緊急事態と改憲
民主主義破壊する企て許すな
衆参の憲法審査会が毎週のように開催されています。自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などが、緊急事態条項を憲法に設けることを主張し、緊急時の国会議員任期の延長が議論されています。時の政権が「緊急事態」を口実に意図的に議員任期を延長し、国民から選挙で信任を得ていない議員が長期にわたって居座ることは、国民主権と議会制民主主義を根底から揺るがすもので到底認められません。
国民の選挙権奪う危険
緊急事態条項創設は、9条への自衛隊明記とともに、自民党など改憲を進める各党が、柱の一つに位置付けています。自民党改憲案は「武力攻撃」「内乱・テロ」「大災害」などの緊急時に、内閣が政令で国民の自由や権利を制限することができるなどとしています。
その中で改憲推進勢力が求めているのが国会議員の任期延長です。大地震などで総選挙の実施が困難になる事態を次々に想定し、国会の機能が失われると称して、衆院議員の4年の任期を延長する仕組みづくりを提起しています。
この問題を考える上で大事なのは、憲法前文で国民に主権が存在することを宣言し、「国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」すると明記していることです。これは憲法の基本原理であり、国民の選挙権は最大限保障されなければなりません。
憲法54条は衆院議員が不存在の場合、臨時の暫定的措置として参議院の緊急集会で対応し、その後に国民から選ばれた衆議院がその当否を判断する仕組みを定めています。いかなるときも権力の乱用を起こさないための民主的な仕組みです。あれこれの緊急事態を想定し、議員任期の延長を当然視する議論には、国民の選挙権を保障する立場が全く欠落しています。
議員任期延長は、権力乱用と政権の恣意(しい)的延命につながります。衆参の憲法審査会で参考人として陳述した長谷部恭男・早稲田大学教授は、衆院議員の任期が延長されると、総選挙を経た正規の国会と異なる「異形の国会」が、国会に付与された全ての権能を行使し得ることになると警告し、「緊急時の名を借りて、通常の法制度そのものを大きく変革する法律が次々に制定されるリスク」の重大さを指摘しました。
民意を反映していない政権が存続することで、緊急事態の恒久化を招くことになりかねません。
日中戦争下の1941年、衆院議員の任期が1年間延長されました。短期間でも国民を選挙に没頭させることは「挙国一致体制」の整備と相いれないと政権が判断したためです。その間、戦争準備が進められ対米英戦争への戦端も開かれ、無謀な戦争は拡大の一途をたどることになります。
歴史の痛苦の教訓想起し
戦後制定された憲法は、権力者の都合で議員任期が延長できないよう、憲法に議員任期を規定しました。歴史の痛苦の教訓を忘れてはなりません。
5月26日の改憲派議連の大会に自、公、維新、国民の各党代表が結集し、岸田文雄首相は改憲への「強い思い」を表明しました。しかし、国民の多くは改憲を政治の優先課題と考えていません。
いまこそ9条改憲を許さず、違憲の大軍拡に反対するたたかいを大きく広げましょう。