雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

日々歌ふ1112(28首)

2011-12-31 17:18:39 | 日々歌ふ2011

111202
 よくぞまあまた来てくれぬ鴨たちよはるか北から苦難の国へ
 風立ちて朴の黄葉(もみぢ)はカラカラと青空高く踊り奏でぬ
 隣人の知らざるままに燃え上がる桜紅葉の屋根越しに見ゆ
 晩秋(おそあき)にな咲きそ咲きそ可憐なるタチツボスミレよイヌノフグリよ
 青空に桂黄葉(もみぢ)の風に揺れやさしく歌ふ今はの歌を
 人住むや古き家にぞ類ひなき櫨の紅葉は燃え盛りける
 夕されば名残惜しみて秋薔薇の赤く咲きゐぬひとり静かに
 黄に赤に闇を背おひてもみぢ見ゆ暮れ方早き晩秋の夕
111207
 核含む冷たき雨に色深む野茨の実も桜落ち葉も
111208
 ―<七十年目の一二.八にこの国の未来を憂ふ>
 誰一人責を取らざるこの国に救ひの道のありやなしやと
111214
 垂れ籠めし鈍色(にびいろ)雲のかき消えて冬空晴れぬ秋雲浮かべ
111219
 ―<隣国の稀代の独裁者の死を聞きて>
 その死また社会奉仕と湛山のかつて評せり山県の死を
111221
 赤き実の熟れて輝き鳥たちに食はれゆきてぞいのち継がるる
111223
 初冬(はつふゆ)にこの世惜しみぬ空蝉の生けるがごとく葉裏に潜み
 季(とき)狂ひ菜花ちらほら咲く野辺に芒光りぬ日の傾けば
111224
 フィナーレを目にも清(さや)かに演じつつ光り舞ひけり銀杏黄葉(もみぢ)の
111226
 恐竜も目にせしならむ丈高き木々の冬陽に紅葉照り映ゆ
111228
 今年ほどおほく聞きたる年はなしわが懐かしきズーズー弁を
 この星のなにの狂ひて年の瀬に柳あをめるあはれあはれに
111229
 ひさびさに十キロ走り括りえぬふるさと滅ぶ苦難の年を
111231
 ―<浅草吾妻橋で開かれし「オーガヒロフミ 青い十二月 展」(Gallery A Bientot)の詩の朗読会・パーティ・二次会に参加して>
 金色のオブジェ仰ぎつ浅草で一夜満たさる友のアートに
                 *
 蝋梅のはや咲き初めし年の瀬をわれ知らざればうろたへ渡る
 一本(ひともと)の葦の茎にぞ飛び来たり瞬時に去りし鳥影惜しむ
                 *
 冬の陽のビルの窓をば燃やしつつ年の瀬深く落ちゆきにけり
                 *
 ―<山形県尾花沢の銀山温泉を訪ねて>
 銀(しろがね)の世界を訪へばみちのくの静もる湖(うみ)に冬鳥満ちぬ
 いにしへの姿とどむる銀(しろがね)の山の出湯に雪は降り積む
 銀(しろがね)が山の出湯の明けぬればものみな深く雪に埋もるる
                 *
 昇る陽にスカイツリーの浮かび立つ苦難の年を見納むるごと


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日々歌ふ1111(22首)

