雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

生きとし生けるもの

2005-03-31 17:45:01 | 生きとし生けるもの
 歌を詠うようになって、これまで心のどこかでそう感じていたことを言葉として定着させ、表現することができるようになりました。
 その得がたい収穫と喜びの一つが、通勤の途次の道端で日々出会う木々や草花、小鳥たちへの愛着と共感の気持ちを歌にできたことです。
 職場の側にある小学校の植え込みのドウダンツツジの数株を、世話をされている方を除いて、ぼくほどに毎日毎日共感を持って眺めている人間は、おそらくいないでしょう。
 その誰も知らない大事な想いをこうして歌に表現できることは、本当にうれしいことでした。
 ここに歌われている木々や草花、動物たちの姿や表情は、ぼくの心の中だけで生きて死んでいったはずのものでした。
 歌うことができてよかったと、心から思います。
 

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燃え盛る紅葉の後の枯れ姿 こんもりひつそり ドウダンツツジ


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風もなく潅木揺れてふと見れば二羽の目白が黄花ついばむ


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如月の到来告げる明け鴉オドロオドロに啼き叫びたり


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明けやらぬ空を切り裂きグァッグァッとカラス急かすな早出のわれを


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声高くヒヨドリ二羽が飛び立ってゆれる楠の葉朝日を浴びる

ツツジよりスズランのごと白き花ドウダン飾る季節なつかし


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雪柳・桃・沈丁花・姫林檎 花木うれしも ともに春待つ

道かどのハクモクレンは切られしか蕾ふくらみ春待つはずに

窓近く枝差し伸べる桜樹のつぼみ氷雨に打たれかじかむ


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つかの間に空気ぬるみてやはらかく雀楽しげわれも浮き立つ

群れ雀なにをついばむ黙々と 空き地枯れ草 朝の日溜まり

雀たちチチチチチチの大合唱 夕陽に浮かぶ高き梢で

アルミ箔咥えてカラス止まりをり梢の上で首を振り振る


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そういへば近ごろ聞かぬあのカラス バカアバカアと啼く胴間声


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遊歩道誘ひしままにうかうかと山に登りぬ四万温泉郷

登るほど陽射し景色は開けたり未踏の落ち葉踏む息荒く

水晶を採りしと謂はるる山頂に立てばをかしきなぜここに立つ

落ち葉雪踏みしめ下る森木立 野猿カモシカ幻像のごと

宿に着き水晶山に登りしと言へば笑はるよくぞ今頃

明けぬれば四万はしんしん雪の中 子連れ野猿らいかに過ごさむ

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雪柳かすかに芽吹き白き花まぶたに咲けり霞のごとく


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鈍色に街寒々と静まれり空き地に白く夜半の雪跡


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枝揺れて眼凝らせば紅の花に隠るる目白一羽二羽

忙しく梅の蜜吸ふつがいなれ二羽の目白よ春は近きか

楠の葉のさやぎきらめき目にすれば春一番の吹くも楽しく

楠さやぎそよぎざわめききらめきて春一番は吹き渡りけり

月まるく春一番の吹きし空おぼろのどかに浮かびをりけり


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両端に鉛結ふ糸夕空に放てばヤンマ絡まり落ちぬ


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点々と春告ぐ色は濃かりけり水路の端(はた)に福寿草見ゆ

雪原に矯められ刈られ身もだえし林檎樹立てりオブジェのごとく

モーツァルト静かに聴けば百舌啼きて冬惜しまむか如月去るも


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猫たちのごろ寝うたた寝するを真似 人も転がる床暖房に

飼いをりしうさぎは鼬(イタチ)に喰はれけり白き毛皮の骸(むくろ)残して


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面影の橋を過ぎれば神田川水音急に高く聞こゆる


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畦に撒く泥を探ればピチピチと小鮒掌(て)に撥ぬかいぼり(掻き掘り)懐かし


050305

逃げ走る飼ひ豚捕らふ途(みち)難く辛くも掴む螺旋の尻尾


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芽吹く見て真白薄紅あえかにも心の真中ハナミズキ咲く


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春やよひ神田川沿ひを遡る一瞬雪舞ふ中野弥生町

遡行して水細れども神田川魚影悠々カモ遊びをり


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道の端に可憐に咲きしイヌフグリ果実のせいでふふふの汚名

翌檜の孤独深むるウソといふ 待てば椎(マテバシイ)なる切なき表記

スダジイの頭陀椎なるを知ればなほむさ苦しくも頭陀爺と聞ゆ

ジャスミンの二階の窓をも埋め尽くし日光(ひかげ)失ふ人棲む家よ

三春なる滝のごとくに咲き激(ばし)る枝垂桜を目にして死なむ

愛されず憤怒の相で猛く伸ぶローズマリーの花は星のごと


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シャンツァイ(香菜)をンゴー、ンゴーと覚えしはハーノイなりき食うまき街

