昨年末の韓米、韓米日共同訓練の際には短・中・長距離など各種のミサイル発射に重点を置いた北朝鮮が、ここのところ様々な種類の非対称戦力を動員した軍事行動を展開し、威力を誇示している。

2023-03-28 09:11:22 | 米国は、「世界の憲兵」をやめろ!

列車、海、地下からも発射…北朝鮮、

さらに威力的な「核による反撃」を誇示

登録:2023-03-27 06:34 修正:2023-03-27 16:36
 
ニュース分析ㅣ多様化したミサイル発射実験
 
 
北朝鮮が21~23日、金正恩国務委員長が見守る中、「核無人水中攻撃艇」の水中爆発試験と戦略巡航ミサイル核弾頭模擬空中爆発試験をそれぞれ行ったと発表した/聯合ニュース

 今月13~23日に実施された韓米合同演習「フリーダムシールド(FS・自由の盾)」を狙った北朝鮮の武力示威が多様化し、対応のレベルも高まっている。昨年末の韓米、韓米日共同訓練の際には短・中・長距離など各種のミサイル発射に重点を置いた北朝鮮が、ここのところ様々な種類の非対称戦力を動員した軍事行動を展開し、威力を誇示している。

 北朝鮮は、「フリーダムシールド」の開始を基点に、潜水艦発射巡航ミサイル(12日)▽大陸間弾道ミサイル(16日)▽巡航ミサイル(22日)▽核無人水中攻撃艇(21~23日)の実験などの武力示威を行った。北朝鮮は弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルや自爆型無人潜水艇にも核兵器を搭載できるようになったと主張した。このような北朝鮮の動きには、韓米の探知、打撃、迎撃を避けてミサイルを発射する発射手段(プラットフォーム)を多様化したことを示す狙いがあるとみられる。北朝鮮はかつて主に使用していた車両形態の移動式ミサイル発射台(TEL)だけでなく、列車、海中潜水艦、貯水池、ゴルフ場にある池の付近、野山の地下格納庫からもミサイル発射が可能であることを示した。

 これは昨年の北朝鮮の行動とは全く違う。昨年11月、北朝鮮は韓米合同空中演習(ビジラントストーム)に対応し、東海(トンヘ)・西海(ソヘ)への砲撃、短距離ミサイルの発射、大規模空軍訓練、戦術核運用部隊の訓練、東海北方限界線(NLL)以南のミサイル発射などで対抗した。しかし、最近の北朝鮮の武力示威は当時よりはるかに威力的であり多様だ。

 
 
最近の北朝鮮のミサイル発射などの武力示威 //ハンギョレ新聞社

 特に北朝鮮は18~19日、「核反撃仮想総合訓練」を通じて、戦術核弾頭の搭載が可能だという戦術弾道ミサイル(KN23・イスカンデル)を発射し、核爆発操縦装置と起爆装置の動作を検証したと主張した。21~23日には核無人水中攻撃艇の水中爆発実験を発表するなど、核戦力を誇示した。

 北朝鮮はこれらを通じて反撃能力の強化による戦争抑止力の確保を見せつけようとしているものとみられる。

 北朝鮮が強調する「核による反撃」は、20世紀に米国とソ連が核兵器で対決した冷戦時代の核抑止戦略である第二撃(セカンドストライク)論理に基づいている。先制攻撃で相手が壊滅せず核による反撃(第二撃)が可能な場合、自分も共に破滅(相互確証破壊)するため、いずれも先制攻撃ができなくなるという論理だ。北朝鮮は「第二撃」の能力の確保に取り組み、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に続き潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)を開発している。海中に隠れている潜水艦と核無人水中攻撃艇は、第二撃の戦力だ。先制核攻撃を受けても、海中潜水艦などは生き残り、SLBMなどを発射して相手を壊滅できる。

 「労働新聞」の報道によると、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長は20日、「核反撃仮想総合訓練」を現地指導する際、「我々が核を保有している国という事実だけでは戦争を実際に抑止できない」とし、「いつでも敵に恐れられる、迅速かつ正確に稼動できる核攻撃態勢を完備してこそ、戦争抑止の重大な戦略的使命を果たすことができる」と述べたという。