2011-12-31 12:15:10 | 日々歌ふ2011

111101
 木々の実をとりどりに染め秋光る三一一の年にしあれど
111102
 一枚の黄葉(もみぢ)織りなすドラマにぞこころ打たるる人世奢れば
111103
 名も知らぬ双葉紅葉のゆれ浮かぶ一瞬(とき)ぞかなしき一期一会の
111106
 ―<11/4「内田光子 ピアノ・リサイタル」(サントリーホール)を聴きて>
 吾が時代(とき)の未だ去らずと冴えわたるピアノ聴かせり内田光子は
 天馬にも精霊にも化し鍵盤を自在に奏づ内田光子は
 六十路行く内田光子の突き抜けしピアノに酔ひぬ秋の一夜(ひとよ)を
111107
 ―<11/5「大いわき祭」第1日(東京ミッドタウン隣りの檜町公園)に参加して>
 「んだ、んだ」とつぶやき聴きぬ「がんぱつぺ、がんばつぺ」とふ故郷の声を
111108
 ―<11/7「ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル」(川口総合文化センター・リリア)を聴きて>
 颯爽とアルゲリッチの時代継ぐピアノ鳴らせりアヴデーエワの
111110
 野茨の日毎熟れゆく赤き実の秋雲仰ぐ恋するごとに
 櫨(ハゼ)もよし南京櫨もさらによし都の秋に燃ゆる紅葉は
111111
 秋の野に常に変はらず咲く花のいとど愛しき見えぬ核帯び
 秋の野に春の花咲く美しき情景あればこころ乱るる
111112
 自らを紅緋(べにひ)に染めて燃え尽きむいのちの際に葉も草も実
111118
 名を知れば愛しきいのち野に潜み人世のおごりしばし忘れぬ
 紫の式部が珠のきらめきて秋陽惜しみぬ吾とふたりで
111123
 緑あり水辺のあれば鷺の見ゆ荒れし人世にいのちつなぎて
111125
 落ちる陽に紅緋を極め数葉の束の間浮かぶ燃ゆるごとくに
 青空にカリンの高く遊びゐて黄に輝けばこころ躍りぬ
 暮れ方に浮かぶもみぢを味はひつ名残惜しみぬ植物園に
111126
 空青く榎黄葉(もみぢ)の高ければ吾が心根も晴れ渡りけり
111127
 箱根なる旧き道をばたどりゆき苦難偲びぬ天下の嶮の
 柿の実のたわわに実り青空に光る秋こそ秋の秋なれ


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日々歌ふ1110(24首)

2011-12-31 12:04:24 | 日々歌ふ2011

111001
 赤き実の美(は)しき秋こそ来りけれ三一一のありてしなほも
111005
 かなしさのいとど勝らむ名を知らば道の端に咲くちひさき花は
 魂奪ふ曼珠沙華こそ妖しけれ花群にても一茎にても
111008
 出でよまたローザ・パークス、キング師の民起ち上がるアメリカの地に
111009
 酔ふほどに肌を染めゆく色白のをみなのごとき花に魅せらる
111015
 そこここに秋海棠の花ゆれて秩父路迎ふ友と吾とを
 秋桜(コスモス)とサルビアあまた群れ咲けば吸ひ寄せらるる吾らも虫も
111018
 愛と死と戦を歌ひ吾らから時を奪ひぬマティアス・ゲルネは
 バリトンでフィッシャー・ディスカウ超え継ぐをつひに聴きたりゲルネの歌に
111019
 稀といふ白く清楚なハマナスの花に出会ひぬ六十路の秋に
 秩父なる荒川村の山裾を訪へば花満つ蕎麦の畑に
111020
 茜さす天空高くオーロラを束の間浮かべ秋の陽落ちぬ
111021
 ―<秩父札所32番・般若山法性(ほうしょう)寺の奥の院を参りて>
 目も眩む山頂(やまいただき)に観音と如来のおはす古刹ありたり
 断崖の巨岩の果てに観音の立ちて浮かびぬ嶺々を背に
 鎖場を登り仰げば大日の如来の座して吾を待ちゐぬ
                *
 狩のごと望遠レンズで虫追へば吾が心根の童となりぬ
111022
 身をこごめ虫の目をして秋の野をさまよひ求むちひさき花を
 何思ひ強き目をしてものを見む久々会ひし秩父の猫は
111025
 秋に咲く桜に出会ひ偲びけり核の襲ひし故郷の春を
 鰯群れ羊の遊ぶ空を見よ晴れぬ心を抱へ生きなば
 先駆けの櫨の紅葉は午後の陽に赤く浮かびぬまだよまだよと
111027
 ―<中禅寺湖の湖畔にて>
 光る日に湖(うみ)はきらめき紅葉燃ゆ人世も遠く秋の深まり
111028
 湖(うみ)光る小田代ヶ原を秋色にカラマツ染めて魂を奪ひぬ
111029
 日光の奥にぞ滝の激(はし)れども湖(うみ)は静もる峰に守られ