火炎樹よブーゲンビレアよ沖縄でベトナムで咲け熱帯の花

黄に染めよ菜の花畑雲南を ヤゴ喰ふわれに菜種油染むる

いつもとはちがふ裏道ふと思ひ曲がれば辛夷しんしんと咲く

何輪か狂ひ咲けれど木瓜の花ふたたび咲かむ真春の来れば

あをめるを見るたび想ふ琢木を今年も芽吹く柳やはらかに


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森閑と白木蓮の咲きわたる路地に佇み独り見上ぐる

刈り込まれ瀕死のごとき植え込みの連翹咲けり ああよく咲けり
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甦る記憶

2005-03-31 00:44:51 | 甦る記憶
 われ知らず胸底深く眠り来し想い目覚めていま歌とならん

 歌でしか表せぬものあることをついぞ知らずにわれ生き来たり

 これは2月21日に詠んだ歌です。
 ぼくが生まれたのは1944年2月。疎開先だった母方の故郷の村で、姉・兄に続く末弟として生まれました。
 農家ではありませんでしたから、大変な食糧難でした。父は数学者でしたが、二等兵で九州に本土決戦要員として動員され、そこで結核を発症し、野戦病院で敗戦を迎えたといいます。生活のやりくりはすべて気丈でエネルギッシュな母の肩にかぶさりました。
 父の結核は次第に進行し、1950年春に東京に戻ったその年の暮れに亡くなりました。37歳になる直前でした。
 姉10歳、兄9歳、ぼく6歳。母は40歳。
 歌を詠み始めて甦ったものに、この時代の飢えと貧しさと悲しみに彩られた痛切な記憶があります。もちろん、今よりもはるかに豊かな自然と濃密な人間関係の中で、子どもらしい喜びがなかったわけではありません。が、それを上回る飢えと貧しさと悲しみがありました。
 そうした記憶を共有できる肉親で残っているのはもう姉だけです。9年前に母が亡くなったのを追うように、兄もあっけなく事故でこの世を去りました。父のたった1人の弟だった叔父も、母のたった1人の妹だった叔母も、この数年で亡くなりました。
 「甦る記憶」としてここに載せる拙い歌は、ぼくの心の深いところに眠っていた記憶の記録である以上に、あの時代を生きて死んだ幼いぼく自身をふくむ親しき者たちへの鎮魂の歌なのだと思います。
 そして、同様の記憶はぼくの家族だけではなく多くの日本人のものであり、さらにはそれ以上の痛切な記憶を持つアジアの人びととも、どこかで共有しうるものではないかという願いも感じています。
 これらの歌に目を止めてくださった方々に、少しでもそんな想いが伝わりますように。
 
