雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

060228 日々歌う

2006-02-28 00:11:03 | 日々歌ふ
幾度の春の残りし指折りて数ふる吾の春を待ちをり

汗吹けるマトンカレーの美味かれど辛きを癒すチャイもなければ

読み得れど書き得ぬままに生き来せばつひに書き得て<鬱>の晴れゆく

<鬱>引きし辞書の<鬱金(ウコン)>と記す見て鬱勃と湧くターメリックの黄

                   *

咥へ来る獲物に脅ゆ飼ひ猫の仔をなす毎に狩に目覚めて

枕辺のヒヤリとすれば母猫の狩りしトカゲの耳に触れをり

仔の育つそのつど野良に母猫の帰りしゆける心哀しも

仔の去ればいつしか野良の母猫の家に戻れるそ知らぬ顔で

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060227 日々歌う

2006-02-27 17:25:25 | 日々歌ふ
降る雨の冷たくあれど沈丁の馥郁としてほころびければ

葦原の影の揺らめく水面をば額も紅き鷭のたゆたふ

煌きて夜半のしじまに鳴り渡るショパンを弾きしキーシンに酔ふ
(エフゲニー・キーシン:24のプレリュード&ピアノ・ソナタ「葬送」・ポロネーズ「英雄」)

涯てもなき大海原に日々歌ふ短き歌を電波縁に
(縁に=よすがに)

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060226 日々歌う

2006-02-26 01:41:16 | 日々歌ふ
春待つの想ひの深く六十路越すわが裡になほ芽吹くものある

そぼ降りし雨に煙れば如月の杜の鎮もる芽吹きを秘めて

雨止まむ薄日の洩れて欅樹の小枝に溜まる滴光れば

ほころびし沈丁の花そぼ濡れて仄かに馥る顔を寄すれば

道の端に屈みて愛でむ咲き初むる吾待ちをりしイヌフグリをば

亡き母の育み咲かす橙の色濃き花の君子蘭とふ

                 *

青山の通りで出会ふ鰐淵の晴子の歩む雲に乗らずに

孫の名を付けよと言はれ戯れに<雲子>と書きぬ渡辺一夫は

伝蔵も別れを告げむ秩父なる欅の巨樹に藤絡み咲く
(伝蔵=井上伝蔵)

ヴィオロンの<雨の歌>をば聴かばやとデュメイ・ピレシュのアルバム探せど

                 *

履歴書に書きうる資格ただ一つ教員免許われの持てるは

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WHEN I WAS MOST BEAUTIFUL 060225

2006-02-25 19:18:06 | Weblog
060220 日々歌う ―敬愛する詩人の突然の孤独死を悼みて、旧詠を寄す
に、「茨木さんのこと」としてmizumakura=yamatoさんから次のようなコメントをいただきました。

<友人の吉岡しげ美さんの、代表曲が「わたしがいちばんきれいだったとき」でした。この歌を、アメリカで老いたピート・シーガーが歌っていると聞いて、いつか、吉岡さん茨木さんといっしょに行って聞きたいねと話したことがあります。大切な詩人を現代は失いました。>

インターネットで探して見たところ、片桐ユズルさんによるという茨木のり子さんの「私がいちばんきれいだったとき」の英訳が見つかりました。
mizumakura=yamatoさん、ありがとうございます。


WHEN I WAS MOST BEAUTIFUL

When I was most beautiful,
Cities were falling
And from unexpected places
Blue sky was seen.
When I was most beautiful,
People around me were killed.
And for paint and powder
I lost the chance.

When I was most beautiful,
Nobody gave me kind gifts,
Men knew only how to salute
And went away.
When I was most beautiful,
My country lost the war.
I paraded the main street
With my blouse sleeves rolled high!

When I was most beautiful,
Jazz overflowed the radio,
I broke the prohibition against smoking
Sweet music of another land!
When I was most beautiful,
I was most unhappy,
I was quite absurd,
I was quite lonely.

