雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

日々歌ふ0912(62首)

2009-12-31 22:07:37 | 日々歌ふ2009

091201 
 名にし負ふ竜田の川の今もなほからくれなゐに水くくりけり
091202
 ―<「舘野泉ピアノリサイタル2009~彼のための音楽を彼が弾くVol.3~」(12/1:東京文化会館小ホール)>を聴きて
 彼のひとの左手だけで奏づると誰ぞ思はむ眼(まなこ)つむらば
 内外に委嘱をなせる左手の曲の次第に数を増しゐぬ
 病む右手(めて)も時にこぶしと肘つかひ楽を奏でり舘野泉は
 小品を心のひだに沁み入らせ舘野泉は演奏終へぬ
091203 
 三万の増派をなして愚かにもオバマ歩まむ滅びの道を
                 *
 降り立ちし駅より呆れ歩みゆくこれ途なるか法隆寺への
 柿食まず鐘も鳴らねど斑鳩に仰ぎにけりな五重塔を
 渡来せる猫にしあらむ斑鳩の古刹になじみ独りたゆたふ
 斑鳩の丘に登れば人知れず黄葉を映す水辺ありけり
 斑鳩に旧き家並みを求めつつ竜田の川の紅葉めざしぬ
                 *
 日本語もロクに話せぬキャスターの九時のニュースにけふも出てをり
091204
 今宮の社に知らで立ち寄ればもみぢの紅く空を染めゐぬ
 黄と紅に錦織りなす晩秋(おそあき)の高桐院へ友をいざなふ
 北山の山裾深く光悦のゆかりの地にぞ紅葉訪ぬる
091205
 ―<けふ、三十六歳で逝きし父を偲びて>
 いつしかに五十九年も経ちにけり六つの冬に父を亡くして
                 *
 人波のつかの間途絶え静もれり鹿ケ谷なる法然院の
 願はくば紅葉の下に秋死なむその安楽寺の日の暮るるころ
 坂をのぼり辿れば黒谷の真如の堂に紅葉あふるる
091207
 教へ子のフィアンセ連れて訪ひくれし一夜(ひとよ)の明けて朝の清(すが)しき
                 *
 朝光(かげ)のいざなふままに黒谷をふたたび訪へば紅葉きらめく
091208
 朝刊に開戦記事を探せども空しかりけり師走八日に
                 *
 鴨の字ゆ賀茂に変はりてなほ美(は)しき古都に流るる晩秋(おそあき)の川
 まぶしくも紅葉(もみぢ)黄葉(もみぢ)と光りけり古都の御苑に巨樹の並びて
091209
 御所なれど江戸世にあれば秋の日にしづごころなく紅葉散りけむ
                 *
 降りつむる銀杏黄葉を足裏に踏みて歩まむキシキシキシと
091210 
 望遠のレンズ忘れし吾が前に葦のきらめき川蝉止まる
                 *
 孝明と息子住まひし紅葉なき御所の異様に門のみ紅し
091212
 冬野より摘みて活くれば赤ツメの花に温もるこころも部屋も
 愛猫のCDアンプに乗り来る お前も好きかモーツァルトをば
 能ふならけふは十キロ走らむと予期せぬ声の裡より湧きぬ
 衰へに競ひ勝りて久々に十キロ越えて吾走りけり
                 *
 雲南の旅を共にし丈高き友を襲ひぬ悪(にく)き病の
 先行ける六十路の友を突忽に襲ひしことの他人事ならず
 たたかひのつらさ深きを想ひつつはるかに願ふその勝利をば
091213
 折節に心づくしの届きけり職退(の)く吾を今も忘れず
091214
 過ぎ去りし秋の日思ひ今し吾歩み始めむ冬への旅を
091215
 ―<晩秋の横浜・山下公園岸壁にて>
 秋の陽の落ちゆく際(きは)に岸壁で水と戯れアート織りなす
                 *
 年金の二か月ごとに支給さる暮らしの周期変はりはせぬに
091216 
 不忍の冬の池畔をひさびさに訪ひて帰りぬ十キロ走り
 教師辞め初の師走の寒けれど吾走りゐぬ独り六十路を
091217
 冬の野をさまよひ見れば地に低くヒメオドリコソウ・ホトケノザ咲く
 イヌフグリ・菜の花すでに咲き初めぬ冬来りなば春遠からじと
 ドングリの実をば探して確かめぬクヌギ、コナラの区別あやしく
                 *
 煮物をば初めてつくる さ・し・す・せ・そ 締め切り迫る吾妹に代はり
091220
 億兆の時を眠らぬ樹々立ちていまひとたびの冬を迎へり
 年の瀬にはや蝋梅の咲き初めぬ美(は)しくはあれどあやふさ秘めて
 一輪のあはれにあらむ連翹の黄も鮮(あざ)らけく年の瀬に咲き
091221
 冬の陽に八重咲く花の白かりき吾(あ)が裡底の面影もまた
 さり気なき美のそこここに隠れゐてそをば認むる吾ら待たなむ
091224
 年暮るる野辺に小春の風吹けば鳥らも憩ふ木々に水辺に
091226 
 柴又でうまき蕎麦食み年の瀬に江戸川べりを友と上りぬ
091228
 ―<信濃なる秘湯奥山田温泉「満山荘」に遊びて>
 山深き湯宿の窓ゆ冬の陽の穂高が嶺に落ちゆくを見き
 陽の落ちしはるかな嶺の連なりに切っ先黒く槍岳浮かぶ
 雪肌の美(は)しき山なみ仰ぎつつ出湯に身をばゆだねけり
 八十路なる湯宿の主(あるじ)公言す戦(いくさ)は敵なり家族と国の
 兄弟を失くしてなほも特攻を志願せりとて老人悔いぬ
091229
 鳥獣の戯画を描ける僧正の名をば騙りし下司を知りけり
091230
 塩魚汁(しょっつる)は魚醤にあればニョクマムで鍋楽しみぬハタハタ入れて
 億兆の時生きてなほ空高く冬迎へ立つメタセコイアの
091231
 落ちかかる冬陽に浮かぶ青鷺の威厳に打たる間近にぞ立ち
 職退きし自由の年の暮れゆきて来る年いかに生きむか思ふ


