雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

<003:屋根>から

2007-06-22 19:32:02 | 題詠blog2007から


画用紙の半分以上が屋根だったアキラが出した夏の宿題 (プラシーボ)

子どもの描く大胆不敵な構図の絵が思わず目に浮かびます。
アキラは作者の子どもでしょうか。
それとも小学校の教え子でしょうか。
多分、後者でしょう。
<画用紙の半分以上が屋根だった>そのステキ(不敵)な絵とそれを描いた子どもへの、愛情に満ちたたしかな眼差しが感じられます。
さりげない巧みな表現に感動しました。


                             *


「省」と成り心なしか強く叩きおり自衛隊ヘリの爆音屋根を(蝉マル

防衛庁の省への格上げ。
おそらくそれはアメリカと一緒に戦争をするための危険な一歩、なのでしょう。
その漠たる不安が、いっさいの観念的な表現なしにみごとに歌われています。



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<002:晴>から2

2007-04-24 20:09:46 | 題詠blog2007から


晴れたからここから先はいらないと捨てられたのか蝙蝠傘よ(野良ゆうき

百円ショップででも買ったのでしょうか。
いくら安いからとはいえ、雨上がりにビニール傘などが道端に投げ捨てられている光景を見ると、寒々しくなります。
そうした<雨の切れ目が縁の切れ目>といった光景が、投げ捨てられた傘の立場に寄り添うように、ペーソスとユーモアをもって巧みに歌われています。

                            *

あの晴れた朝に廃墟となる街に少女のあなたがいたのだという (野樹かずみ)

ヒロシマ、ナガサキのどちらか。
60年以上の昔の、<あの晴れた朝に廃墟となる街に少女のあなたがいたのだという>のです。
辛うじて生き残った<あなた>と作者の関係はわかりません。
いずれにしても<あなた>は作者にとって大切な人でしょう。
その<あなた>が生き残ったことと、その廃墟となった街に起きたことへの想いが、ともに静かに伝わってきます。

                            *

こんな日に限っていつも快晴で 罪の意識が増す逢瀬です(育葉

人目を忍ぶ逢瀬の日に限ってのカンカン照り。
たしかに罪の意識も増すでしょうね。
思わずそう納得してしまう、ユーモアがあります。



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<002:晴>から1

2007-04-23 23:53:22 | 題詠blog2007から


静冷の朝の空気の只中に座して想えば霧の晴れゆく(紫峯

晴れゆく早春の朝霧は外界だけでなく、作者の身のうちをも覆っていたのでしょう。
ぼくの体験で言えば、<静冷の朝の空気の只中に歩み想えば霧の晴れゆく>ということになりますね。


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<001:始>から

2007-04-22 23:40:05 | 題詠blog2007から


四十四の歳始まれるけさにして弥生のみづに墨を触れしむ(春畑茜

いまや日本の女性の平均寿命は90歳に近づきつつあります。
44歳はちょうどその折り返し地点。
歌人の誕生日は春弥生です。
墨書された水茎鮮やかな素敵な歌が目に浮かぶようです。


きよらなるあを染み透るまだなにも殺してをらぬひと日の始め(萱野芙蓉

ひと日を生きるために、私たち人間は動植物を殺さなければなりません。
あくびやいらだちも押し殺さなければなりません。
そんな生の悲しみがさりげなく巧みに歌われています。


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