Words by Noriko Ibaragi (1957); Music by Pete Seeger (1967)
TRO - © 1968 & 1970 Melody Trails, inc., New York, NY.

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060225 日々歌う

2006-02-25 14:58:08 | 日々歌ふ
新宿のわづかな野辺に可憐なる十輪ばかりイヌフグリ咲く

連翹も雪柳追ひあをみゆく春の息吹きに如月の去る

                 *

曲がりてはいけぬ角をば曲がりせば人みな堕ちむ畜生道に

生き死にに関わる深き淵なれど気づかぬままにひと渡り行く

畜生と獣嘲る吾らほどかたみに憎み殺し合ひをり

                 *

<照柿>と<マークスの山>読みつぎて自ずと浮かぶ露の文豪の

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060224 日々歌う

2006-02-24 06:59:15 | 日々歌ふ
極道の映画を知らぬわれ観しは<千里を走る>高倉健の

口づさむ<生きてりやいいさ>早逝の河島英五つくりし歌を

東風吹かば思ひをこせよ沈丁の匂ひにむせつ彷徨ふ日々を

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060223 日々歌う

2006-02-23 09:28:39 | 日々歌ふ
大久保でディープな店に連れゆくと言へば問はるる<狗>にしあらむと

絶妙のトトリムックとチャプチェ食み濁れる酒にしばし寛ぐ

もの食める店に<土地>とて名づけしのをかしさあるも味のよければ

                  *

漬物に味の素をば雪のごとふりかけ食みし時代のありぬ

真つ赤なるピビンネンミョンこはごはと食めば甘味の口に残りて

うさぎの眼のぞけど合はぬ焦点の色の赤きに恐れ抱きし

夜更くれば電車のドアの開くを待ち数多の走る暮らしのありて

                  *

枯れ伏せるアガパンサスの葉群れ見ゆ終はりし愛の骸のごとに

凛として紅白に咲くヤブツバキ如月飾れ山茶花のあと

梅咲かむ吾の生れたる如月も戦に人の脅えしあれど

疎らなる木々の芽吹きの未だなき如月染めよ南天の紅

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060222 日々歌う

2006-02-22 23:51:00 | 日々歌ふ
枯れ枝と見紛ふものの芽吹ければ紫陽花の芽の萌黄色して

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060221 日々歌う

2006-02-21 07:03:45 | 日々歌ふ
ブラをするをみなら日々に諸手をば背中にまはし身体きたへむ

飢ゑをれば脱脂粉乳鯨肉のまづき給食われは残さず

馬糞とて鈴木佐藤を呼ぶほどに道の真中に転がりしもの

キムチのム母音はあらず子音のみ近くて遠き言の葉ひとつ

湧き出づる水辺覆ひてクレソンの春をまぶしく運びにけりな

ビオンディの<四季>聴き行けば教へ子の父子の隣に座りてをりぬ

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060220 日々歌う

2006-02-20 18:11:00 | 日々歌ふ
 ―敬愛する詩人の突然の孤独死を悼みて、旧詠を寄す

新宿の高層ビルで週一度ハングンマルをともに習ひし

<朝カル>と言はれて瞬時理解せぬ吾を笑ひて講座に誘ふ

練達の金(キム)先生の教へ子に茨木のり子その名のあれば

夫(つま)逝きて詩人は旅す隣国のことばの森へ五十路の決意

連れ行かれ胸躍りしは詩人との金先生の再会の席

五指越ゆる詩集束ねて憧れの詩人にサイン乞へば笑はる

散文で詩人は刻むユン・ドンジュ(尹東柱)浅川巧この人を見よと

いつしかに呪文となりぬ<ばかものよ> 詩集『自分の感受性くらい』

新刊の自著を詩人は背表紙にヨルシミコンブハセヨ(熱心に勉強してください)と書き呉る

ヨルシム(熱心)にコンブ(工夫=勉強)せざれば世の習ひ置き去りさるるハングルへの旅

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