 さらに北朝鮮は、ミサイルを地下ミサイル格納庫(サイロ)に配備し、有事の際の生存性を高めるために移動式車両や列車、貯水池などに分散配置してミサイル発射プラットフォームを多様化している。北朝鮮が12日に発射した潜水艦発射巡航ミサイルは、北朝鮮が2021年から開発してきた戦略巡航ミサイルを潜水艦で使用できるよう改良したものとみられる。地上で発射していたミサイルを海上でも活用すれば、兵器を新たに開発する時間と費用を減らし、短時間で第二撃の能力を向上させることができる。

 北韓大学院大学のキム・ドンヨプ教授は「北朝鮮が弾道ミサイルだけでなく、超大型放射砲、巡航ミサイル、無人水中攻撃艇まで核起爆装置を結合して実際に爆発する姿を見せた点に注目し、懸念している」とした上で「北朝鮮が核攻撃手段を多様化すれば、それだけ量的増加も必要であるため、核物質の増加に邁進するだろう」と語った。

 韓国国防部は、北朝鮮の核弾頭小型化技術と戦術誘導兵器搭載の可能性について「関連技術が相当な水準に進展したとみているが、戦術誘導兵器体系に搭載できるとは判断していない」と述べた。北朝鮮の主張とは違って、まだ核弾頭を小型化し、ミサイルなどに搭載して実戦配備した状態ではないという意味だ。

 一方、23日に「フリーダムシールド」を終えた韓米は来月初めまで演習を続ける。韓米の海軍・海兵隊は今月20日に始まった師団級連合上陸訓練の「双龍訓練」を来月3日まで継続する。

 北朝鮮は強く反発した。北朝鮮の対外宣伝メディア「わが民族同士」は「南朝鮮傀儡の好戦狂たちが米帝との狂乱的な合同軍事演習で朝鮮半島情勢を危機一髪の戦争の淵に追い込んでいる」とし、「相手が誰かも知らずに銃口を突きつけているのだから、事態はさらに破局に向かわざるを得ない」と主張した。似たような性格のメディア「メアリ(こだま)」も「好戦狂たちの狂気に満ちた策動によって朝鮮半島で戦争勃発の導火線は刻々と燃え上がっている」と述べた。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1085229.html韓国語原文入力:2023-03-27 02:44
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ロシアがウクライナを侵略して以降、核兵器に関する最も決然たる表明の一つで、ウクライナへの軍事支援を強化する米国主導の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)への警告です。

2023-03-27 11:33:22 | 歴史に照らして整合性を!

ベラルーシに戦術核配備

ロシア大統領表明

 ロシアのプーチン大統領は25日放送の国営テレビで、ロシアが戦術核兵器を隣国ベラルーシに配備すると表明しました。ベラルーシのルカシェンコ大統領と合意したといいます。ロイター通信が伝えました。


 ロシアが国外に核兵器を配備するのは1990年代半ば以降初めて。ロシアがウクライナを侵略して以降、核兵器に関する最も決然たる表明の一つで、ウクライナへの軍事支援を強化する米国主導の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)への警告です。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)はツイッターで「ウクライナ戦争では、誤算や誤解が生じる可能性が極めて高い。核兵器を共有することは、状況をより悪化させ、壊滅的な人道的結果をもたらす危険性がある」と述べました。

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「独島についての日本側のいかなる外交的難癖と挑発に対しても、我々は断固として、かつ明確に国家的・国民的反論を提起すべきだ」と語った。

2023-03-26 12:01:12 | 韓国を知ろう

韓国野党、日本の独島虚偽報道に「共同抗議声明」を提案…

与党、受け入れ意思は

登録:2023-03-24 02:42 修正:2023-03-24 07:11
 
 
共に民主党のパク・ホングン院内代表が23日午前、国会で行われた政策調整会議で発言している/聯合ニュース

 韓日首脳会談の波紋が収まらない中、共に民主党のパク・ホングン院内代表は政府に対し「民意と国会を盾として、一日も早く誤った対日外交の出口戦略を立てよ」と述べた。

 パク院内代表は23日に国会で行われた民主党の政策調整会議で、野党や学界などの反発の動きを利用して政府は対日外交を修正すべきだとしつつ、このように述べた。同氏は「外交において民意は重要な戦略的モメンタムが作れる機会」だとして「ソウル大学に続き高麗大学の教授たちも強制動員賠償案の撤回を要求している。国会も外交統一委員会が採択した強制動員解決策無効決議案を本会議で議決するとともに、聴聞会と国政調査を通じて立法府の責務を果たさなければならない」と述べた。