 
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突然にうなされ泣きて泣き止まず幼きわれのクリスマスミサ


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朝鮮に壱岐から渡る商人のわが祖父死ぬる三十代で

ふるさとと呼ぶは叶わぬ高興(コフン)こそ父が育ちし海辺の町よ

祖父亡くば父ら家族が朝鮮で暮らす当てなく引き払いたり

父泣きぬ末弟追って母も逝く皇子生まると沸き返る日に

職を得てソウルに戻る叔父なれど終生キムチニンニク厭う

西洋の音楽・文化愛すほど朝鮮のそれ父は愛さず

みちのくで日本の民が雑作業するを父見て訝(いぶか)しみたり

みちのくの寒さきびしく掘りゴタツ囲みて父もオンドルを語る

九州で塹壕掘りをせしという父帰り来ぬ結核みやげに

ガツガツと眼光鋭くもの喰らう末子のわれを父畏れたり

父のため飢えで膨るる腹叩きおどけて見せし記憶も哀し

病み深み三児もろとも死なんとす父の絶望母は拒みし


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死ぬ気なら何でもできる東京へ気丈に母は父説き伏せり

わたの原水底深く漕ぎ出づる旅止みわれら東京に出づ

ヤミ米を運びて生きる人々と旅を共にす常磐列車で

MPの手入れに人は狂い立ち米投げ捨てて転げ落ち行く

降り立ちし駅を出づればゴオゴオと心底驚く路面電車に

地下壕に人まだ棲みし都心たり一家五人で一部屋を借る

皮むくを知らずにわれはバナナ取りそのまま喰いて父母驚かす

ヒモ引けば水洗の水ザーザーと流れ続けてわれ脅えたり

「おい、坊主。碁をやらないか」父の呼ぶその声今も耳に谺す

通勤の短き急坂一気には肺患の父もはや上れず

夏暑く西日に耐えずウンウンと父臥せりおり褌(まわし)ひとつで


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夏過ぎて秋も病も深まればわれら遠ざけ父臥せりたり

十二月突然母に快癒告げもう大丈夫と父床上げす

快癒告ぐその夜たちまち昏睡に父は陥り再び覚めず

二夜(ふたよ)三夜(みよ)末子のわれも着替えずに起きて待ちたる父の死するを

明けぬれば母と姉とが泣きおれりわれ眠る間に父は死せりと

母姉を真似するごとに泣きしかど幼子知らず父死ぬ意味を

独り冬越せずに父は旅立ちぬ母の想いを今ぞ知るらん

葬式で父の教え子写真撮りわれうれしさに笑いこらえず

一葉の写真なきこそ悲しけれ吾が生れ落つは戦世なれば

うち並ぶ表情硬き子らの中初めて写る桜下の写真


050302

飼いおりしうさぎは鼬(イタチ)に喰われけり白き毛皮の骸(むくろ)残して

粉吹きし闇で買いたるチョコレート一かけもらいわれら狂喜す

芋食いて記録を作る泳者ありわれも芋食うひもじき頃よ


050303

庭先で飼い豚屠る惨景をわれ凝視せり肉喰いたさに

土間に溜む籾や種子(たね)など盗みしは男やもめの疎開者なりき

竿竹の売り声流れ甦るアサリや金魚売り来(きた)る日々

背中掻く母の手ずれてわれ詰(なじ)るわが痒き場所わからぬ不当を


050304

畦に撒く泥を探ればピチピチと小鮒掌(て)に撥ぬかいぼり(掻き掘り)懐かし

父母の血は海賊・蝦夷(えみし)よおそらくは我は何者大和にあるや


050305

逝ける後位牌に替わる十字架のイエスに見たり父の面影

餓鬼道に我落ち棲めどじゃがいもの味凄まじき今も好まず


050306

隣住む友のオモニ(母)がトントンと砧(きぬた)叩きし洗濯の音(ね)よ

技なくて罠で鳥獲る能(あた)わずに隣家の小鳥友と盗みし

肥(こえ)良きか丸々太るキャベツには紙の小片こびりつきおり

暖取るの手段なくして股火鉢 為したる温(ぬく)さ尻覚えおり


050322

あれほどに樹の上地下の秘密基地作りよろこぶ気持ちなぜに忘れん


050324

ラジオからヒャラーリヒャラリコ笛の音が流れて身体(からだ)虚空に舞ひし


050325

懐かしく山羊乳飲めば青草の予期せぬ臭い我たじろげり


050329

きよみさん あなたに会わす顔はない 五十年前のいじめの記憶

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題詠マラソン2005:出詠歌

2005-03-30 18:44:15 | 題詠マラソン2005:出詠歌
001:声       声高くヒヨドリ二羽が飛び立ちぬ揺れる楠の葉朝日を浴びて 

002:色       点々と春告ぐ色は濃かりけり水路の端(は)にぞ福寿草咲く 

003:つぼみ     やはらかさ秘めてぞ固き冬つぼみ忘るな子らよ花咲くことを 

004:淡       淡々と来し方語り気がつけばしんと静まる最後の授業 

005:サラダ     アメリカは坩堝(るつぼ)ではない人間のサラダボールだ旅の実感

006:時       時として鏡に映るわが貌にひとりつぶやくオマエハダレダ

007:発見      宇宙解く方程式を記す文(ふみ)発見されたよアインシュタイン