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日々歌ふ1109(23首)

2011-12-31 11:51:55 | 日々歌ふ2011

110902
 無味無臭無形無色に侵しゆく核に強ひらる見えぬ暮らしを
110905
 フクシマの闇なほ深き真夜に咲く白きを想ふ野の瓜花の
 フクシマのありてぞ思ふ核なるはこの惑星の惑ひなりしを
110906
 生繁る夏草わけて出会ひ得ぬ一目惚れける朱き野花に
110909
 真似しえぬ依存と不羈を愛猫の易々生きて老いを共にす
110911
 ―<東日本原発大震災の勃発から半年経つ日に>
 フクシマの完(をはり)見ぬままなほ核に吾ら頼るや愚か愚かに
110917
 晩夏(おそなつ)の山路に紅き数葉の異変にあるや心騒ぎぬ
 後になり先になりして六十路ゆくわれら迎へぬ富士の高嶺は
110918
 ほの暗き山路の際にゆれ待てりくれなゐ薄き釣舟草の
110919
 ―<9.19「さようなら原発集会」(明治公園)とデモに参加して>
 六万のひとりぞ吾も原発のなき国求め集ひ歩ける
110920
 なに守りなに恐るるや警察の脱原発の六万デモに
110921
 道の端に彼岸の花の咲き満ちて不意を衝かれぬ酷暑つづけば
 ふるさとの核の荒野にせめて咲け赤くおどろに彼岸の花よ
110922
 野にありて宿根強き蕎麦といふ白くゆれゐる花のかそけし
110923
 鮮らけき黄花コスモス一輪の浮かびゆれゐぬ闇深き世に
 紫に色づく珠のひかりゐて忍び来にけりちひさき秋は
110924
 ポリーニの時代終りし感慨と興奮覚ゆアンスネス聴き
110925
 夏惜しみ秋をよろこび睡蓮の花の咲くらむ静もる池に
110926
 丸き葉を虫食ふ跡もいとかなし身をばこごめて萩を愛づれば
 核の降る屋上狭き土に咲くちひさき花のいとどかなしき
110930
 瀬をはやみせかるる川を目に耳にしつつ浸りぬ二岐(ふたまた)の湯に
 黄金なす稲穂の湖(うみ)よ美しき汝をば汚せし核を悪みぬ
 江戸の世の面影残す大内の賑ひ去りぬフクシマ以来


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日々歌ふ1108(21首)

2011-12-31 11:37:54 | 日々歌ふ2011

110803
 列島をレイプのごとに犯しゆく核なりなりて成り余るもの
 そもそもが平和利用の能はざる魔物なりけりNUKEといふは
110808
 アルプスの峰々仰ぎ安曇野に遊べどなほもフクシマ想ふ
110809
 改めてフクシマ問ひぬヒロシマとナガサキの日に非核の意味を
110810
 木崎湖を訪へば待ちゐぬかつて見しフィヨルドのごと静もる湖(うみ)の
110811
 返しえぬ核の負債も加へゆく大地いのちを吾ら汚しつ
110812
 フクシマをひととき忘れ八方の夏尾根行きぬ花に魅せられ
110813
 カミ、ホトケ信ぜぬわれもひたすらに念じ祈りぬフクシマ想ひ
110814
 吾もまた着の身着のまま追はれけむ原発近き故郷去らなば
110815
 放たれし核の魔物に侵されつ列島迎ふ八一五をば
 迫りゐしメルトダウンを知る者ら何思ひつつ隠し通しぬ
110816
 地の深く裂け目あまたの列島を原発覆ふ吾ら狂ひて
110817
 稀れ蝶の花蜜吸ふを飽かず見ぬフクシマ遠き夏の山路で
110818
 かくなれば遠慮会釈もあらばこそ暮らし侵さめ核の魔物は
110820
 カメラ手に遊ぶ野山で出会ひけりいまだ知らざる造化の妙に
110821
 降りてやみ止みてはふりぬ栂池に花追ふ者へ無情の雨が
110822
 取り込みし児らの深部に潜みゐて核の侵さむいのちこころを
110824
 釣り舟の形にゆれし黄の花の吾を待ちゐぬ昏き山路で
110827
 高原の知るも知らぬも咲く花に傷も癒さるフクシマゆゑの
110830
 人絶えし吾がふるさとに深まらむ日毎夜毎に核の支配は
 ―<野田政権誕生の報に>
 政権よ回れよ回れ想ひ出は君には一生民には一日


