雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

060131 日々歌う

2006-01-31 06:57:51 | 日々歌ふ
知と情と折り合ふ気配やうやくに兆すか吾の歌をうたふは

クレヨンを絵の具に替へし頃ならむ美の女神らのわれ見棄てしは

大胆な構図と色で日々描く無心のわれのいづくにか去り

黒光を想ひて彫らむ裸婦像の黒く光るを安曇野で見し

<凍て雲>の言の葉きざむ長編の続巻にして<凍て春>の語の
(長編=あさのあつこ『バッテリー』教育画劇)

怪しげなメールとともに棄て去るや君のメールのかく届かぬは

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060130 日々歌う

2006-01-30 00:22:07 | 日々歌ふ
晴れやらぬ朝の空気の重くして木々の梢も静もりてあり

暮れ方の空の彼方に一筋の航跡の白きよ春を兆して
(航跡=あと)

老いらくの恋などかつて気味悪ろく思ひしのみにありたるものを

束の間もななめにつなぐ右手左手離せば永久の別れあるごと
(右手=めて、左手=ゆんで)

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060129 日々歌う

2006-01-29 07:30:52 | 日々歌ふ
一筋を流れながれて六十路越へいつしか吾は歌をうたへり

われ詠ふボストリッジの<冬の旅>歌ふを聴きつわが来し方を

難かりし流るる時の勢ひに抗ふことも身を任さむも

子どもらの遊びをせんとや生まれけむグリコ・チヨコレート・パイナツプルと

戦世に子らは遊びし言挙げつタンク・てつぽう・パラシュートとて

じやんけんで子らの遊びてかく言ふを知るや軍艦・朝鮮・ハワイと

ヤスクニにスメラミコトの出でませよ痴の大臣が言ふも言ひたり
(痴=をこ、大臣=おとど)

隣国の民の膏を誰よりも搾れる家系ぞ痴の大臣は

ナカムラの世界に馳せし発明の不気味な青に照らさるる冬

さし交はす右手と右手とのぬくもりを胸にしまひて人の別れゆく
(右手=めて)

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060128 日々歌う

2006-01-28 17:11:43 | 日々歌ふ
言の葉のかなしき習ひ貴に様の付きしばかりに粗野となりぬる

色あせし<言>の葉<寺>で修行せば色鮮らけき<詩>となりにけむ

沖縄ゆ寒中見舞ひの葉書来し写れる亡母の百歳近き友
(亡母=はは、百歳=ひやく)

黄の色を競ひて咲ける蝋梅と満作ともに春を先駆く

朝刊を何はさておき読みし日のいつしか去りて電脳の世に

凛とせる生涯終へし詩人をば石垣りんといふを忘れじ

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060127 日々歌う

2006-01-27 06:59:44 | 日々歌ふ
黄の畑と菜種油に満ちあふる旅の記憶よ雲南の地よ

諍ひの嵩じしあげく友の顔踏みつくる子の心の闇よ

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060126 日々歌う

2006-01-26 00:33:11 | 日々歌ふ
五年前イルボンサラム救はむと李秀賢の逝くけふのこの日に
(イルボンサラム=日本人、李秀賢=イ・スヒョン)

歌うたふ切なき思ひあふれ出づ一年の前雪の朝に
(一年=ひととせ)

散文の去りたる代はり歌の来て吾を救ひぬ三十一文字の

形式の伝統たのみ今生くる森羅万象歌ひてあるも

六十路来て歌ふ心の湧き出づるひととせ前の雪の朝に

歌心いづくに潜み湧くを待つわが裡深く知らぬ底ひで

ひととせをひたすら歌ひ生き来しぬ草木を花を人をこの世を

生き難きこの世にしあれど歌ありて心に澱の淀むことなく

富地位を求めず生きて歌を得る思ひもかけぬ報ひのあれば

CTもMRIも吾が身体見透かすことの未だなけれど

香ばしく畳鰯を炙りせば日の本の酒なほ旨からむ

死をもつて沈黙守るに値する闇の深さを知りたる者の
(守る=もる)

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060125 日々歌う

2006-01-25 06:58:16 | 日々歌ふ
火の気なき三畳の間で凍えしや堕ちし寵児の小菅で眠る

沈丁の仄かに赤らむ芽のありて春待つ心切なくなりぬ

谷中・根津・千駄木まとめ<谷根千>と森まゆみらの名づけし知恵よ
(谷根千=やねせん)

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060124 日々歌う

2006-01-24 06:59:49 | 日々歌ふ
夏ひと夜星ふる佐渡に鳴り渡る鼓の音に身を任せしも

頭垂れ異形の姿で眠りをる人の隣に吾も座らじ
(頭=こうべ)

分別を持つ人なれば分別も確かなりしやゴミ棄つるとき
(分別=ふんべつ、ぶんべつ)

知りつつも巨万の富の誘ひに抗へずして地に堕ちし者
(誘ひ=いざなひ)

時として眼窩の奥にホタル飛びいつしかさらに蚊も飛び迷ふ

明けぬれば降りつむ雪にスズカケの落ち葉のありて朝陽に憩ふ

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060123 日々歌う

2006-01-23 00:21:24 | 日々歌ふ
数式や数そのものが詩を語るかなしき愛の世界を知りぬ

トンボとふ言の葉耳に鉛筆やメガネを想ふ世代もありて

雪の花しだれて咲けり桜樹の春待つつぼみ固くしあれど

ほろ苦く色あざやかにゆで上げて菜の花食まむ春来りなば

蝶を追ひ<てふてふ>などと言ひしころ母を慕ひて<ふぁふぁ>などと言ふ

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060122 日々歌う

2006-01-22 22:04:05 | 日々歌ふ
雪埋む都を後に箱根へと向ふ車窓に雪景色消ゆ

忽然と雪の景色の現はるる箱根の峰を車で行けば

雪覆ふ湖畔に立ちて芦ノ湖のかなたに想ふ富士の高嶺を

薄陽もれロープウェイより見はるかす湖水光りて銀に映ゆ

やはらかな曲線ゑがき横たはるムーアの像に雪の降りつむ
(ムーア=ヘンリー・ムーア)

鈍色の空をにらみて魁偉なるバルザック立つ箱根の峰に

晴れゆけば箱根の山に谷隔て大の字白く浮かびてありぬ

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