008:鞄       いち早く鞄を捨ててデイパック負うわれ笑う人もおりたり

009:眠        明けやらぬ大地揺れるを知りつつもなお眠りたき朝ぼらけかな

010:線路      韓国の青年轢かる線路ありイルボンサーラム(日本人)救わんとして

011:都       地下壕に人まだ棲みし都心たり一家五人で一部屋を借る

012:メガホン    メガホンを打ち振り鳴らしカットバセーと叫ぶ喜びわれは知らざり

013:焦       掘り炬燵王の顔など焼け焦げてトランプ禁ず父怖かりし

014:主義      主義に生き主義に死するを理想とぞ思いしときもありけりしかな

015:友       電脳で三千世界行き来する友のキー打つ病む手痛まん

016:たそがれ   清兵衛の渾名となりてたそがれは淋しき翳を脱ぎ捨てにけり

017:陸       陸続と魑魅魍魎の跋扈して平和と民主嗤う世となる

018:教室      教室でキカンジュンシ(机間巡視)をしたなんて平気で言うな若い教師よ

019:アラビア    アラビアのロレンスなるは虚像たり問わるは歴史誰の目で見ん

020:楽       楠の葉のさやぎきらめき目にすれば春一番の吹くも楽しく

021:うたた寝    猫たちのごろ寝うたた寝するを真似人も転がる床暖房に

022:弓       歌うまき五輪真弓の『恋人よ』歌詞の古きに時代を想う

023:うさぎ     飼いおりしうさぎは鼬(イタチ)に喰われけり白き毛皮の骸(むくろ)残して

024:チョコレート 粉吹きし闇で買いたるチョコレート一かけもらいわれら狂喜す

025:泳       芋食いて記録を作る泳者ありわれも芋食うひもじき頃よ

026:蜘蛛      瓢箪に穴あけ張りし蜘蛛の巣よカクラバ・ロビの音割れさすは

027:液体     これなくて何の人生あるものと想う液体いつまで飲めん

028:母       みちのくの母のふるさと夜の森(よのもり)よ今朝吾(あ)は生(あ)れしいくさのさなか

029:ならずもの  あれやこれ蛇も蛙もレッテルを貼るも貼らるもならずもの国家

030:橋       面影の橋を過ぎれば神田川水音(みなおと)急に高く聞こゆる

031:盗      土間に溜む籾や種子(たね)など盗みしは男やもめの疎開者なりき

032:乾電池    乾電池替えれば唸り小気味よく目覚め促し歯ブラシ回る

033:魚       竿竹の売り声流れ甦るアサリや金魚売り来(きた)る日々

034:背中     背中掻く母の手ずれてわれ詰(なじ)るわが痒き場所わからぬ不当を

035:禁       誰やらの一つ覚えの改革は身賭けるほどの禁忌(タブー)にあるや

036:探偵     店の名は名探偵と聞こえたり牛タン食わす名舌亭よ

037:汗       宰相が汗のごとくに撒き散らす綸言ならぬ暴言疎し

038:横浜     横浜の姉は夫(つま)訪い旅立ちぬ政変起きしネパールに向け

039:紫       試着せし濃紫(こいむらさき)のスウェーター吾妹の長躯包みて映ゆる

040:おとうと    弟は還暦過ぎてもおとうとよ姉に残さる血筋なければ

041:迷      独り聴く「アニュス・デイ(神の子羊)」にぞ涙する惑い迷える日々もありたり

042:官僚     なぜ何の誰のためにと問うことを止(や)めてぞ人は官僚となる

043:馬       オレはオレ思いつ鈍き痛みあり馬鹿め馬鹿めと自分罵る

044:香       飛鳥(あすか)とは明日香の枕飛ぶ鳥と知りし驚き今も忘れず

045:パズル    どうちがうパズルとクイズそんなことどうでもいいかそうでもないか

046:泥       畦に撒く泥を探ればピチピチと小鮒掌(て)に撥ぬかいぼり(掻き掘り)懐かし
 
047:大和     父母の血は海賊・蝦夷(えみし)よおそらくは我は何者大和にあるや

048:袖       どうやって袖まくらずに腕まくり黒板を消し頭を刈るや

049:ワイン     赤玉のポートワインってなんだったのてふおほきな疑問

050:変       混沌と変幻自在猥雑なアジアの街よわが大久保は

051:泣きぼくろ  弁慶の泣きぼくろには笑ったなド演歌世界苦手なわれは

052:螺旋     逃げ走る飼い豚捕らう途(みち)難く辛くも摑む螺旋の尻尾

053:髪       普遍なる体毛繁く髪薄き総量規制の法則ありや

054:靴下     靴下と何度言わるもツクシタと答えて笑う幼児(おさなご)ありし

055:ラーメン   魂消たねインスタントのラーメンを友はボリボリ齧り始むる

056:松       門松を立てもせずして正月に芭蕉の句をばわれ想いけり

057:制服     何着るか日毎選ぶは面倒と制服好む怠惰な思想

058:剣       キリストの立つも滅ぶも剣による教え裏切りブッシュは立てり

059:十字     逝ける後位牌に替わる十字架のイエスに見たり父の面影

060:影       地の果てに不気味な影を追い詰めしゲドは呼びたりその名を「ゲド!」と

