米国の国際政治経済ジャーナル「フォーリン・アフェアーズ」は最近、「インドに対する米国の誤った賭博‐ニューデリーは北京に対抗するワシントンの肩は持たない」と題する寄稿が話題になった。

2023-06-03 08:34:50 | 米国は、「世界の憲兵」をやめろ!
 

[コラム]

韓国がオールインするインド太平洋戦略は大丈夫なのか

登録:2023-06-02 08:59 修正:2023-06-02 10:00
 
インド・中東・米国の財界などで、インド太平洋戦略に対する懸念が高まっている。だが、韓国はインド太平洋戦略にオールインしている。対中貿易赤字など韓国に向けて押し寄せる波はさらに高まるのではないかと懸念せざるをえない。
 
 
5月29日、大統領府迎賓館で尹錫悦大統領が韓国・太平洋島しょ国首脳会議の第2セッションを主催している=大統領室//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、5月19~21日の主要7カ国広島首脳会議(G7サミット)に続き、29日に開かれた「2023韓国・太平洋島しょ国首脳会議」で「インド太平洋戦略」を繰り返し強調した。大統領は昨年11月11日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、韓国版インド太平洋戦略を発表し、韓国政府は12月28日、報告書「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」でこれを公式化した。米国の対中戦略の象徴語である「インド太平洋」を報告書のタイトルにそのまま持ってきたことからも分かるように、米国・日本との盟強化にオールインする尹錫悦政権が、米国のインド太平洋戦略に全面的に便乗するかっこうだ。

 だが、インド太平洋戦略の前提と主軸は今もなお曖昧なだけでなく、むしろ穴が空いている。この戦略の核心は、中国の包囲と封鎖にインドが加勢した点だ。「クアッド」(QUAD)は、米国・日本・オーストラリア・インドの「4者安全保障対話」で具体化された。米国はインド洋で軍事・経済的な影響力の拡大を望む。これをよく知っているインドは、QUADを通じて米国の支援を取り込みながらも、中国との対決には厳正に一線を画している。「一石二鳥」戦略を最大化しているのだ。

 米国がインド太平洋戦略の一つの軸として、昨年9月、英国およびオーストラリアとオーカス(AUKUS)同盟を締結すると、インド外務省のハーシュ・バルダン副大臣(当時)は、この条約は「アングロサクソン国家の戦略的同盟」だとしたうえで、「QUADとは関係なく、QUADの機能に何の影響も与えないだろう」と述べた。インドメディアは、中国を軍事的に狙っているAUKUSがQUADに影響を与えないよう一線を画すと同時に、米国が原子力潜水艦技術をオーストラリアに与えることに対する不快感の表現だと報じた。

 米国の国際政治経済ジャーナル「フォーリン・アフェアーズ」は最近、「インドに対する米国の誤った賭博‐ニューデリーは北京に対抗するワシントンの肩は持たない」と題する寄稿が話題になった。2000年代にジョージ・ブッシュ政権が原発技術の提供などを通して米印関係を「戦略的パートナー」に改善する際に参加したインド出身でカーネギー国際平和財団のアシュリー・テリス専任研究員は、その寄稿で「インドは、ワシントンとの協力が(インドに)もたらす便益を評価はするが、その代価として、いかなる危機の局面においても米国を物質的に支援しなければならないとは考えていない」と断言した。テリス氏は特に、インド太平洋で米国が指向する対中国合同作戦を意味する「相互作戦」という概念は、決して受け入れられないと強調した。

 この寄稿後、テレビでテリス氏と討論したインドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相も「同盟を求めて全世界を検索する米国のような国と(インドに)は違いが存在せざるをえない」とし、「オーストラリアと日本は米国と同盟関係にあるが、インドは単なるパートナー関係だ。米国とインドは、そのような関係を維持することが望ましい」と語った。スタンフォード大学の研究者のアルザン・テラポレ氏も「インド太平洋で最善の米国の賭け」と題する反論寄稿で、「米国は、インド洋でインドの軍事・経済的な能力の伸張を助けることだけでも最善」だと述べた。ウクライナ戦争でインドは、米国の対ロシア制裁に参加するどころか、ロシアとの貿易を拡大した。それでも米国は、むしろインドの機嫌をうかがった。現在の米国とインドの状況を克明に示している。

 インド太平洋戦略は、インドより中東で穴が空いている。米国にとってこの戦略の前提は、中東の安定だ。3月、中国が仲裁したサウジアラビアとイランの国交正常化は、ウクライナ戦争後の中東地政学の激変を示した。ウクライナ戦争以降、サウジアラビアは、ロシアと手を握り石油減産を主導し、中国との関係を拡大した。米国の同盟国でありながら脱米の独自の動きを先導したトルコのレジェップ・エルドアン大統領も最近、再選に成功した。

 米国がインド太平洋で対中封鎖網を広げる間、中国とロシアは中東に乗りだすかたちだ。ズビグネフ・ブレジンスキー氏が米国の覇権にとっての最大の脅威だと指摘した中国・ロシア・インドの連帯が明確になったのだ。米国ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安保担当)は7日、サウジアラビアを電撃訪問し、米国とインド・イスラエル・アラブ首長国連邦(UAE)間の協議体である「I2U2」を稼動し、東地中海とペルシア湾をつなぐ鉄道網などの大型インフラの建設を提案した。アントニー・ブリンケン国務長官も6月にサウジアラビアを訪問する。米国は再び中東に足を向けなければならない状況にある。中東で中国・ロシア・イランを防ごうとしていたサウジアラビアなどのスンニ派保守王政とイスラエルのスクラムさえ崩れる局面であるためだ。

 米国の半導体企業エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアン最高経営者は、米国の中国との対決が巨大テクノロジー産業を滅ぼそうとしているとあからさまに非難した。米国財界でも、インド太平洋戦略の副作用に対する不満が広がっている。このようにインド太平洋戦略に対する懸念は、インド・中東・米国財界などでますます高まっている。だが、韓国はそれとは違い、インド太平洋戦略にオールインしている。対中貿易赤字など韓国に向けて押し寄せる波がさらに高まるのではないか懸念せざるをえない。

 
//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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