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大会期間に選手団など10万5千人が日本に入国し、その半数がワクチン接種を終えた状態だとしても、五輪期間中に感染者が急増する恐れのあることが明らかになった。

2021-05-27 06:19:38 | コロナ対策:国民の命を守れ!

「東京五輪強行すれば、感染者3.3倍増」

登録:2021-05-25 22:16 修正:2021-05-26 06:43

 

 
 
                大阪の住民たちが24日、新型コロナワクチン接種を受けている=大阪/EPA・聯合ニュース

 東京夏季五輪を強行すれば、日本の新型コロナウイルス感染者が3.3倍に増える恐れがあるとの分析が出てきた。

 25日のNHKの報道によれば、東大の仲田泰祐准教授の研究チームは、緊急事態宣言を来月中旬まで延長し、一日60万人ずつ新型コロナワクチンを接種することを前提に、東京五輪を開催した時の感染者数の変化を予測した。これによると、大会期間に選手団など10万5千人が日本に入国し、その半数がワクチン接種を終えた状態だとしても、五輪期間中に感染者が急増する恐れのあることが明らかになった。

 特に、人々が応援に出たり、経済活動が活発になり人流が10%増えれば、9月の東京の一日当たり新規感染者数は2024人になると予測された。これは、五輪を中止した時に予想される感染者数617人に較べ約3.3倍多い数だ。人流が2%の増加にとどまっても、五輪を中止した場合の1.4倍に当たる859人が感染すると予測された。

 日本国内の新型コロナ感染者数はなかなか落ち着く兆しが見られない。共同通信によれば、最近5日間は5千人台を維持し、日曜日の23日には4048人、月曜日には2712人に減少した。先月25日の3回目の非常事態宣言発出以後、初めて3千人未満にはなったが、週末のことでありまだ拡散傾向から減少に転じたとは評価しにくい状況だ。さらに、新規感染者の変異ウイルス感染比率が90%に達し、医療従事者の負担はきわめて重く、重症患者数も1300人前後を維持するなど新型コロナの状況好転を言うには時期尚早という評価だ。

 これに伴い、日本政府は東京など10の広域自治体に宣言した緊急事態宣言のうち沖縄を除く9都道府県の期間を当初の今月末から再延長する方案を検討しているという。菅義偉首相は24日、自民党の理事会で「対策を徹底的に施行し、感染状況を分析し専門家の意見も聴き、今週末にも(延長について)判断する」と話した。

パク・ビョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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東北新社は菅義偉首相の長男・正剛氏が勤めている会社です。接待の見返りに衛星放送事業の継続などで便宜をはかっていれば、国家公務員倫理規程に違反するだけでなく、贈収賄にも該当します。

2021-05-26 14:13:29 | これが岸田・元安倍内閣の本質

東北新社接待報告

解明尽くすのは菅政権の責任

 総務省と業界の癒着の深さに改めて驚かされました。放送関連会社「東北新社」が総務省幹部への接待についての報告書を公表し、これまでの同省の発表よりも会食件数が多かったことを明らかにしました。東北新社は菅義偉首相の長男・正剛氏が勤めている会社です。接待の見返りに衛星放送事業の継続などで便宜をはかっていれば、国家公務員倫理規程に違反するだけでなく、贈収賄にも該当します。総務省は東北新社とNTTの接待についての調査結果を近く公表するとしていますが、全てを明らかにし、癒着の根を断つことが重要です。

総務省の調査より多い

 国家公務員倫理規程は利害関係者が飲食費を負担する接待を禁止しているほか、1人1万円超の飲食は割り勘であっても事前に届け出ることを義務付けています。総務省は2月の疑惑発覚後、東北新社から延べ39件の接待があったことを認め、11人の幹部を処分しました。接待が行政に及ぼした影響などについては、明らかにしていません。