061:じゃがいも  餓鬼道に我落ち棲めどじゃがいもの味凄まじく今も好まず

062:風邪     風邪引かず今年はついに休肝日ゼロとなりぬる吉凶を知らず

063:鬼       鬼は外福は内とて豆撒きし習俗隠す密かな残酷

064:科学     科学する心求むる分析を歌の底にも秘めてぞ持たん

065:城       教師をば城の主(あるじ)に喩(たと)えるを良しとするかの同僚もあり

066:消       友はみな大学教師われはわれそうと思えぬ心消えさり

067:スーツ    髭生やしスーツ・ネクタイ纏(まと)わざる社会科教師訝(いぶか)らぬ子らよ

068:四       研究者めざす道棄て四十年子らと歩みし日々を悔いざる

069:花束     演奏の終わりて喝采激しくも花束はなくバブル去りたり

070:曲       迷い込む谷中(やなか)路地裏くねくねと道は曲がりて川跡と知る

071:次元     四次元の時間空間それすらも無から生みたるビッグバンとは

072:インク     和蘭(オランダ)語英語に負けて外来語ソップはスープインキはインク

073:額       大額を飾る壁なくリトグラフ買い求むまま床に立て置く

074:麻酔      麻酔解け尿瓶(しびん)に尿(いばり)せんとせば激痛尻から押し寄す地獄

075:続       ひとの世の続く限りは自然なれ育つ喜び老いる安らぎ

076:リズム    音楽を人一倍に好みしが我悲しかりリズム音痴よ

077:櫛      櫛をもて髪をとかすを日本語は梳(くしけず)るとぞ言い来(きた)りけり

078:携帯     ケータイを自在に操る若者の何割書くる携帯の文字

079:ぬいぐるみ ボロボロのぬいぐるみをば片時も離さぬ子らの怯えしものは

080:書      異国からファックス届きおかしかり達意の文書く友の金釘(かなくぎ)

081:洗濯     隣住む友のオモニ(母)がトントンと砧(きぬた)叩きし洗濯の音(ね)よ

082:罠      技なくて罠で鳥獲る能(あた)わずに隣家の小鳥友と盗みし

083:キャベツ  肥(こえ)良きか丸々太るキャベツには紙の小片こびりつきおり

084:林      雪原に矯(た)められ刈られ身もだえし林檎樹(りんごじゅ)立てりオブジェのごとく

085:胸騒ぎ   ケータイの沈黙深く胸騒ぎ高まる矢先メールが無事告ぐ

086:占      わが心あまりに狭く占むるものあまりに多く溢れかえれる

087:計画    国土をば計画的に喰い荒らし堤自(おの)ずと決壊したり

088:食      庭先で飼い豚屠(ほふ)る惨景をわれ凝視せり肉食いたさに

089:巻      飲むや飲む飲んでくだ巻きひっくり返る昔はいたな煩(うるさ)い御仁が

090:薔薇    いろいろと読めれど書けぬ漢字あり我は死なんか薔薇と書けずに

091:暖      暖取るの手段なくして股火鉢(またひばち)為したる熱さ尻覚えおり

092:届      南米をわが子旅する母待てり一秒千秋メール届くを

093:ナイフ   琢木のピストルの歌パクりしか錆びたナイフの裕次郎氏よ

094:進      進歩とは同時に退歩意味せんとルソーは言いぬ人理解せず

095:翼      左翼かと生徒に問われ答えしは昔日(せきじつ)ならぬ左右の定義

096:留守    留守電の機能壊れて電話機はピーゴーッヒャララわめき散らせり

097:静     コルボ振る慈愛静けさ鎮魂のフォーレを聴きて心満ちたる
 
098:未来    未来(みく)という吾妹(あぎも)の姪は心病み今を生くるに力尽くしぬ

099:動     適度なる運動続け来(きた)りせば初心者なれどはやゴール見ゆ

100:マラソン  マラソンと名づく競技に完走す空前絶後快挙なるべし
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恐々ですがブログを開きました 2005.3.30 謎髭

2005-03-30 18:05:03 | Weblog
 2か月前に突然歌心に芽生え、偶々ネットで知った「題詠マラソン」に無謀にも参加を申し込みました。果たして完走できるかと不安でしたが、なぜか走り始めたら止まらなくなりました。気がつくと3月6日に完走してしまっていました。
 「給水所」に五十嵐きよみさんの「第6位で完走」を祝う華やかな書き込みがされ、本当にびっくりしたものです。
 以来、いろいろな方々がホームページやブログでぼくの拙い歌を拾ってくださいました。お礼の書き込みをしているうちに、Hさんという方がブログを勧めてくださいました。
 Hさん、ありがとうございました。おかげて、こうして恐々ですが自分のブログを開くことができました。
 電脳世界の片隅で自分らしい歌を歌い、自分の心に響く歌を聴けたらと思います。みなさん、よろしくお願いします。

                                     
 
 
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