 パク院内代表は日本メディアの韓日首脳会談報道について、「大韓民国の国会議員の共同名義で抗議声明を発表しよう」と国民の力の指導部に提案した。同氏は「日本の公営放送をはじめとする諸メディアが、韓日首脳会談で『独島(トクト)問題への言及があった』と主張している。これは韓国憲法の規定する大韓民国の領土をフェイクニュースで侵略したのと同じだ」とし「独島についての日本側のいかなる外交的難癖と挑発に対しても、我々は断固として、かつ明確に国家的・国民的反論を提起すべきだ」と語った。

イム・ジェウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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-1998年に金大中政権が「金剛山(クムガンサン)観光」をはじめとする南北和解と民間交流の扉を開いた当時、統一部次官でいらした。金元大統領は事後に米国を説得したと言われているが。

2023-03-25 12:01:12 | 韓国を知ろう
「尹錫悦式の第三者弁済、世界外交史に記録されるべき問題ある解決策」(2)
 
登録:2023-03-24 02:45 修正:2023-03-24 09:53
 
チョン・セヒョン元統一部長官インタビュー 
「大統領の哲学と参謀の後押しがあってはじめて自主外交」
 
 
                                            チョン・セヒョン元統一部長官//ハンギョレ新聞社

(1のつづき)

-米国の外交政策では理想主義と現実主義の2つが競合してきたが、バイデン政権はどうか。

 「米国の政治学者や政策家にはリアリスト(現実主義者)もいれば、アイディアリスト(理想主義者)もいる。それは彼らの世界で割れているに過ぎず、政治の世界に移ればバイデンになろうがトランプになろうが、基本的にリアリストだ。はっきり言えば商売人だということだ。自分たちの利益を最大化しつつもやりすぎに見えないように『グローバル』や『包括的』、『価値』などという概念で装飾しているにすぎず、本質的に大きな違いはない。理想的な国際秩序を夢見た『永遠平和のために』を書いたイマヌエル・カントも、大統領であったらリアリストにならざるを得ない」

-外交では概念、そして概念に拘束される用語とその先取りが非常に重要、かつ効果が大きいと思われる。

 「政治の世界において、論理や理論は非常に大きな力を持つ。北朝鮮の政治辞典を見れば『文学と芸術は革命と建設の有力な武器』だと説明している。人を洗脳し、行動を引き出すのはすべて言葉の力だということだ」

-尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、南北関係は急激に冷え込んだ。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代には南北首脳会談は絶えたことがなく、特に文在寅時代は史上初の朝米首脳会談が2度も行われたこととは雲泥の差だ。北朝鮮は韓国と米国に絶えず『行動対行動』を要求し、相当な水準の譲歩もしたが、実際に得たものはほとんどない。今のところ、米国や尹錫悦政権の前向きな態度も期待できない。南北関係と朝米関係は当面どうなるのか。

 「まず、『行動対行動、言葉対言葉』というものから整理しよう。どの国であれ国同士の関係では、相手の善意だけを信じて先に無条件に譲歩することはできない。最初は言葉で始まるが、それを行動に移すのか、言葉と行動が一致するのかを確認していきつつ、その次の段階へと進むものだ。そのような点で、北朝鮮の韓国と米国に対する不信は大きい。北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席は『世の中には大きい国や小さい国はあるが、高い国や低い国はない」と語っているが、そうは言っても、国際政治においては実際に高い国や低い国がある。米国はその頂点だ。私が本に書いたように『国際政治は基本的に暴力団の世界』と同じだ。弱小国は行動対行動を必ず履行したがり、大国はまず行動を要求する」

 
 
2019年6月30日、文在寅大統領(右)と北朝鮮の金正恩国務委員長が両手を取り合って言葉を交わしている。真ん中は米国のドナルド・トランプ大統領。南北米の首脳が同時に会ったのは1953年の朝鮮戦争の休戦以降の66年で初めてのことだった/聯合ニュース