 東北新社の報告書では2015年11月から20年12月までに会食は計54件で、総務省調査には含まれていない会食が20件ありました。東北新社側で接待したのは木田由紀夫前執行役員、三上義之前取締役などで、正剛氏が出席した会食は22件に上っています。

 報告書は会食について「関係構築」などが狙いで、「不当な働きかけ」を目的としたものとは認められないとする一方、「昼間の打ち合わせ等では得ることのできない情報等を取得することまでをも目的としていたとの疑念を持たれる可能性があった」と、問題があったことを認めました。

 東北新社は17年、同社のBS4K放送が放送法の外資規制違反だったことがわかり、違法状態を解消するため、子会社を設立してBS事業を継承させました。その際、同社の幹部が総務省の衛星・地域放送課長らを訪ね報告したことや、その後接待したこと、プロ野球のチケットを贈ったことなども報告書は明らかにしています。この問題で総務省側は「報告された記憶はない」と国会で答弁し、東北新社側と主張が食い違っています。報告書は、報告していたと認定する方が「合理的」としています。

 放送法では衛星放送事業者の外資比率が2割以上になると、総務省が認定を取り消さなければなりません。当時なぜ認定を取り消さず、子会社への事業継承を認めたのか。関係する総務省幹部が多くの接待を受けていることが報告書から浮かびます。当時情報流通行政局長だった山田真貴子前内閣広報官も、破格の接待を受けていました。異常な接待と事業承継との関係は追及が必要です。

総務省は「S社」と隠語

 東北新社の報告書は、総務省幹部を接待した際の同社の経理伝票は「S社」と隠語だったと記しました。接待が後ろめたいものだったことをうかがわせます。

 東北新社やNTTによる総務省幹部の接待は政官業癒着の象徴です。接待疑惑は農林水産省や文部科学省でも相次いでいます。総務省に任せるだけでなく、国会でも真相を徹底究明すべきです。総務相時代に人事権を握り、総務省に強い影響力を持つ菅首相の責任が問われます。

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中国では毎年、自動車が2千万台以上売れ、世界自動車販売シェアの20%以上を占めている。中国との関係悪化は避けなければならないのが、現代自動車をはじめ、完成車業界の共通した立場だ

2021-05-26 06:50:50 | アメリカの対応

米国と協力強化した韓国の電気自動車・バッテリー、

中国の壁を超えられるか

登録:2021-05-25 06:23 修正:2021-05-25 15:29

 

韓国の完成車・バッテリー業界、中国動向を注視 
THAAD配備めぐる経済報復の経験から懸念の声高まる
 
 
                          現代車蔚山工場近くの野積場=現代自動車グループ提供//ハンギョレ新聞社

 現代自動車グループは2017年から自動車販売実績を2つに分けて発表している。世界全体での完成車販売量と中国以外の地域販売実績を共に公開する。THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備をめぐる関係悪化で、中国内需市場の販売が直撃を受けており、中国を除いた数字を別途発表しているのだ。

 最近、韓米首脳会談を機に、両国が安全保障を越えて経済領域でも密接になり、SKやLG、現代自動車など国内企業が恩恵を受けられると予想される中、一方では懸念の声も上がっている。中国は巨大な消費市場であると同時に、主要原料の生産地でもあるからだ。特に、グローバルバリューチェーン(GVC)の構造を念頭に置くと、半導体より完成車と電気車用バッテリー部門において懸念材料が多い。米国との経済的・政治的同盟の強化が中国の反発を招く恐れがあり、関連企業も中国の動向を注視している。

 24日、業界によると、現代自動車と起亜の今年1~3月の中国での自動車販売台数は12万台で、昨年同期と比べて28%増えた。2016年、THAADをめぐる関係悪化によって反韓ムードが広がり、急減した現地完成車の販売量が好転したのだ。

 現代自動車グループの中国での自動車販売台数は、2016年は180万台に迫ったが、2017年は110万台に減少し、昨年は66万台に止まった。THAADをめぐる関係悪化から5年が経ったが、本格的な販売実績の回復までは道のりが遠い。