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日々歌ふ1107(41首)

2011-12-31 11:22:02 | 日々歌ふ2011

110701
 フクシマの収束も見ず原発の再開謀る虚しき輩の
 野に遊び芥子菜摘みて食む春の永久に去らむか三一一で
110702
 誰ならむガス会社をライバルにオール電化を煽り来るは
 海を背に白帆のごとく穏やかに遠く見えけむ核の魔塔は
110703
 フクシマに騒擾なきを侮るや喜多方事件民権の地を
110704
 フクシマ後なにはさておき真つ直ぐにもの見る目こそあらまほしけれ
 有無を言ふ暇もなしに追はれけむわれ夜の森(よのもり)に今も暮らさば
110705
 夜ノ森の駅舎に近き祖父眠る墓所訪ふ術の永久に断たれむ          
 ママ・パパにババ・ジジも続きゐむ児らを案じてデモに加はる
110706
 絶対の安全説きし丈のこと皆無も皆無フクシマ見れば
110707
 文明の核にまみれて無邪気には三時のおやつもはや食みえぬ
110708
 フクシマよ奥羽陸奥(みちのく)東北よ生ぎよ負げんな吾がふるさとよ
 フクシマで飢えて死にたる牛豚よ馬よ羊よゆゑも知らずに
110712
 がんばつぺがんぱつぺとて幟立ち励ましをりぬフクシマの地を
 直ちにはコツトンコロリと逝かずとも遥かに待たむ癌死あまたの
 箸をもて骨を拾ひし父母兄の墓参り来ぬフクシマの地に
 避難所で幾人(いくたり)逝きぬ双葉より医師の介護もなしに運ばれ
110714
 謡はれし殺生石の原子野に置かれ侵しぬ暮らしいのちを
 汚泥また核にまみれて溜まりゆく列島熱す梅雨明けの陽の
110715
 浅知恵の吾ら窮しぬ自然には在らぬ魔物をつくり奢りて
 巨大なる凶刃と化しふるさとをなぎ払ひたり核の電炉は
110716
 今まさに朱に染まりし骸なき戦(いくさ)進まむわがフクシマで
 聳え立つスカイツリーも日々浴びむ北風運ぶ核の礫を
110717
 フクシマ後なほ原発に頼らむか利害打算に狂ふ輩の
110719
 ―<高原の山荘で「なでしこジャパン」の勝利に酔ふ>
 秘めやかに野に咲く花の華やかに咲くもまたよし撫子の花よ
110720
 フクシマのゆゑにしあらむなほ惹かる野に咲く花のひとつひとつに
 受精せし卵子を胎に強ひらるる暮らしもあらむフクシマの地に
 稲麦も野菜もなにも雑草もいのち等しく核に侵さる
110721
 結婚の過去も未来もフクシマは壊しゆきなむ核の怖れで
110722
 児を襲ふ核の汚染に心配の深まるばかり若き親らは
 幾万か幾十万か列島をいづれ覆はむ被曝癌死の
110724
 ―<四十年ぶりに相馬野馬追祭を訪ねて>
 大津波、核にも負げず野馬追の祭絶やさぬ民ふるさとよ
 野馬追を訪へば旅路に鳴りつづく計器ありたりウクライナ製の
 禁域の突如現れナビ示す帰路断たれけり南相馬で
110725
 金のため核もてあそぶ亡者らと深きもふかき溝の隔てよ
110726
 できうれば総てを隠し通さむと企むものか国家といふは
110727
 フルーツと気取る余裕も失せゆかむセシウムいづれ果実侵さば
110728
 いつさいの名利を余所に原発の危険究めし貴人をりたり
110729
 安全を掲げ造れど閉ぢ塞ぐ術も知らざり核荒ぶれば
110731
 霊山(りようぜん)の岩間より湧く清水をも核侵しゐむみちのく伊達の
 野の草の繁り花咲き虫舞ひて被曝の連鎖いのち覆はむ


