虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

「その子らしさ」に導かれて成長する 2

2011-12-16 22:01:02 | 子どもの個性と学習タイプ

少し前に、発達障がいの子の記事に対して次のような質問をいただいていました。

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奈緒美先生のブログだったかどうかははっきり覚えてないのですが、

“人の気も知らず、エジソンだなんだ言うのはやめてくれ”といった

親御さんの記事を目にしたことがあるのですが(断片的でゴメンナサイ)

こういったことに関してどのようにお考えですか?

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ちまたで「エジソンやアインシュタインが発達障がいだったのでは?」という話題が

よく取り上げられるため、

それに関して過敏に反応する方もいらっしゃるのだと思います。

 

発達障がいの子はどの子もエジソンのような天才的な能力を発揮する

ことができるとまで言ったら、極端で問題のある意見ですよね。

 

でも発達障がいのある子の「こだわり」や「過集中」といった特性が、

最もよい形で使われたなら、

それはその子の潜在能力を大きく開花させることにつながると

思っています。

わたしは発達障がいのある子ほど

「その子らしさ」に気づいて、それを支えることで伸びていく子らはいない

と感じています。

 

それは発達障がいのある子たちの身近にいる方の多くが

実感しておられることだとも思います。

 

エジソンやアインシュタインのようになれる子がいると言えばオーバーでも、

「エジソンやアインシュタイン並みに

 

寝ても冷めても○○のことばかり……それにどれだけ情熱と時間を

注げるかという点では世間で言う天才に引けを取らない……

 

という発達に凸凹のある子らは

一般的なバランスの取れた発達をしている子の

何十倍にものぼるのではないでしょうか。

 

バランスが悪い、凸凹がある、とは

裏を返せば、そういうことでもあるからです。

 

 

それが天才を生み出す確率にどう影響するかまでは

わかりません。

でも、そうした発達に凸凹のある子の凸部分やこだわることや、過度に集中することに

スポットライトを当てて、

「その子らしさ」を大事にしながら成長を見守ることで、

その子の成長する力は加速すると感じています。

 

「その子らしさ」や成長の可能性の芽は、

子どもの好きなことや喜ぶことで見つかるのはもちろん、

親御さんの目からすると心配しか感じ取れないようなシーンでも

たくさん見つかります。

 

たとえば、2、3歳の自閉っ子がお友達から

何かを奪い取りにいくことを繰り返すとします。

そんなシーンも、

客観的にふたつの視点から眺めれば、

子どもの成長のための鍵を見つけることができるかもしれないのです。

 

ふたつの視点というのは、

ひとつは、見たままに、

「他の子から物を奪い取る」という行為を止めに行って

「お友達のものを取っちゃダメ」と教えたり、相手の子を気づかったりすること

で、

たいていの方がそうした対応に追われて疲れ果ててしまっている

ことでしょう。

 

もうひとつの視点は、しつけはしつけとして対処しつつも、

奪い取りに行こうとする行為も、「その子らしさ」として

コミュニケーションを避けがちな自閉っ子にしては

成長のきっかけになるかもしれない、と捉えるのです。

 

 

「この子は何に惹きつけられて。繰り返し取りに行こうとしているんだろう?」

 

「物を取るという行為とはいえ、お友達に接近することは嫌でない様子。

もめない形で遊びを成り立たせる工夫はできないか?」

 

「この子がしつこくこだわる物の色は?素材は?

触った感触は?音は?動きは?お友達のどのような持ち方に

欲しい気持ちが刺激されているの?」

 

「この子の物を取りに行こうとするエネルギーをもっと肯定的な活動に

変化させられないかな?」

 

「物を奪おうとする時に、大人が相手をして、じらしたり、

アイコンタクトを取ったり、やり取り遊びのきっかけを作れないかな?」

 

そうした問いを自分にかけながら

子どもの姿を眺めて、いろいろと子どもへの働きかけを

ためしてみるとよいのではないでしょうか。

 

「その子らしさ」がなかなか見つからないようなタイプの子も

少し視点を変えて子どもの活動を眺めることで

新たな発見があるものですよ。

 

