちらに仕事を預けてしまうことでしょう。

また、電池を交換するにしても、年少までの子は、

プラス極、マイナス極なんておかまいなしに、

とにかく電池を押し込んでおしまい、となりがちです。

 

それが、年中児となると、している作業にに心が伴ってきます。

やってることの意味を理解したり、うまくいかない原因を

推理したり、自分が何を期待されているのか、

自分はどんな風にやり遂げたいのか、意識したりしています。

とはいえ、そうした気持ちは、身近な大人に認めてもらい、

言葉にしてもらわないことには、

そうした思いが自分の中で渦まいていることすら気づけない時期でもあります。

こんなことがありました。

スーツケースの取っ手の作り方を教えると、

Bちゃんがいいことを思いつきました。

スーツケースの取っ手は引っ張ると長くなるし、

押さえると短くなるので、取っ手をストローに通すと、

伸びたり縮んだりするというのです。

 

次回に続きます。