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日々歌ふ1106(52首)

2011-09-01 23:45:55 | 日々歌ふ2011

110602
 この期にも茶番以外の政治なき愚をば笑ひて核の雨降る
 強力な指導者などは要らざらむ未曾有の危機に吾らはあれど
 為政者にせめて望まむ謙虚さをオレがオレがの我欲もたざる
 なす術を持たず思ひぬ湛山を湛山二世の出でよ出でよと
110603
 着のままで核に追はれしふるさとの幼馴染みと一夜語りぬ
110604
 ケータイの向うで友は叫びゐぬ富士が見えるぞ大菩薩だぞと
 デモをもて民の意思をば表すのときぞ来らむこの列島に
110605
 民、子らの被曝抑へずその代り被曝基準を上ぐる<国>とは
110606
 ―<「福島県放射線健康リスク管理アドバイザー」なる山下某(長崎大教授)の意図・正体・背景・任命責任等を疑ひて>
 フクシマの被曝を今し安全と説きゐる教授何者ならむ
                 *
 ―<「ETV特集 続報 放射能汚染地図」(6/5、NHK教育テレビ)を観て>
 老若の科学者ふたり突き止めし汚染地域(ホットスポット)の飛び地まだらに
 人住めぬ汚染地域(ホットスポット)と知らずなほ民暮らしゐむフクシマの地に
 罪深き国・東電が無策にて民の侵さる見えぬ魔物に
110608
 ―<九州電力玄海原発の運転再開への動きを聞きて>
 父方のふるさと壱岐も潰えむか玄海の核炉暴走なさば
110609
 知るほどにフクシマ生みし闇深き<未必の故意>の闇の深さよ
 なほ行くや滅びの道をフクシマ後ヒロシマありてナガサキありて
110610
 洪水の己亡きあと来れよと吾ら生きむか三一一後
110611
 ―<三一一原発大震災から三か月の日に>
 誰思ふ新宿の街歩く日を脱原発の叫び挙げつつ
 原発は要らぬと叫ぶつれあひと若老女男の市民に交じり
110613
 ふるさとを核でうしなふ痛みをばデモで出会ひし歌人と共にす
110614
 <原発で手足ちぎられ>自死選ぶ酪農家出づあはれ相馬に
110616
 バリアーもストレスもまた絶対の悪にはあらず だが原発は
110618
 地の震へ海の狂ひて追ひ討ちにふるさと襲ふ核の魔物の
 フクシマを水に流せぬ過去にせむ胸底深く刻みきざみて
110620
 説かれ来し神話の果てにふるさとは荒野と化しぬ核に侵され
 直ちにはただちにはとふ公式の説明酷し核の汚染に
 遅々として収束見えぬ核事故に姿隠せりエセ学者らの
110621
 核持てよ軍事国家を徴兵をめざせと叫ぶ狂愚の知事は
110622
 大熊も双葉・浪江も富岡も町(マチ)にしありて町(チヤウ)にはあらず
 復興の奇跡ふたたびありえむやわがフクシマにヒロシマのごと
 ニンゲンのエゴのエゴたるゲンパツを一掃せよとフクシマ命ず
110623
 その罪の万死億死に値せむ山河暮らしを核で奪ふは
 酷暑をば原発なしで越せるかとわれらを脅す懲りぬ輩は
 場当たりのポーズにあるやさあらずや総理にほはす脱原発の
 抱擁もままならぬ日々送りゐむ愛する者ら核に追はれて
110624
 何気なき雑草(あらぐさ)繁る庭隅に潜み待ちゐむ見えぬ魔物の
 伝へてよ誰かカツヲに今年まづフクシマ沖は避けて泳げと
 魚屋のレジで憂ひぬこの秋に戻るカツヲの汚染の有無を
 フクシマの安全説きし教授らの姿消え去れきれいさつぱり
110625 
 事ここに至りてなほも原発の延命図る金の亡者ら
 曽祖父の半谷清寿(ハンガイセイジユ)が植え初めし桜咲きけり核の荒野に
 われら見ぬ安全・保安の名を騙り民のいのちを護らぬ者らを
 日々核を浴びつ吸ひつつ暮らしゐむ今フクシマに幼稚園児らも
 ―<近藤浩平作曲「海辺の祈り~震災と原子炉の犠牲者への追悼・作品121」に寄す>
 バスーンの奏づる深き鎮魂の曲生ましめぬ三一一は
 次々に<過酷事故>をば後出しでさらりと明かす態度悪みぬ
110626
 収束の果たしてあるやフクシマに山河暮らしを旧に復する
 核ゴミの処理方法も知らずして吾ら愚かにフクシマ迎ふ
110627
 酒酌めば話尽きざるふるさとを核に追はれし幼馴染と
110628
 日々歌ふわたの原漕ぎ出でてみれば獲る魚の侵されにけり見えぬ魔物に
 初夏(はつなつ)の花求めゆくさきたまで胸底ふかくフクシマ浮かぶ
110629
 フクシマを恐れ忘るな今度こそ芯の芯から被曝ニホンよ
110630
 原発の来し方知れば悪名かなうてか知らぬ中曽根の名が
 要するに原発すらもこの国は見切り発車の丼(どんぶり)勘定