 問題は、中国が諦めるにはあまりにも大きい市場であることだ。現代自動車の関係者は「中国は単一国家としては世界最大規模の自動車消費市場を持っている」とし、「韓国にとって、中国は代表的な悩みの種であり、諦め切れない市場だ」と述べた。

 実際、中国では毎年、自動車が2千万台以上売れ、世界自動車販売シェアの20%以上を占めている。中国との関係悪化は避けなければならないのが、現代自動車をはじめ、完成車業界の共通した立場だ。昨年末、現代自動車が中国市場での販売向上対策を打ち出したのもそのためだ。

 今年4月に中国の上海で開催した高級車ブランド「ジェネシス」の現地市場進出イベントで、チャン・ジェフン社長(ジェネシス事業本部長)は「ジェネシスの大胆な旅路が新たに始まる日」だと語った。その後に開かれた上海モーターショーで、ジェネシスG80の電気自動車モデルを世界で初めて公開したのも、このような流れからだった。意欲的に中国市場の攻略に乗り出した現代自動車としては、韓米同盟の強化が中国の反発と報復につながるのは、どうしても避けたい流れだ。

 
現代自動車・起亜における中国での販売割合の推移//ハンギョレ新聞社

 電気自動車バッテリー業界も、中国の動向を注視している。THAADをめぐる経済報復の影響で、現代自動車同様、困難を余儀なくされた経験があるためだ。

 現在、中国ではLGエネルギーソリューションの賓鋼・新鋼工場など韓国のバッテリー製造3社の現地電気自動車バッテリー生産施設6施設が稼働中だ。3社は中国政府がTHAAD事態以後、韓国産バッテリーが入った電気自動車に補助金の支給を事実上中止し、現地バッテリーの生産と供給にも大きな支障を来したことがある。

 中国は電気自動車の最大の消費国であるだけでなく、韓国産バッテリーの原材料を相当部分供給する主な供給先でもある。中国がバッテリーのサプライチェーンの一軸を占めているのだ。中国の動き次第で、韓国の企業は苦境に立たされかねないという懸念の声が上がっているのもそのためだ。バッテリー業界関係者は「中国は政府レベルで自国企業を後押しするなど現地事業拡大は容易ではないが、市場規模が大きすぎて絶対に諦められない市場」だとし、「現地の動向を常に関心を持って見ている」と語った。

 蔚山科学技術院エネルギー化学工学科のチョ・ジェピル教授は「国内企業が作る電気自動車バッテリーの主要原料である前駆体は50%以上を中国から輸入している」とし「中国以外の国の生産品は価格が高くて原価競争力がないため、韓国のバッテリーメーカーは中国を抱え込むしか代案がない」と指摘した。

パク・ジョンオ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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2016~2017年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる韓中関係の悪化よりも数倍は深刻な対立を招くミサイル配備を試みる代わりに、韓国自ら(ミサイル)能力を強化する道を選んだ

2021-05-25 07:07:40 | アメリカの対応

韓米ミサイル指針終了…両刃の剣か、それとも宇宙開発の機会か

登録:2021-05-24 06:34 修正:2021-05-24 10:28

 

韓国のミサイル主権回復をめぐる様々な思惑
 
韓国の主なミサイルの射程距離//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が21日午後(現地時間)「韓国は米国と協議を経て改正ミサイル指針の終了を発表し、両首脳はこのような決定を認めた」と述べたことで、1979年以降43年間、ミサイル主権を制約してきた足かせが外れた。この決定は米中対立の最前線である朝鮮半島に位置する韓国にとって“両刃の剣”となる見通しだ。

