051130 日々歌う

―サントリー・ホールで庄司紗矢香のリサイタルを聴きて詠める

　隅々に新たないのち吹き込みぬ庄司紗矢香は奏でし曲に

　一音のいのち通はぬ音のなき庄司紗矢香の楽に魅せらる

　群を抜くヴァイオリン耳に改めて庄司紗矢香の年齢（とし）を喜ぶ

　伴奏の火花散りたる巧みさに庄司紗矢香の才冴へわたる

　鳴りやまぬ拍手に弾きぬ絶妙のスラブ舞曲を庄司紗矢香は

　　　http://www.kajimotomusic.com/japanese/news/200511_shoji.html
　　　051030　日々歌う
　　　051029　日々歌う　
　　　051002　日々歌う

051129 日々歌う

降り積もる楓黄葉の道の辺に夜来の風の吹くを知らずも

雨風のな降りそ吹きそ常ならぬ色こそ惜しめ桜紅葉の

051128 日々歌う

珍らかな色に染まりし黄葉のはたと気づきぬ姫娑羅（ヒメシャラ）なるを

遥かなる銀杏黄葉の目に沁みてわれ過ぎがてに愛で行きしかも

数百の鴉啼き交ひ舞ひ飛べば欅紅葉の宵方に消ゆ

051127 日々歌う

父母の潮（うしお）を炊きて塩つくる日々もありたり生きるたつきに

戦世の終はりてみれば塩すらも潮を炊きて作るほかなく

潮炊く小屋の並びしみちのくの海辺でわれは波と戯る

潮（しお）炊きし白浜削る波音を空しく聞きて父母想ふ

051126 日々歌う

ともに勝ち涙と笑ひ異国より来りて分かつ二人の力士

かく早く国境線の<国技>から消へ去り行くを誰ぞ知りけむ

七連覇なして涙をモンゴルの横綱流し座布団の飛ぶ

満面の笑みのこぼれて欧州の東に育つ大関生まる

　　　　　　　　　　　　　　　＊

鉄釉の鈍く光れば八寸の浅鉢包む黒き釉薬

狂ひなき轆轤を引きて巧みなる森永篤史三十余歳

俊才の笠間に出でて笠間越す器の世界創りつあらむ

　　　　　　　http://www.lakoo.jp/sakka/s-morinaga/

051125 日々歌う

<門>といふ陶器商ふ名店の笠間にありてしばし遊べり

一覧し心惹かるは飛びかんな美（は）しき小鹿田の大皿にして

色深き漆と見まがふ片隅の若き匠の器求めり

　　　　　　　　　　　http://www.gallery-mon.co.jp/mon.html

051124 日々歌う

笠間なる小高き丘に友ふたりカンタロウとふ犬を飼ひ住む

スタファンの故国育む木の家で一夜を興ずスクラッブルに

今回もビリで終はれどそれもまた楽しからずやスクラッブルの

数百のテントウムシの群飛びてのどかなりしが笠間の里は

列なして南天赤く陽に燃ゆる農家の庭に見る人もなく

051123 日々歌う

―ＮＨＫ「クローズアップ現代」(051121)にダルデンヌ兄弟の出演するを観て詠める

　まなざしのやさしく深き映画撮るベルギー人の兄弟のゐて

　ダルデンヌ兄弟撮りてわが魂に深く刻まる<息子のまなざし＞

　新作のカンヌで賞を取るゆゑか日本を訪ひしダルデンヌ見ぬ

　底辺の若者想ひダルデンヌこもごも語る國谷キャスターに
　

051122 日々歌う

数葉の真紅に染まる満天星（ドウダン）を炎に燃やす寒気待たるる

051121 日々歌う

専攻は<表象文化>に決めしとて目を輝かせ教へ子来る

キリアンもフィリップ・ジャンティも教へ子はいつしか知りて話弾みし

新しき学切り開かむと教へ子の二十歳の容貌（かお）の輝きてをり

教へ子の学に目覚めし美（は）しき顔われ老ひたればまぶしくぞ見ゆ