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日々歌ふ1105(33首)

2011-06-07 18:11:06 | 日々歌ふ2011

110501
 ―<森まゆみ「だれもが「フクシマ人」」(『東京新聞』5/1朝刊1面トップ)を読みて>
 生まれでも生まれでなくもわれら皆フクシマ人となりしを思ふ

110503
 人絶えしふるさとなれど阿武隈の山は笑はむ核の五月に

110504 
 山笑ふ笠間に遊びフクシマの訪ふことできぬ故郷思ふ

110505
 丸腰のビンラディンをば撃ち殺す無法犯せりオバマ愚かに

110506
 喜ばむ動機ともあれハマオカを止むる決断首相為せるを

110509
 気がつけば核実験をそこここで行ひ来る被爆ニホンは

110510
 すでにしてチェルノブイリを超えゆきし汚染の中に児らも残さる

110511
 ふるさとの核の荒野になり果てしなす術もなきこのふた月よ

110512
 忽然と神隠しのごと十万の民消え去りぬ核に追はれて

110513
 爆発のなきぞ奇跡よ原子炉のすでに起こしきメルトダウンを

110514 
 世代越えいのち蝕む魔物をば解き放ちたり吾ら愚かに

110515
 じわじわといのち喰らはむ列島でこの先長く核の魔物は
 母眠るいわきの墓所の安否さへ知らで迎へぬけふ命日を

110516 
 この星のいのちの未来左右せむフクシマ襲ふ核の試練は

110517
 直ちには何あらざれど遠き日に正体見せむ核の魔物は

110518
 チッソをばはるかに超えて東電のいのち奪はむ核もてあそび

110519 日々歌ふ
 パニックを避けるためとて核汚染隠せる者ら悪むべしにくむべし
 発電も兵器もなにも無差別にいのち奪はむ核にしあれば
 あと一つ事故を起こさば列島のすべて終らむ知るも知らぬも

110520 
 晶子哭け馨断ぜり核事故を事もあらうに神の仕業と
 被曝死のいづれ数多に顕れむわれら亡き後若き世代に

110521
 緩慢なジェノサイドをば列島にもたらす責めを誰ぞ負ひうる

110523 
 国会で小出助教ら警告を発するときのつひに来れり

110524
 ―<もはや文字通りの無人駅と化せる常磐線夜ノ森駅を遠く思ひて>
 ツツジ咲く夜ノ森駅を徐行して通ふ車輌も絶え果てにけり

110525
 ―<吾一九四四年フクシマの富岡町夜ノ森に生れて一九五〇年に離る>
 セシウムに深く冒され曽祖父の開きし土地は闇に閉ざさる
 夜ノ森(ヨノモリ)とつぶやきみればとめどなく思ひの溢れ怒りのあふる
                   *
 東西にいづれ劣らぬファシストを首長に選ぶ民のをりゐぬ