____________
平和とは自己中心性の強い言葉

-そのような平行線はなかなか狭まりそうにないが。

 「なかなか狭まらない。しかし、これまでの朝米関係を見ると、北朝鮮が崖っぷち戦術で米国を困らせ体面を傷つけるようなやり方をすれば、米国は少しは『行動対行動』へと傾く。そうして『ニンジンを与えてよく言うことを聞くようになった』と思ったら、再びムチを手にする。北朝鮮がそれに抵抗すれば、米国は『普遍的価値』や『人類の平和』を持ち出す。だが『平和』というものも、完全に中立的で客観的ではない。自分に有利な状態において戦争が起きない状態を平和という。かつてローマ帝国が全世界を掌握していた時代は『パックス・ロマーナ(Pax Romana。ローマによる平和)と言われ、英国が全世界を支配していた時代は『パックス・ブリタニカ(Pax Britannica)』と言われた。今のパックス・アメリカーナも同じだ。自己中心性の非常に強い言葉だ」

-米国は自らが統制可能な範囲で朝鮮半島の緊張と対立を維持しようとしているということか。

 「まさにそれだ。パックス・ロマーナもローマ帝国が自国に反抗する国がない状態を作っておいて、他国、他民族の犠牲の上に立って享受したものだ。米国も同じだ。自国の勢力圏内にある国々を圧迫したりなだめたりしながら、いくらでも犠牲を要求できるということだ。米国は尹錫悦政権が自国に要求する『拡大抑止』政策を望み通りに受け入れている。韓米合同軍事演習では、北朝鮮にとって非常に脅威となる先端兵器と戦略資産を展開している。同時に、韓国から経済的にいかに多くを抜き取っていっていることか。米国の電気自動車支援法や半導体サプライチェーン編入が代表的な例だ。中国を包囲することを意図したインド太平洋戦略もそうだ。米国が世界の各地域に組織する安保同盟は、いわゆる同盟国を自国陣営に縛りつけておくためのフレームだ。韓米日3カ国同盟、QUAD(米国、日本、インド、オーストラリアの4カ国協議体)、AUKUS(米国、英国、オーストラリア3カ国同盟)も同様だ。しかし、アジア地域においては米国が経済的利益を引き出しうる国は韓国しかない。インドは中国とロシアの側になってしまった。フィリピンはまだ貧しい国なので、あまり利益は得られない」

____________
「溝の中の牛」のように毅然と

-外交における弱小国の非同盟中立路線を意味する「フィンランディゼーション」を韓国なりのやり方で行う余地はないのか。

 「韓国の対外政策にフィンランディゼーション(フィンランド化)の概念を適用するには、韓国の規模が大きくなりすぎた。韓国が地政学的に米国という海洋勢力と中国という大陸勢力の二大強国の間に挟まれているのは間違いない。しかし、韓国はもはや『2頭のクジラの間のエビ』ではない。左右の大きな堤防の間の溝の中を歩いていく牛が、左の草も右の草も食べ、子牛に飲ませる乳も作るような外交をしなければならない。こんにちの韓国は、20世紀初頭のソビエトロシアとドイツという大国の間に挟まれたフィンランドのような弱小国ではない。のらりくらりと顔色をうかがいながら、その都度危機を免れるという段階は過ぎた。ただし、『弱小国意識』を持っていたら『溝の中の牛』のように毅然としてやって行くことはできない。これからは『クール』に、米国にも中国にも韓国の立場を堂々と説明し、軸がぶれないようにやって行くべきで、米国でなければ生きていけないというような敗北主義に陥らないようにしようということだ」

-1998年に金大中政権が「金剛山(クムガンサン)観光」をはじめとする南北和解と民間交流の扉を開いた当時、統一部次官でいらした。金元大統領は事後に米国を説得したと言われているが。

 「説得もしていない。後にビル・クリントン大統領が金大中大統領に会い、『そうだ、あの場面を私は東京で見ましたが、美しかった。おめでとうございます』と言った。長官時代は大統領と2人きりで会う機会が多かったのだが、時に果敢な決断を下すのを見て驚いた。金元大統領は軍事独裁政権の下で非常に苦労したからあのような勇気が生まれたのだという説明は、話にならない。(判断力と決断力は)やはり読書量のおかげだと思う。金大中元大統領は読書量が膨大で、記憶力も良かった」

