雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

050608 題詠マラソンから

2005-06-08 20:01:58 | 題詠マラソン2005から
【16531】017:陸 湯のなかに鶏がら白く煮ゆる昼ひとひらの陸をひとはあらそふ(常盤義昌)

 これはすごい!
 これまで鶏がらを煮ながら、近頃なにやら険しさを増す日韓・日中の領土問題などを考えた人がいるでしょうか。
 双方の偏狭なナショナリズムを相対化するには、互いに頭に血をのぼせ衣食も忘れて国家・民族を論じるのはやめ、鶏がらでも煮ながら竹島も尖閤諸島も白く湯にたゆたう肉片の「ひとひら」と思えるような、人間の普通の生活のレベルにテンションを下げないか。
 作者のそんなつぶやきが聞こえてくるようです。 

【16509】070:曲 R300の曲線路(カーヴ)をなぞりつつ試運転車の厳かにゆく(伊波虎英)

 尼崎の脱線事故で不通となっていた宝塚線(福知山線)。7日午後から尼崎―宝塚駅間の試運転があったのですね。
 半径300メートルの円のカーヴ。制限速度は70キロ。そこに100キロを超えるスピードで突っ込んでしまった挙句の悲劇でした。
 句またがりの「R300の曲線路(カーヴ)を」が「なぞりつつ」と続くことで、試運転車が事故現場をゆっくりと安全を確かめながら進む様子がリアルに描かれます。
 同時にそこは多くの人命を奪った現場。ゆっくりした速度の試運転車は、安全確認以上に帰らぬ犠牲者を悼みながら「厳かにゆく」のです。
 すぐれた挽歌、鎮魂歌ですね

【16499】049:ワイン 酔へば眼に小さきけもの灯らむかシュワルツ・カッツ(黒猫)といふ名のワイン(前野真左子)

 実際にはこの甘口のモーゼルワインのラベルに描かれる黒猫は、どちらかといえばユーモラスな感じです。
 また、これが作者自身のことなのか、一緒に飲んだ相手のことなのか、それとも目の前に置かれたワインのドイツ語とラベルから喚起されたイメージなのか、それはわかりません。
 そんなことはともかく、この「シュワルツ・カッツ(黒猫)といふ名のワイン」を飲んで「酔へば眼に小さきけもの灯らむか」という、いかにもと思わせるリアルさがたまりません。
 小さきけもの=黒猫だからこその、「眼に小さきけもの灯らむか」。実に見事な表現、です。
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050608 日々歌う

2005-06-08 18:38:36 | 日々歌ふ
眠たげにシモツケの咲く傍らで家なき老人(ひと)は眠りおりけり

歌詠みて知るこそよけれシモツケとシモツケソウの似て非なりしを

空木(ウツギ)咲く初夏うれし次々と箱根も紅も白き梅花も
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050607 題詠マラソンから

2005-06-08 00:13:22 | 題詠マラソン2005から
【16432】]015:友 ケータイをひらけば蒼く薄明の墓群のごとく友の名ならぶ(常盤義昌)

 死は思いがけない相貌でぼくたちに近づいてきます。
 それでもこれまでケータイの住所録をひらいて、「蒼く薄明の墓群のごとく友の名ならぶ」のを見た人はいないでしょう。
 これはケータイ短歌の白眉かもしれません。

【16417】044:香 皮を剥ぎ茹でれば厨に香のたちて裏の竹やぶ人声聞こゆ(柳子)

 「皮を剥ぎ茹でれば厨に香のたちて」と、なにをがないまま、「裏の竹やぶ人声聞こゆ」と読んで初めて、竹の子の歌だとわかる仕組みです。
 採りたての竹の子の香りが匂いたち、人々の季節のよろこびが伝わってくるようです。

【16400】060:影 踏み石につばくろの影横切りて見上げた空は青のほかなし(ぴいちゃん)

 踏み石に一瞬ツバメの横切る影を見て、空を見上げてももう見えるのは青い空だけ。
 つばめの飛翔と季節感を詠って見事ですねえ。
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