110526
 ―<マイケル・マドセン監督ドキュメンタリー『100,000年後の安全』を観て>
 地下深き十万年の封印の成否誰知る核の魔物の

110527
 火を使ひヒトとなりける吾らいま消しえぬ火にて滅びゆかむか

110528 
 ―<近藤浩平・作曲「海辺の祈り~震災と原子炉の犠牲者への追悼・作品121」(ノルウェーのスタヴァンゲル交響楽団の首席バスーン奏者・Robert Rønnes氏による世界初演)を聴きて>
 かく深きかくも哀しき鎮魂の曲求めゐむ三一一は

110529 
 降る雨になほ含まれむもの怖れ生きゆく日々の終り見えざる

110530 
 ―<大松達知編集『小島ゆかり』(シリーズ・牧水賞の歌人たち Vol.6、青磁社)の届きて>
 縁ある若き歌人の編むといふ本は名乗りぬ『小島ゆかり』と

110531
 ―<鈴木比佐雄の詩「カクノシリヌグイ」(2003年)に触発されて>
 フクシマの人なき野にぞ乱れ咲くその名も酷きカクノシリヌグイの


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日々歌ふ1104(37首)

2011-05-07 19:19:01 | 日々歌ふ2011

110401
 ―<「沖縄のガンジー」と呼ばれし阿波根昌鴻の至言を想ひて>
 沖縄の偉人のかつて喝破せり核持つ国は核にて滅ぶと
110402
 列島に大海原に故郷ゆ核の汚染のけふも拡がる
110407
 ―<公開されし小泉淳作の東大寺襖絵を訪ねて>
 核襲ふ春にぞ訪へば<千年の桜>咲きゐぬ古都の御寺に
110408
 核武装ねらふ輩の列島に原発つくる暗き歴史の
110409
 散り初めし桜の花の舞ふ空に核の雨降る核の雨ふる
 野馬追の祭りも消えしみちのくの核の荒野に馬らさまよふ
110410
 咲き満つる都の花も汚れゐむふるさと放つ見えざる核に
 国荒み山河は破れふるさとを人の追はれぬ着の身着のまま
 誰がための原発なりき根こそぎにいのちくらしを危機に追ひやり
110411
 ひと月のはや去りたれど核危機の未だ去らずも人智及ばず
                   *
 古都にまで核の汚染は及びしか異国の客の影ぞ少なき
 早咲きの枝垂桜を仰ぎつつ核なき春を吾ら偲びぬ
 橿原の今井町こそかなしけれ宗久の夢江戸の街並
110412 
 ―<福島原発事故の最悪「レベル7」評価へ引き上げの報に>
 はるかなるチェルノブイリの忍び寄りつひに並びぬわがフクシマに
                   *
 けふ搾りあす搾りしてただ棄つる乳の白さよ牛飼ふ人よ
110413
 核をもて追はるる酷きかなしみをふるさと人の永久に強ひらる
 阿武隈と太平洋の狭間なるふるさと滅ぶ核に侵され
                   *
 ―<フジサンケイグループ、「地球環境大賞」を東電への報に>
 冗談の黒々深し東電に「地球環境大賞」授与と
110414
 フクシマの核にまみれしふるさとに今を盛りと花の咲くらむ
 フクシマが世界に記憶さるる日の来るぞ悲しきわが故郷よ
110415
 晶子泣け馨の言ふを聞きて泣け原発推進謝らざると
 直ちには顕るるなき災厄も時経るごとに核もたらさむ
110416 
 文字とほり小鮒釣りしふるさとのひと絶え果てぬ核に追はれて
110417 
 “nuke”をば「核」「原子力」と訳し分け洗ひ来りぬ吾らが脳を
110418
 心から愉しまぬもの胸奥に抱へ訪ひけり古都の春をば
110419
 をさな児と若き人らの育ちゆくいのちに核の日々に降りつむ
110420 
 ふるさとの核にまみれし春思ひ一(ひと)日秩父に花を求めむ
110421
 阿武隈の山の笑ふ日近からむ人なき里の悲しみよそに
110422
 花見なば思ひ起こせよフクシマの見る人もなく咲き散る花を
110423
 しつとりとさみどり濡らす雨なれどいのち蝕む見えざる核の
110424
 空は晴れ木々は芽吹けど列島に立ちこめ去らぬ核の恐怖の
110425
 ―<世田谷区長選で保坂展人当選の報に>
 寿がむ脱原発を正面に説き選ばるる区長の出でて
110426
 過ぎゆけど四半世紀の時重くチェルノブイリの悪夢覚めざる
 馬駆くる蹄の音のこだませし桜並木も核に閉ざさる
110427
 「ほあんいんぜんいんあほ」と子どもらも嘲る役所なにゆゑあるや
110428
 名にし負ふ浜通りとはなりにけり吾がふるさとの核にまみれて
110429
 ―<「京都大学原子炉実験所・小出裕章助教に聞く(有太マン)」を読みて>
 正造に勇気をもらひ原発の危険究めぬ小出助教の