____________
金大中の決断力の源は膨大な読書量

-近くで見ていてどうだったか。

 金大中大統領が刑務所に収監されていた時、アルビン・トフラーの『第三の波』という本を読んで、後に政権を握るやいなや情報通信(IT)産業に大規模な投資をした。DJ(金大中)はいつも手帳を持ち歩いていた。本を読んでいて印象的な部分があったら、下線を引いて必ず手帳に書き写す。そうすると頭の中に入って記憶に残る。とても博識だった。YS(金泳三(キム・ヨンサム)元大統領)は『頭脳は借りられるが健康は借りられない』と言ったが、DJは知識においては他人から力を借りる方ではなく、学者たちも重用しなかった。金大中大統領が好んで使った言葉は『書生の問題意識と商人の現実感覚を兼ね備えた知識人になれ』というもの。学者たちは書生的な問題意識ばかりがあふれ、実務がまとめられないという理由からだ。後任の盧武鉉大統領も読書量が非常に多かった」

-金大中政権の太陽政策と盧武鉉政権の北東アジア均衡者論、文在寅政権の朝鮮半島運転者論のような努力があり、一時は『朝鮮半島の春』に対する期待も高かった。しかし、実質的に何が残っているかは不明確だ。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両保守政権時代は南北関係が原点に逆戻りし、極右系の尹錫悦政権では退行が際立つ。自主的外交はどうすれば可能か。

 「何より大統領が自主的外交と朝鮮半島の平和について哲学を持たなければならない。そして、それを支える参謀に出会わなければならない。金大中大統領はイム・ドンウォン(当時の統一部長官、国家情報院長)に出会い、盧武鉉大統領はイ・ジョンソク(当時の統一部長官)に出会った。助けてくれる参謀がいたにもかかわらず、自主的な外交を試みた大統領は多くはなかった。その両方が揃わなければできないのだ」

-尹錫悦政権の残りの4年間は、韓国の筋の通った外交や朝鮮半島の平和に対する期待を持つのは難しいだろうか。

 「南北関係にも四季があり、国にも時運があると思う。当面、5年はそのように生きる運命だったら仕方がないのではないか。ただ、その運命は永続的に固まる構造的問題ではないということだ。大統領が変わり、良い参謀に出会えばいくらでも可能となる。今回の韓日両国の強制動員賠償問題なども、再交渉するとか立ち向かうとか、いくらでもやりようはある。繰り返しになるが、筋の通った大統領の哲学と、それを支える参謀が揃った政権でなければならない」

文/チョ・イルチュン先任記者、写真/キム・ジンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が日帝強占期の強制動員被害者に対して韓国企業の寄付金で賠償する「第三者弁済」方式を推し進め、波紋が広がっている。

2023-03-24 09:50:47 | 韓国を知ろう

「尹錫悦式の第三者弁済、

世界外交史に記録されるべき問題ある解決策」(1)

登録:2023-03-23 03:58 修正:2023-03-24 09:29
 
[ハンギョレ21]韓国外交・安保の道を模索した『チョン・セヒョンの洞察』を出版したチョン・セヒョン元統一部長官 
「セルフ賠償」は日本が自分の手を使わず事を処理したもの…大統領の哲学と参謀の後押しがあってはじめて自主外交」
 
チョン・セヒョン元統一部長官が2023年3月15日、ソウル麻浦区孔徳洞の韓国統一協会の事務所で、自らの対北朝鮮政策の経験と外交哲学を語っている//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が日帝強占期の強制動員被害者に対して韓国企業の寄付金で賠償する「第三者弁済」方式を推し進め、波紋が広がっている。

 2023年3月16日、尹錫悦大統領は日本を訪問し、岸田文雄首相と首脳会談を行った。韓国政府が自主的に賠償問題を解決する方策を双方が公式に確認し、日本に免罪符を与えた。4月には米国ワシントンで韓米首脳会談、5月には日本の広島で韓米日首脳会議が相次いで行われる見通しだ。これは尹錫悦式の「セルフ賠償」解決策を公認し、韓米日3カ国同盟を固める過程だ。

