「この新型戦術誘導兵器体系は、朝鮮民主主義人民共和国の戦術核運用の有効性を強化することにおいて大きな意義を持つ」と強調した。

2022-04-18 10:32:01 | アメリカの対応

「戦術核運用の有効性を強化」…

金正恩総書記の視察と北朝鮮の「威力示威」

登録:2022-04-18 08:38 修正:2022-04-18 10:21
 
「労働新聞」1面トップで報道 
金総書記「核戦闘武力をさらに強化」 
韓国軍関係者「北朝鮮の軍団級の戦術兵器であり 
直ちに公開すべき新たな兵器ではないと判断」 

1.尹錫悦次期大統領の「先制攻撃論」を念頭に置き 
2.韓米日に「強対強」の基調を再確認 
3.「核武力」を強調することで民心なだめ
 
 
金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が「新型戦術誘導兵器の発射実験を視察」し、「国の防衛力と核戦闘武力のさらなる強化に乗り出す綱領的な教えを授けて下さった」と、「労働新聞が17日付1面トップで報じた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮の「労働新聞」は17日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長が「新型戦術誘導兵器の試験発射を視察」し、「国の防衛力と核戦闘武力のさらなる強化に乗り出す綱領的な教えを授けてくださった」と、1面トップで報じた。同紙は「この新型戦術誘導兵器体系は、朝鮮民主主義人民共和国の戦術核運用の有効性を強化することにおいて大きな意義を持つ」と強調した。「民族最大のめでたい4月の大名節」と呼ばれる故金日成(キム・イルソン)主席生誕記念日(太陽節、4月15日)の110周年行事が終わった直後、対外的に「強対強」の基調を再確認したということだ。

 北朝鮮の兵器発射は、金正恩総書記の指導で3月24日に「新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星17型」を発射実験してから23日ぶりに行われた。韓国、米国、日本政府が16日、北朝鮮の発射の事実を発表せず、対応についても言及しなかったことから、北朝鮮側が今回発射実験を行った兵器体系は、国連が禁止した弾道ミサイルの系列ではない可能性がある。韓米日政府は、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を行った場合、発射の事実をほぼリアルタイムで確認し、対応について言及してきた。

 実際、合同参謀本部は発射実験に関する「労働新聞」の報道直後、「わが軍は昨日(16日)午後6時、北朝鮮が咸鏡南道咸興(ハムン)一帯から東海に向かって2発の飛翔体を発射したことを把握した」とし、「昨日把握された発射諸元は、高度約25キロメートル、飛行距離約110キロメートル、最高速度はマッハ4.0以下で、韓米情報当局が精密分析している」と発表した。飛翔体を「弾道ミサイル」と特定しなかったのだ。さらに、合同参謀本部は「発射直後、軍と情報機関、国家安保室間の緊急会議を通じて状況を分析し、対応策を協議した」とし、「北朝鮮の発射動向については韓米がリアルタイムで追跡しており、監視および対応態勢と関連して必要な万全の措置を取っている」と述べた。

 これらの事情に詳しい軍関係者は、「北朝鮮軍の軍団級戦術梯隊の兵器であり、新たな兵器体系だとみなしていない。探知された諸元を(直ちに)公開する水準ではないと判断した」と話した。

 
 
金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が「新型戦術誘導兵器の発射実験を視察」し、「国の防衛力と核戦闘武力のさらなる強化に乗り出す綱領的な教えを授けて下さった」と、「労働新聞が17日付1面トップで報じた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 「労働新聞」が報道した8枚の写真を見ると、この「新型戦術誘導兵器」は移動式発射車両(TEL)に搭載された発射管(2個)から発射された。同紙は「党中央の特別な関心のなか開発されてきたこの新型戦術誘導兵器体系は、戦線の長距離砲兵部隊の火力打撃力を飛躍的に向上させ、朝鮮民主主義人民共和国の戦術核の運用の有効性と火力の任務の多角化を強化することにおいて大きな意義を持つ」とし、「発射実験は成功裏に行われた」と報道した。

 「労働新聞」は、金総書記が「わが党の第8回大会で提示した中核的な戦争抑止力の目標達成において、国防科学研究部門が相次いで獲得している成果を高く評価し、党中央委員会の名前で熱烈に祝ってくださった」と報じた。さらに、「(金総書記が)国防力強化に関する党中央の構想を明らかにし、国の防衛力と核戦闘武力をより一層強化するための綱領的な教えを授けてくださった」と報じた。

 「労働新聞」の436字の短い報道文(本文基準)で最も目を引くのは、「戦術核運用の効果性を強化」という表現だ。金総書記は昨年1月、労働党第8回大会の事業総化報告(演説)で、「核兵器の小型軽量化と戦術兵器化」と、「戦術核兵器の開発」で、「核脅威がやむを得ず伴う朝鮮半島地域での各種の軍事的脅威を、主動性を維持し、抑制し、統制管理できるようにしなければならない」と述べた。さらに、キム・ヨジョン労働党中央委副部長は今月5日、個人談話で「南朝鮮の国防部長官の『先制打撃』云々」を批判し、「我々は戦争に反対する」としながらも、「南朝鮮が我々と軍事的対決を選択する状況になれば、やむを得ず我々の核戦闘武力は、自らの任務を遂行することになるだろう」と明らかにした。

 まず、金総書記とキム副部長の言及を踏まえ、今回の「労働新聞」の報道を見る限り、「戦術核運用の効果性を強化」する「新型戦術誘導兵器体系」の潜在的対象に、韓国が含まれる可能性があることは明らかだ。これには、大統領選挙期間中に何度も「北朝鮮にミサイル発射の兆候がみられた際、北朝鮮に対する先制攻撃もありうる」と表明するなど、北朝鮮に対する強硬基調を掲げてきた尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領と、5月10日に発足する新政権の北朝鮮政策を牽制する狙いがあるとみられる。

 さらに「民族最大のめでたい4月の大名節」と呼ぶ金日成主席生誕記念日(太陽節、4月15日)110周年の翌日であり、韓米合同軍事演習の本演習開始を2日後に控えた時点で、金正恩総書記の現地視察とともに「威力示威」に乗り出したことは、内外を念頭に置いた行動とみられる。内部的には、「核強国」として「外からの侵略」を防ぐのに十分な軍事力を備えているため「人民は安心しても良い」という民心なだめの性格のものであり、対外的には韓米日などを相手にした「強対強」の基調を再確認したものだと言える。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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