題詠１００首：自選１０首

ぼくも参加した＜題詠100首blog＞が、１０月３１日で終了しました。
主宰の五十嵐きよみさんからご提案があり、＜完走者＞の有志の＜自選１０首＞を集めた＜題詠100首blog自選集＞が、ぼくを含めた６７人の参加で出版されることになりました。
以下は、ぼくの１０首選です。


001：風
風もなく微かに揺るるブランコの片方（かたへ）に眠る家なき老人（ひと）の

006：自転車
自転車もバイクもシクロも自動車も嗚呼いつせいに奔るハーノイよ

008：親
夭折の子を持つ親のかなしみを湛へて届く賀状もありて

009：椅子
―＜敬愛する詩人茨木のり子の早すぎる死を悼みて詠める＞
倚りかかる椅子の背もたれ要らぬ日の詩人に早く訪ふも悲しく

025 ： とんぼ
両端に鉛を結ひて夕空に糸を放たむとんぼ戻らば

026：垂
咲き激（ばし）る枝垂（しだれ）桜の薄紅の闇に浮かびてわれを誘ふ

042：豆
豆腐（トゥブ）チゲを昼餉に食めば噴き出づるいや増す汗よ大久保の夏

056：とおせんぼ
不意つきて出会ひがしらに＜とほせんぼ＞なせば弾ける子らの笑ひが

064：百合
食ふための根をぞ掘らむと白百合を竹薮深く求めし日々よ

070：章
分け入りし草むら深き人生の終章近く歌の湧き来る

完走報告

五十嵐きよみさん
おかげさまで完走できました。
昨年は右も左もわからずに暴走しましたが、今年はほぼ３か月をかけてゆっくり走ることができました。
これからはみなさんの題詠歌を楽しませていただこうと思っています。
また来年もよろしくお願いいたします。
お体の方、お大事になさって下さい。
ありがとうございました。

0100：題

四十路なる美しきをみなの誘ひに応へ歌ひし題詠百首
（美しき＝はしき）

099：刺

刺さばさせ叩かばたたけうを鰹　茗荷大蒜青紫蘇小葱
（大蒜＝にんにく）

098：テレビ

白黒のテレビ観たさに蕎麦食ひし時代のあるを子らは知らずも

097：告白

告白の胸の鼓動を若者の＜コク＞りしときに知るや知らずや

096：器

唐津から小石原経て小鹿田まで器求むる旅もありけり
（小鹿田＝おんた）

095：誤

戦世に誤り生（あ）れし吾知るも餓え飽食のともに哀しき

094：流行

マルクスにサルトル・ウェーバー・フーコーと流行りすたりてナショナリズムぞ

093：落

オレンジの火玉となりて陽は落ちぬみちのくの旅終はる車窓に