 韓国政府は3月6日、2018年に最高裁(大法院)で勝訴した強制動員被害者に対して、韓国企業の寄付金で賠償すると発表した。日本政府の謝罪や戦犯企業の賠償参加は含まれなかった。日本の政府とメディアは歓迎した。米国も、韓国政府の発表からわずか1時間あまりでジョー・バイデン大統領とトニー・ブリンケン国務長官が相次いで歓迎の声明を発表した。しかし韓国では、被害当事者が「そのような金は受け取らない」として、日本に心からの謝罪と賠償を重ねて求めた。市民社会団体からも、いわゆる「セルフ賠償」は韓国最高裁判決を無視する屈辱的外交であるばかりでなく、今後の韓日関係をより一層こじらせる最悪の決定だとの批判があふれている。

 国防部は2月、尹錫悦政権初の国防白書で「北朝鮮政権と北朝鮮軍は我々の敵」と明示した。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に削除された文言を6年ぶりに復活させたのだ。尹錫悦政権が発足するやいなや朝鮮半島は急激に安保危機に陥り、外交は「親米一辺倒」との批判を受けている。何が問題なのだろうか。

 
韓日首脳会談を控えた2023年3月15日、ソウル中区のプレスセンターで韓日歴史正義平和行動の主催で行われた記者会見で、ハム・セウン神父(前列中央)ら参加者たちが尹錫悦政権の強制動員解決策の無効と謝罪賠償を求めている/聯合ニュース

 ハンギョレは、金泳三(キム・ヨンサム)政権と金大中(キム・デジュン)政権で対北朝鮮・統一政策を主導したチョン・セヒョン元統一部長官にインタビューを行った。チョン元長官は最近、新冷戦と表現される国際秩序の激変期における韓国の外交・安保の道を模索した『チョン・セヒョンの洞察』という本を出した。チョン元長官とのインタビューは3月15日午後、ソウル麻浦区(マポグ)の韓国統一協会の事務所で行われた。同氏は現在、元・現職の統一部公務員が主軸となっている韓国統一協会の会長を務めている。

____________
加害者に「何もしなくてもいい」

-3月16日に尹錫悦大統領が訪日し、岸田文雄首相と首脳会談を行った。どう評価するか。

 「日本が望むことを自ら進んですべて受け入れた会談だった。にもかかわらず、外交プロトコル(儀典)の面でも待遇は悪かった。尹錫悦大統領個人が冷遇されたのではなく大韓民国が冷遇されたのだ。国会で問わなければならない問題だ。時遅き対処だとか、尹錫悦政権を批判するためではなく、大韓民国の国の品格を取り戻し、今後政権交代が起こった時に後続交渉の助けとするためにも、国会は問うべきだ」

-尹錫悦政権がここまで日本に屈しなければならないのはなぜか。

 「米国がインド太平洋戦略の観点から韓米日関係を緊密にするという戦略を着々と進めている過程だと考えるべきだ。それにしても、どうしてあのように慌てて拙速に交渉したのか疑問だ。日本は自分の手を使わず事を済ませたようなものだ。国の体面は傷つき、韓日関係で韓国の国益をすべて放棄し、米国の望み通りに岸田首相の前にご馳走を並べた。日本の責任が抜け落ちている第三者弁済案は、内容面では日本が要求してきた通りを受け入れたものであり、形式面では『もうすべてが解決されたのだから覆い隠して未来へと向かおう』というのは米国の要求だと思う」

-そのような構図は置いておくとしても、「第三者弁済」という解決策に妥当性はあるのか。

 「あれのどこが解決策なのか。意地を通しただけだ。尹錫悦式の解決策は『我々が日本に支配されることになったことからして我々の過ちだった』というふうにはじまる。そして、『我々のせいなのだから我々が解決する』というわけだ。被害者が加害者に賠償を要求するのではなく、被害者が自分にセルフ賠償しつつ、加害者には『何もしなくても良い』と言ったわけで、これは世界の外交史の『新紀元』として記録されるほど問題のある解決策だ」

____________
米国の言うとおりについて来いということ

-尹錫悦大統領は就任直後に米国のバイデン大統領と初の首脳会談を行った後、「韓米関係をグローバル包括的戦略同盟へと発展させることで」合意したと述べた。「グローバル包括的戦略同盟」の具体的な意味とは。