 今回の決定は、一国が当然保有すべき“ミサイル主権”を回復したという点で大きな意義がある。文大統領はこれまで戦時作戦統制権の移管▽韓米ミサイル指針の改正△原子力潜水艦建設の推進(韓米原子力協定の改正が必要)など、安全保障にかかわる主権事案の解決に積極的に取り組んできた。実際、同指針は1979年9月に韓国の自主的な宣言(射程180キロメートル、弾頭重量500キログラム)を元に制定され、これまで4回改定された。そのうち2回が文在寅政権発足後行われており、今回の韓米首脳会談を通じて完全に廃止された。これについて、ある外交・安保専門家は「文在寅政権の任期内に戦時作戦統制権の移管が事実上難しくなった状況で、今回の指針終了を通じて、バイデン政権がそれなりの配慮を見せたものとみられる」と述べた。韓国政府の高官もこの決定を「今回の訪米の最大の成果」に挙げた。

 しかし、今回の指針の終了は、かなり複雑な“戦略的意味”を持っている。これまでの改正は、韓国が開発できる弾道ミサイルの射程を大邱(テグ)などの中部以南で、北朝鮮全域を攻撃できる射程である最大800キロの範囲内で行われていた。この制約が撤廃されたことで、韓国のミサイル開発は北朝鮮を超えた“その他の脅威”、すなわち中国を狙ったものに見なされかねない。隣国の日本は専守防衛の原則により弾道ミサイルを保有しない。

 米国は2019年8月、ロシアの「条約違反」と中国の「ミサイル脅威」を口実に、1987年12月に旧ソ連と結んだ射程500~5500キロの中・短距離の弾道ミサイルおよび巡航ミサイルの生産、実験、配備を全面禁止する中距離核戦力全廃条約(INF)を破棄した。その後、トランプ政権時代には、マーク・エスパー国防長官らが米国の新型中・短距離ミサイルをアジア太平洋地域に配備したいという意思を重ねて表明した。バイデン政権は、2016~2017年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる韓中関係の悪化よりも数倍は深刻な対立を招くミサイル配備を試みる代わりに、韓国自ら(ミサイル)能力を強化する道を選んだということだ。

 韓米は今回の指針終了に先立ち、昨年7月の第4回改正で民間用ロケットについて適用されていた最後の制約となる「固体燃料の使用」制限を解除した。韓米首脳は21日の共同声明で「民間宇宙探査や科学、航空など研究分野におけるパートナーシップを強化することを約束し、韓国のアルテミス計画への参画のため協力」することにした。アルテミス計画とは、月や火星などの宇宙探査と宇宙利用に関する基本原則を定めた合意文で、昨年10月に署名が行われた。現在、米国や英国、日本など8カ国のみが参加している。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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「不安」の原因についての患者本人の訴えに耳を傾け、理解できないまでも、せめて共感をもって接するべきではないのか。それがきっと治療にも有効なはずだと思うのは「素人判断」にすぎないのだろうか?

2021-05-24 09:30:59 | これからの日本、外国人の目

[徐京植コラム]

無慈悲な時代―日本から送る連帯の手紙

登録:2021-05-22 07:14 修正:2021-05-22 07:32

 

何より、私もFも「日本は安全安心だ」とは思っていない。そうは思えない。…ああ、世界はなんと無慈悲なのか。私はなんと無力な存在なのか。私にできたことは、辛うじて、連帯の意を伝える短いメールを送ることだけだ。
 
イラスト:Jaewoogy.com//ハンギョレ新聞社

 私の妻(Fと呼んでおく)の許可を得て、彼女に関わる話から始める。こういうことを書こうかどうか、しばらく考え込んだが、結局書いておくことにした。これも2021年という時代(私はそれを「無慈悲な時代」と呼ぶことにした)の日本と世界に関する、一つの必要な証言だと思うからである。

 Fはここ2年ほど体調を崩して苦しんでいる。専門医の診断はいちおう「不安神経症」ということになっている。ただし多くの場合はこの病気の症状は「電車に乗れない」「人前に出られない」などだがFの場合はそうではなく、夕方になって暗くなってくると正体不明の不安感に襲われるのである。朝は目醒めたときから不安感があり、胸が苦しいという。いろいろと治療を試みているが、今のところ目に見える効果はない。 

