2016~2017年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる韓中関係の悪化よりも数倍は深刻な対立を招くミサイル配備を試みる代わりに、韓国自ら(ミサイル)能力を強化する道を選んだ

2021-05-25 07:07:40 | アメリカの対応

韓米ミサイル指針終了…両刃の剣か、それとも宇宙開発の機会か

登録:2021-05-24 06:34 修正:2021-05-24 10:28

 

韓国のミサイル主権回復をめぐる様々な思惑
 
韓国の主なミサイルの射程距離//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が21日午後(現地時間)「韓国は米国と協議を経て改正ミサイル指針の終了を発表し、両首脳はこのような決定を認めた」と述べたことで、1979年以降43年間、ミサイル主権を制約してきた足かせが外れた。この決定は米中対立の最前線である朝鮮半島に位置する韓国にとって“両刃の剣”となる見通しだ。

 今回の決定は、一国が当然保有すべき“ミサイル主権”を回復したという点で大きな意義がある。文大統領はこれまで戦時作戦統制権の移管▽韓米ミサイル指針の改正△原子力潜水艦建設の推進(韓米原子力協定の改正が必要)など、安全保障にかかわる主権事案の解決に積極的に取り組んできた。実際、同指針は1979年9月に韓国の自主的な宣言(射程180キロメートル、弾頭重量500キログラム)を元に制定され、これまで4回改定された。そのうち2回が文在寅政権発足後行われており、今回の韓米首脳会談を通じて完全に廃止された。これについて、ある外交・安保専門家は「文在寅政権の任期内に戦時作戦統制権の移管が事実上難しくなった状況で、今回の指針終了を通じて、バイデン政権がそれなりの配慮を見せたものとみられる」と述べた。韓国政府の高官もこの決定を「今回の訪米の最大の成果」に挙げた。

 しかし、今回の指針の終了は、かなり複雑な“戦略的意味”を持っている。これまでの改正は、韓国が開発できる弾道ミサイルの射程を大邱(テグ)などの中部以南で、北朝鮮全域を攻撃できる射程である最大800キロの範囲内で行われていた。この制約が撤廃されたことで、韓国のミサイル開発は北朝鮮を超えた“その他の脅威”、すなわち中国を狙ったものに見なされかねない。隣国の日本は専守防衛の原則により弾道ミサイルを保有しない。

 米国は2019年8月、ロシアの「条約違反」と中国の「ミサイル脅威」を口実に、1987年12月に旧ソ連と結んだ射程500~5500キロの中・短距離の弾道ミサイルおよび巡航ミサイルの生産、実験、配備を全面禁止する中距離核戦力全廃条約(INF)を破棄した。その後、トランプ政権時代には、マーク・エスパー国防長官らが米国の新型中・短距離ミサイルをアジア太平洋地域に配備したいという意思を重ねて表明した。バイデン政権は、2016~2017年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる韓中関係の悪化よりも数倍は深刻な対立を招くミサイル配備を試みる代わりに、韓国自ら(ミサイル)能力を強化する道を選んだということだ。

 韓米は今回の指針終了に先立ち、昨年7月の第4回改正で民間用ロケットについて適用されていた最後の制約となる「固体燃料の使用」制限を解除した。韓米首脳は21日の共同声明で「民間宇宙探査や科学、航空など研究分野におけるパートナーシップを強化することを約束し、韓国のアルテミス計画への参画のため協力」することにした。アルテミス計画とは、月や火星などの宇宙探査と宇宙利用に関する基本原則を定めた合意文で、昨年10月に署名が行われた。現在、米国や英国、日本など8カ国のみが参加している。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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