 「外交では、言葉が華やかであればあるほど多くの伏線が張られている。修辞的表現の真意を把握し、相手の意中を推し量らなければならない。『グローバル』とは、米国中心の国際秩序の中で韓国を下位パートナーとして導いていくということを美化したものだ。『包括的』という言葉にも落とし穴がある。あらゆる部門で米国の言うとおりについて来いという意味だ」

-一方的すぎる解釈ではないか。

 「韓米関係は1953年に米国が韓国の安保を助ける軍事同盟として始まった。今の韓国は、過去とは異なり世界10位の経済大国、世界6位の軍事大国となっている。米国はまだ『パックス・アメリカ―ナ(Pax Americana)』体制を維持しているが、中国の挑戦は激しい。しかし今や、韓国は米国に面倒を見てもらった国から、米国を助けるほどの力を持つ国となったため、これまで韓国の安保に投資してきた分を回収するという修辞的表現こそ、グローバル包括的戦略同盟だ」

 
チョン・セヒョン元統一部長官が2023年3月15日、ソウル麻浦区の韓国統一協会の事務所でハンギョレ21のインタビューに応じている。同氏は最近、自身の対北朝鮮政策の経験と外交哲学を記した本『チョン・セヒョンの洞察』(右にあるのはその模型)を出版した//ハンギョレ新聞社

-尹錫悦大統領が好んで使う単語がある。自由民主主義、価値同盟、価値外交がそうだ。これらをどう解釈するか。

 「あらゆる国の目標は、第1にセキュリティー(Security。安全保障)、第2にプロスペリティー(Prosperity。経済的繁栄)、第3にオーソリティー(Authority。国の格、権威)だ。安保は自主国防が基本だ。自力だけで不安な時の補助手段が同盟だ。だが安保同盟を『価値同盟』にまで拡大してしまえば、繁栄と権威をも同盟ひとつにまとめてしまうということだ。同盟による経済的繁栄? 今はむしろ安保で米国は韓国に味方する代わりに、韓国に対する経済的要求がどれほど多いことか。価値同盟は我々の繁栄を侵害することまで正当化しうる毒素的含意がある。自由民主主義もそうだ。一国の体制には自由民主主義だけがあるわけではない。大きく分けて自由民主主義、社会民主主義、人民民主主義の3つがあるとしよう。北欧諸国は社会民主主義を掲げて豊かに暮らしている。彼らが追求する価値は、米国の価値とも少し異なる。中国も目指す価値がある。自由民主主義という言葉は、米国式の体制こそ最高だという前提が下敷きになっている」

____________
「価値同盟」には毒素的含意がある

-2022年11月に尹錫悦政権は「自由・平和・繁栄」を3大ビジョンとして掲げた「韓国版インド太平洋戦略」を発表した。

 「国際政治において平和とは、軍事的衝突の危険性がある関係国や近隣諸国の間で戦争が起きていない状態だと言える。平和は『ピースキーピング(Peace Keeping。平和を守ること)』が基本だが、それだけでは永続的な平和はやって来ない。ピースキーピングにとどまらない積極的な『ピースメイキング(Peace Making。平和づくり)』を行うべきだ。ところが尹錫悦政権は、米国中心のピースキーピングのための韓米軍事協力のことを『平和』という意味として概念規定した。繁栄も、米国的経済秩序の中でこそ韓国は豊かに暮らせるというニュアンスが含まれる。一言で言えば米国中心、米国偏向的な対外政策を展開するということを、そういうふうに隠しているのだ」

-尹錫悦政権の対外政策は米国の価値から抜け出せないということか。

 「大韓民国は米国による朝鮮戦争での支援と戦後の経済援助のおかげで豊かになる機会をつかんだ。今は米国の支援に頼らず独自に生きていく能力を備えていると思う。しかし保守的な政治意識を持つ国民と政治家たちは、朝鮮時代の知識人と官僚が持っていた小中華思想を持っていたり、明に対する再造之恩(滅亡の危機を救ってもらった恩)のような弱小国の口癖が今もあったりする。価値同盟だとか包括的グローバル同盟だとか、このように米国に引きずり回されるのはやめよう、主体性ある外交をしようということだ」

(2につづく)

文/チョ・イルチュン先任記者、写真/キム・ジンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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