 専門医に訴えたところ、「何がそんなに不安なの?」と問うので、Fは「ミャンマーとか、赤木さんとか…」と答えた。ミャンマーで続いている市民への弾圧のことであり、「赤木さん」というのは上司から安倍前首相のモリトモ疑惑に関する資料の改竄を命じられ、良心の呵責のため自殺した財務官僚のことである。すると「専門医」は「あなたは日本にいるんだよ。日本は安全で安心な場所なのだから、そんなことは気にしないようにしなさい。明るく、楽しいことだけを考えるように」と、叱るような口調で言った。横で聞いていた私も驚いたが、Fはなおさら驚いただろう。「精神科治療」というのは、こういうものなのだろうか?

 私はFがミャンマーでの政治暴力や理不尽に犠牲に供された下級官僚とその家族のことで心を痛めるのは、人間として当然だと思う。それを「他人事」として無視することが「治療」なのだろうか? ましてFの夫である私は、韓国軍政時代の政治囚家族なのだ。「死刑」や「拷問」といった言葉は、私にとって「他人事」ではなく常に身近なものだった。かたわらにあって、Fもまた心を痛めてきた。その記憶はいまも消えていない。

 Fの症状の原因はこれらのことだけではく、本人の生育歴や私との関係、加齢に伴うホルモンバランスの変調など、多くの複合的な要因が重なったものであろう。それでも、こうした「現在の世界状況」が大きく影を落としていることは明らかだと思う。不安で当然ではないか? 医師には、私がここに挙げたような国内外の政治的諸問題を解決する手段はないし、そのための処方箋を持ち合わせていなくてもやむを得ないことだ。だが、「不安」の原因についての患者本人の訴えに耳を傾け、理解できないまでも、せめて共感をもって接するべきではないのか。それがきっと治療にも有効なはずだと思うのは「素人判断」にすぎないのだろうか?

 何より、私もFも「日本は安全安心だ」とは思っていない。そうは思えない。日本は例えば、数円しか所持していないため行き場のない女性ホームレスが夜のバス停で殴り殺されるような場所である。「ヘイトスピーチ」も、一向になくなる気配がない。それどころか、このままではやがては欧米のように、直接暴力を伴う「ヘイト・クライム」が頻発するのではないかと私は真剣に危惧している。それはすでに、相模原市の施設での重度心身障害者大量殺人事件として現実化した。これは政府・行政が先頭に立って阻止のために全力を尽くさなければならない「もう一つの疫病」のようなものだ。

 前回、読者のみなさんにお知らせしたように、私はこの度、20年あまり勤務した東京の某私立大学を無事に定年退職した。そのことに安堵したのは、他ならぬFである。Fは、私がその大学に就職した時から、右翼や差別者の標的になって苦しめられるのではないか、いつか大学を辞めざるを得なくなるのではないか、という不安を抱いてきたという。幸いそういう出来事は私には起きなかったが、職場までイヤがらせの電話がかかってきたことはある。(彼らはたいてい「ハンギョレ」日本語サイトの「愛読者」である)。私より若い世代の在日朝鮮人の中に実際にヘイトスピーチの標的にされた人は少なくない。

 Fがそういう不安に苦しむのは、1930年代のドイツでユダヤ系の大学教師たちがヒトラー支持者たち(とくに親ナチ学生団体)の攻撃を受けて大学を追われ、あるものは亡命を余儀なくされ、あるものは強制収容所に送られた歴史が念頭にあるからである。それは、私にとってはもちろん、Fにとっても決して「他人事」ではない。脅かされている人々のことを「他人事」と考えなさい、という助言は決して慰めにはならない。この状況をともに憂い、ともに改善に取り組む姿勢を示すこと、すなわち「連帯」だけが真の慰めになるはずだ。不必要かもしれないが念のために書いておくと、Fは日本国籍の日本人である。この原稿はFの了解を得た上で書いている。

