雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

050831 日々歌う

2005-08-31 02:16:41 | 日々歌ふ
深夜にも蝉鳴く声のいつしかに絶へてぞ葉月去る日の来る

宵闇に鴉短く啼き交ひて耳を澄ませば虫の音聞こゆ

虫の音のしじまに響きさやかには見えねど来ぬる季節を聴くも


やつと咲くなんと可憐な花ならむ吾妹言ひつつ花の名忘る

鉢植を吾妹購ふ欣喜してデュランタといふ忘れ名草の

自転車を思はず停めて目を凝らす垂(しだ)るる花のデュランタなれば
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050830 日々歌う

2005-08-30 17:52:51 | 日々歌ふ
吾妹より転送されしメールには母死すの文字親しき女(ひと)の

一人娘(ご)の夏の休暇を取れぬまま会はずに別る母娘かなしも

独り住む母を亡くせる女(ひと)想ひ浮かぶ言の葉天涯孤独

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050829 日々歌う

2005-08-29 10:55:11 | 日々歌ふ
自らに似合ひの政府持つといふ箴言験(ため)す秋近づけり

単純化二者択一の技冴へて民のいのちを刺客の狙ふ

ザマを見よ司令部の来むニホンから世界を睨み戦仕掛けに

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050828 題詠マラソンから

2005-08-28 16:38:42 | 題詠マラソン2005から
【21532】046:泥 泥かぶる気概もなくて偉ぶった命令口調の輩を蔑む(コメット)

 マンションの目の前の区営の公園は半分が野球場です。
 夏休みには毎日、早朝から夕方まで少年野球を中心に練習や試合が熱心に行われています。
 けっこうな騒音でもあるのですが、それはしかたがありません。
 ただ、不快なのは少年野球のコーチらしき大人の罵声です。
 ノックをしながら一球ごとに大声で口汚く子どもを罵って、あれこれ命令しています。
 学校でも生徒たちに対して「偉ぶった命令口調の」教師がいます。
 下級生に対して「偉ぶった命令口調の」先輩がいます。
 教職員に対して「偉ぶった命令口調の」校長がいます。
 さらにその上に「偉ぶった命令口調の」教育委員会や文科省の役人がいます。
 公園でも、職場でも、国家でも、至るところにこうした輩が権力を笠にきて威張りくさっています。
 そして、いざとなると自己保身に汲々とし、責任を他に転嫁して恥じないのです。
 日本の近代史の中で、自国民と他国民に対して最も「偉ぶった命令口調」で威張りくさったのは軍人でしょう。
 しかし、彼らのほとんどは戦争を始めた責任を認め、取ろうとしませんでした。
 私的な場面から公の場面に至るまで、「泥かぶる気概もなくて偉ぶった命令口調の輩を蔑む」精神を大事にしたいものです。
 同時にそれは、自らがそうした輩にはならないという気概を持つことでもあります。

 作者はそのことをいささかの衒いもなく、剛速球のように詠っています。
  
【21533】047:大和 愚神話の残骸として海底に不沈の巨艦大和は眠る(コメット)

 日清・日露での思いがけない勝利に思い上がった日本の軍人たちは、陸軍では白兵による攻勢至上主義を、海軍では大艦巨砲主義を絶対視するようになりました。
 その海軍の大艦巨砲主義の生み出した究極の愚かな神話が、絶対の不沈を呼号する戦艦大和・武蔵でした。
 米英などはすでに戦艦中心の大艦巨砲主義から航空母艦と艦載機による航空主兵主義に転換していました。
 その結果、戦艦武蔵は前年の10月にレイテ沖戦でアメリカの艦載機からの魚雷攻撃を受け、あえなく撃沈されていました。
 1945年4月1日、米軍の沖縄上陸。
 4月5日、日本の連合艦隊司令部は戦艦大和に沖縄への出撃命令を下します。
 「一億特攻のさきがけとなって、潔く死んでくれ」という、特攻作戦の命令でした。
 護衛の飛行機はありません。
 米軍は最新鋭のレーダーを持っています。
 とくに学徒兵の下士官たちは、これが何の勝算もない攻撃で、おそらくは沖縄に達することなく米航空部隊の攻撃で蜂の巣になるだろうと予知しました。
 激しい葛藤の中で4月6日午後4時、大和は出撃します。
 翌7日早朝、米軍は大和を発見。
 新鋭空母12隻、艦載機800機が大和に波状的に襲い掛かります。
 12時32分、先陣100機が急降下爆撃を開始。
 12時45分、魚雷1発が命中。
 13時35分、魚雷3発が命中。
 13時44分、魚雷2発が命中。
 14時07分、魚雷1発が命中。
 14時12分、魚雷2発が命中。
 14時17分、さらに魚雷1発が命中。すべて左舷に集中したため、大和は大きく傾く。
 14時23分、ついに大和は横転、大爆発を起こして沈没。
 まさに作者の歌の通り、現在も長崎県男女群島女島南方176キロ水深345mの海底に、戦死者2498名とともに眠っているのです。