最初の質問からちょっと話が逸れてしまいましたね。

「人の気も知らず」というのは、親御さんの言葉なのか、

発達障がいの当事者の方の言葉なのかはわかりませんが、

おそらく辛い現実にたくさん遭遇されたのだと思います。

でも、凸凹のある人が生き辛く能力を発揮することができないのは、

ハンディーのせいだけでなく、

凸凹を許さない周囲の不寛容にも原因があるはずです。

 

シアトルに来て、こちらで暮らしている方に聞いたところ、

アメリカではADHD等の発達障がいを持った方が社長になっている率が

とても高いのだそうです。

アメリカでは人の能力に凸凹があることを

そのままでよしとして認めているお国柄があって

そうしたことが可能になっているという話でした。

アメリカにはアメリカの問題点もあるのでしょうが、

「人間、少しくらい凸凹があったっていいんじゃないか?」という

おおらかな考え方が、ハンディーがあってもがんばって努力していく力のもと

にもなるのではないか、と感じました。

 

 

 


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3 コメント

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Unknown (マーブル)
2011-12-17 21:43:05
なんだか、泣けてしまいました。
たくさんの人が凹凸をおおらかに認めて支えてくれたのならその子らしさは素敵に伸びていくと思います。
しかし、保育園の先生たちは一緒に色々対処を考えてくれたり、熱心ですが、悪い面にやはり目がいくようで、それはこどもの内面より悪いことをした行動をとりあげて伝えられるので、毎日毎日親は、なんとも言えない気持ちになり、自分自身の肯定感が下がるときがあります。
発達しょうがいの子供を持つ親はまわりにささえられながら、悩みながらでも進んでいくしかないんですよね。なんだか、あつくなりとりとめのない文章ですみません。とにかく先生のブログをみて助けられています。いつもありがとうございます。気をつけて帰国してくださいね。
相談です (ぱん)
2011-12-17 23:24:50
うちの娘(2歳2ヶ月)は、お出掛けしよう、お散歩行こう、と誘っても、お家で遊ぶと言ってあまり外に出たがりません。

私は家に居るほうが楽なので、つい家の中で過ごさせてしまうのですが、本人の望むまま家の中で過ごして良いものでしょうか?

家の中では、パズルやシール貼りやままごとセット、積み木、お絵かきなどが好きでよくやっています。あまりテレビは見ません。

ちなみにパパが休みの日に公園に誘うと喜んでついて行くのですが…。

アドバイス頂けると助かります。
Unknown (ワドルディ)
2011-12-18 02:11:52
凸凹のある子供に対して、周囲のおおらかな対応が必要・・・とは私もいつも感じるところです。
というか、学問的な「伸ばす」技術よりも、そういう人間的な器の大きさが、療育者(というか接する大人)には一番必要だったりしますね。

とくに学校や園など、社会を学ぶ場にいる大人に、そうしたおおらかさがあればよいのですが、、、。なかなか、日本は難しい。
先生の立場に立ってみれば、
なにかと文句を言ってきそうな他の保護者との板挟みなところもあり、「おおらか」が保ちにくいのも現実でしょう。
でも、
社会では凸凹が認められにくく伸びにくかったとしても、それはそれとして、親がしっかりおおらかに子供の素を認めていれば、子供は伸びますよね。
一番いけないと思うのは、社会の、縮こまった「出る杭は打つ」雰囲気に、親が飲み込まれてしまっている家庭です。子供のちょっとした行動にも警戒して、社会に嫌われないよう縮こまっていると、親はますます陰鬱な状態になります。もともと凸凹の子は、ただでさえ社会で出る杭打たれて傷ついているのに、親がそれでは、もっと自信を喪失してしまいます。

「何を敵に回たとしても、自分は子供を信じる!」って思う親であること。社会に好かれようと思う自分を、一度やめてみる。
そうやって孤独を覚悟するというかある意味ふっきれた時、本当に共感してくれる人に会うし(お慈悲的な支援者でなくて)、子供も伸びていくような気がします。

親が変わると、自然と似たような人と出会うものです。凸凹を認めていける日本人離れした感性を持ちあわせている人々と出会い、良い環境に子供の身を投じるためにも、親が強くならねば。
おおらかになってくれる人が少ない、、と嘆くより、そういう人を周りに集められるような自分になるほうがなんぼか手っとり早い。
、、、と、日々精進、です。

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