 そんなことを考えていた最中に、ラジ・スラーニ氏からメールが届いた。ラジのことは、このコラムでも過去に何回か書いた。ラジはパレスチナ・ガザ地区に拠点を置く人権団体(Palestinian Center for Human Rights)の主宰者である。私と彼はあるテレビ番組のために2003年に初めて沖縄で対談し、その後は2010年と2014年にも東京で再会した仲だ。いつも上記団体の名でガザの人権状況に関する悲痛な報告が届く。だが、今回はラジ本人の個人名でメール(原文英語、訳は徐京植)が届いた。その書き出しはこうである。

 「これは私が人生で目撃した最悪のものだ。ガザに安全な空間はない。あまりに血塗れで、野蛮だ。彼らは日夜ガザの200万人をテロ攻撃している。今朝私たちは太陽を再び見ることはできないだろうと思った。……」

 イスラエル軍の激しい空爆の下から、リアルタイムで送られてきた報告だ。

 東エルサレムでのパレスチナ人への弾圧に対して、ガザ地区に封鎖されてきたハマスが抗議のロケット弾を発射、これを契機にイスラエルがガザ地区へ大規模な空爆を開始し、今月10日以降、ハマス司令官や戦闘員30人近くが死亡、一般人も現在までに83人の命が奪われた。ハマスのロケット弾による反撃でイスラエルでは7人が死亡したという。イスラエルのネタニヤフ首相は報道陣に「これはまだ始まりにすぎない」と述べた(「東京新聞」5月14日)。イスラエルは現在、地上からのガザ侵攻を実行する構えだ。

 このような事態の悪化には、近くはトランプ政権時代のイスラエル支援強化政策があるが、バイデン政権になってからもアメリカはイスラエルとの同盟関係重視という姿勢を変えていない。いま、圧倒的に不均衡な状況の中で、ガザのパレスチナ人たち、子供、老人、女性たちまでも殺されつつある。

 このニュースは、Fをさらに深い不安に陥れた。Fもまた過去20年近くの間、ラジを尊敬すべき親しい友人と考えてきた。「あなたもラジのようにしっかりしてね」などと私を叱咤したこともある。その大切な友人やその同胞が殺されようとしているのだ。世界はまた、このことを「他人事」とみなしてやり過ごすのだろうか。

 ラジは上に引用したメールの後半に、彼らしいメッセージを記している。「私たちには、諦めて“良き犠牲者”になる権利はない。彼らに恥あれ。彼らと「沈黙の共謀」関係にある者たちにも。私たちは希望と決意を守り続ける。」

 ああ、世界はなんと無慈悲なのか。私はなんと無力な存在なのか。私にできたことは、辛うじて、連帯の意を伝える短いメールを送ることだけだ。それをしないではいられなかった。そんなことならしない方がマシだと、私は思わない。ここに、この遥か離れた極東の地に、無力だがあなた方の苦しみに共感している者がいる、そのことだけでも伝えたかった。Fもその連帯のメールを送るよう私に促した。

 ミャンマー、ベラルーシ、香港…、手の届かない世界の各地で、互いに会うことも顔を見ることもできない場所で、人々の苦悩が延々と続いている。その苦悩に「共感」(compassion)すると、解決困難な苦悩を背負い込むことになり、自分の心身まで傷つけられる。だが、だから「共感」なんかしないほうが良いというのか。それでも「共感」してしまうのが人間ではないか。「連帯」しようとするのが。この精神の機能までも放棄したときに「間化」が完成し、「疫病」が凱歌をあげるだろう。(2021年5月14日)

 
//ハンギョレ新聞社

徐京植(ソ・ギョンシク)|東京経済大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

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