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日々歌ふ1103(31首)

2011-04-30 17:13:20 | 日々歌ふ2011

110301
 いのち継ぐ蛙の行為を<抱接>と言ふを知りてぞ春の真近き
110302
 どれほどに見れど見えずの世界あるちひさきものも大きなものも
110303
 幻想に終らぬことを祈りつつ遥かな民の起つを喜ぶ
110306
 鎌倉の弁天様も嘆かれむ汚銭洗浄横行の世を
 まつたうとでたらめの差の思ふほど大ならざるを知るぞかなしき
110307
 民起つの連鎖恐るる隣国の首脳浮かべむ蜂起の二字を
110308
 幹部らの薄き頭の映りゐる謝罪風景日々にうとまし
110309
 拝金の極まる国のなほ名乗る社会主義こそミステリーなれ
110310
 狩りを為す白鷺のほかこの世から何も失せけり暗き水辺で
110311
 大地揺れ海の襲ひて原発の危機に瀕せる吾がふるさとよ
110312
 ふるさとの町から人の消えゆけり巨大地震に原発耐へず
110313
 ―<福島県立双葉高校のグラウンドで救助を待てる人らの被曝を聞きて>
 亡き父のかつて教へし双(ふた)高の庭にてつひに被曝者出ぬ
110314
 次々に破局迫りぬ故郷にスリーマイルかチェルノブイリの
110316
 暴走のさらに続かば待ちをらむふたたび酷き核の奈落が 
 ふるさとの桜花こそ悲しけれ今年は咲かむ見るひともなく
110318 
 ―<ル=グウィンの「To my Readers in Japan(日本の読者へのメッセージ)」を読みて>
 ああゲドよ割れし指輪の片割れを探しくれぬか時空を越えて
110320
 いのち懸け気高き人らの防ぎゐむ核の奈落をわがふるさとで
110322 
 牛乳もハウレン草も飲み水も見えざる毒のはや冒したり
 主去る核の荒れ野に遺されし犬猫あまたあはれあはれよ
010323
 ヒバクシヤに乳児なりゆく東京の飲み水つひに核に侵され
110324
 原子炉の暴走止めむとつぎつぎに気高き人らヒバクシヤとなる
 今年こそ木々の芽吹きはかなしけれ核の春にぞなりにしあれば
110325
 すでにしてチェルノブイリに次ぐといふ故郷覆ふ核の汚染は
110326
 秋冬に劣らず春もおそろしき季節とならむ核の襲へば
110327 
 ―<京都大学原子炉実験所助教・今中哲二氏と小出裕章氏に捧ぐ>
 原発の危険を究め四十年 偉き人らは未だ<助教>と
 傾けよ今こそ異端の助教らにわれらが耳を危機の最中に
110328 
 原発に官産学の<村>ありて利権・出世を貪り来る
110329
 ヒロシマとナガサキに次ぐフクシマへ日々なり行きぬわが故郷は
 ノーモアの叫びにつづきフクシマと呼ばるる声のはや谺せり
110330
 ポスターに<うつくしま>とふ大いなる文字の踊る日ふたたび来るや
110331
 桜花な咲きそ咲きそ住む民の核に追はれし吾がふるさとに


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