どこ吹く風

旅のことを主に書く。

汽車に乗って

2007年03月08日 10時13分07秒 | 能登
 汽車は私にとって特別な思いがある乗り物だ。初めて汽車に乗ったのは高校の1年生の夏琵琶湖畔饗庭野で開かれたボーイスカウト日本ジャンボリーに参加したときです。鹿児島から蒸気機関車に引っぱられた客車はトンネルに入るたびに窓を閉めて煤煙の侵入を防いだ。石炭の匂いが充満して鼻の穴は真っ黒になった。

 それから4年後大学に入りロッククライミングの練習をしていると汽車が走っていくのがよく見えた。汽笛の音を聞く度に”あっ汽車だ”と口にするので皆に笑われた。汽車は希望・夢を乗せて走っているように見えたのだろう。当時は20数時間を坐って移動するのが一般常識で寝台列車で寝ながら移動するのは夢のまた夢だった。ところが就職試験で東京へ行ったとき費用は受験する企業持ちだったので始めて夜行寝台を使って自慢したものだった。

 先日のエジプト旅行ではルクソールからカイロまで寝台列車に乗った。汽車の旅は日本より国外で利用するのが多い、それも寝台列車は実に久しぶりで40年近く前になる。
中には音と揺れで眠れなかったと人がいたが私はベッドに入るや否や直ぐ寝てしまって妻が呆れていたほどだった。

 というように汽車が全く走っていない地に住む者にとっては特別な感情を汽車に持つ。新大阪駅からサンダーバードに乗る、田園風景はやはり日本の田園風景だ、この景色は我が故郷では見られない風景である、私の目からは外国の風景もニッポンの風景も特色があり違いはあるが、観光という面では同じ意識で見ている。
広い池が見えてきたので琵琶湖だろうと見当をつけた、しかし進行方向の右側に見える、学生の頃北陸へ行くには米原で乗り換えて湖を左側に見て走っていた。路線が琵琶湖のにしを走るようになったのだろう。

それにしても速くなったものだ、2時間程度で葦原温泉駅に着いた。富山までとは比較にならないだろうが、当時は米原で乗り換えて富山には夕方着く鈍行だったので大阪からとはいえ2時間で福井県まで来るとは信じ難い。移動に要する時間で地図を書き換えると日本全体がイビツに縮まっているようだ。
車内は清掃が行き届き清潔で坐り心地も申し分ない、トイレも綺麗だ。乗務員に限らず車内販売の売り子さんまで車両の出入りの際にはいちいち礼をしている、其処までするのがサービスなのかと賞賛と疑問が交錯し複雑な気分になった。

 汽車を降りて東尋坊行きのバスに乗る。スイスならこういう場合はスイスパスでフリーだがここではそうは行かない。乗り合いバスは駅を出て街中を走り抜けて田んぼを通りまた集落に入るのを繰り返す。
ヤマトゥの田舎そのものを見ているうちに海端に出た、東尋坊は近い。