  愚神話の残骸として海底に不沈の巨艦大和は眠る
 
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050828 日々歌う

2005-08-28 00:48:40 | 日々歌ふ
友逝ける三年前の夏のけふ動脈瘤の胸に破れて

ポツポツと欠ける友ありさもあらむ我ら生(あ)れたる戦の真中

物心つきてぞ知らぬ戦をば我らいつしか絶滅危惧種
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050827 日々歌う

2005-08-27 11:50:39 | 日々歌ふ
<馬の骨秘太刀>のドラマ周平の一人見入れる金曜の夜

<たそがれ>に続く映画化<蝉しぐれ>誰ぞ演ずる文四郎と福

海坂(うなさか)の小藩めぐる周平の思ひの充つる世界なつかし

                *

ショウジョウの小蝿うるさく思はずも叩きて展ぐ紅茶の海を
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050826 題詠マラソンから

2005-08-26 16:10:18 | 題詠マラソン2005から
【21272】 081:洗濯 明け方の洗濯物は手洗いの小さな下着 泣かなくていいよ(水須ゆき子)

 小学校五年生まで寝小便小僧だったぼくにとって、身につまされる歌です。
 昔の東京の冬の明け方は氷点下の寒さでした。
 そんな朝、泣きじゃくるぼくに死んだ母が「泣かなくていいよ」と言ってくれた記憶はありません。
 しかし、怒られた記憶もありません。
 父が死んで遺された3人の小学生を育て、生きるのに精一杯だった母。
 おそらく泣きたかったのは母のほうだったのでしょう。
 ぼくのパンツを取り替え、独りで冷たい水で手洗いしながら、明け方の暗い風呂場のタタキにしゃがむ母の背中がまぶたに浮かびます。
 作者も体調をこわされ、不調の中でのできごとのはずです。
 「泣かなくていいよ」のひとことに込められた思いと愛の深さに、打たれます。
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050826 日々歌う

2005-08-26 12:22:29 | 日々歌ふ
嵐来て直撃せむか江戸一を若き歌人と飲む宵めがけ

カウンターわれらを容れて空きありぬ江戸一にして嵐に勝てず

ときおりに風雨の具合戸を開き問ひては飲める江戸一の夜

酒肴喰らひつ語る健啖の言葉味はふ歌詠みなれば

ヱビス飲み肴たひらげ江戸一の燗酒重ぬ嵐を忘れ


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050825 日々歌う

2005-08-25 00:14:39 | 日々歌ふ
図書館でチラシ見つけて胸躍るイサム・ノグチ展木場で開かると

昨夏にロングアイランド訪ねしの高ぶり瞬時甦りたり

改装を終へたるノグチ・ミュージアム三角に建つ町工場跡

刻み彫り磨ける石の空間のノグチの宇宙にわれら漂ふ

            http://www.maybelline.co.jp/l99l119l336.htm 


滴溜め白き花弁も凛として嵐よ来よと槿静もる
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050824 日々歌う

2005-08-24 01:08:34 | 日々歌ふ
近隣のカフェでたまたま手に取りし知る人ぞ知るバリー・マッギー(Barry McGee)を

バスキアを継げるの評もむべなるかマッギー描くグラフティ観れば

落書きをアートにしたる夭折の天才の道マッギー追へり 

http://8887029210.books-us.asin.cync.jp/
http://www.rivet-jp.com/store/wear/new/tshirts/art/us_art_t_shirts.html

                                      
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