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日々歌ふ0911(56首+1句)

2009-12-29 12:22:10 | 日々歌ふ2009

091101
 鎌倉の佐助稲荷の手前なる旧友(とも)の邸を一日(ひとひ)訪ひけり
 十日前カナダを共に旅したる友の帰りてわれら招かる
 ミシガンと鎌倉の地を軽々と行きつ戻りつ友は暮らしぬ
 旅語りジェンダー論じ時過ぎぬ友の手(た)づくる午餐食みつつ
 帰りしな山裾のぼり高名な作家の家をのぞき来りき
 カナダより帰りてすぐに「虐殺」をわれら観たれば時差ぼけ押して
 井上の脇にちひさく米原と記してありぬ門柱低く
091103 
 行きずりの画廊をのぞき一瞥でこころ奪はるLuc Nadeau(リュック・ナドー)に
091104
 メイプルの山を昇れば予期もせで雪の世界にわれら入り込む
091105
 薔薇の実を吾妹の摘んで飾れどもわれは気づかず言はるるまでは
               *
 口開けて空に柘榴の浮びけり
091106 
 ふいに言ふリチャード・ギアに吾が顔の似ているなどと若き女性が
 秋一夜「木六駄」などの狂言に腹を抱へぬ千駄ヶ谷にて
091107
 メイプルの色づく岸ゆ名も知らで望みにけりな果てなき湖(うみ)を
091108
 四匹の猫のトイレとエサの世話まかしたわよと吾妹旅立つ
 猫残しカリフォルニアへ吾妹発つホストマザーの傘寿祝ひに
 愛で来る猫らのをれば洗濯もままならずなむオニのゐぬ間の
091109
 北の地に冬の迫れど午後の陽のメイプル照らしわれら迎へぬ
091110 日々歌ふ
 図らずもともに叫べりワイエス!と朝(あした)に浮かぶ丘の納屋見て
091113
 肌濡らす氷雨のごとき雨押して走れば湯気の身体(からだ)より立つ
                    *
 惻々と胸に迫りぬ半世紀隔てて読めばカミュの『ペスト』を
 ファシズムやスターリニズムの不条理に屈せず生きし人らを想ふ
 『ペスト』をば書き終へしときかのカミュは三十三と知りて驚く
                    *
 黒々とメイプル浮かぶ冬近き北の小村に夕陽の落ちて

091117 日々歌ふ
 ―<アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」の試写会を観て>
 八十路来てワイダのつひに描きけり歴史の闇をカティンの森を
 知らざりきワイダの父も彼の森で闇に屠られ埋められしとは
 改めてスターリニズムを憎みけり、ああおぞましき、おぞましきかな!
 凡俗の想像力をナチズムもスターリニズムも嘲笑ひたり
 忘るまじ全体主義が大衆の熱狂ありて生(あ)れしことをば
 吾やつと「灰とダイヤ」に若き日のワイダ託せし痛み知りける
                 *
 墓石にBEERと刻む墓ありて親しみ湧きぬJOHNとJULIAに
 落葉の迫る木々らは秋惜しみ残る黄葉をきらめかせゐぬ
 メイプルの黄葉をかくも敷きつめし小道を行かば幸のありなむ
 メイプルの巨木混りし林をば黄葉を踏みてしばし彷徨ふ
091119
 メイプルの黄葉ぞ映ゆる蒼空を切り裂きゆきぬ飛行機雲の
 息をのみ言葉をのみて仰ぎけりこれぞカナダの錦繍なると
091120
 半世紀前の記憶を共にせし友らと会ひて一夜(ひとよ)くつろぐ
091121
 果てしなき北の大地ゆトロントに近づく際(きは)に陽は落ちゆけり
091122
 音に聞く瀑布の今し轟々と吾が眼前に雪崩れ落ちゆく
 すさまじき飛沫(しぶき)の高く風に舞ひ時おり瀑の姿隠しぬ
 アメリカもカナダもなにも吹き飛ばしただ轟々と瀑の落ちゆく
 時ならぬ驟雨のごとく吾らをも瀑の飛沫は襲ひ来りき
 白き雲白き飛沫は空の青水の青にぞ映えわたりける
 瀑を見る人の姿もおもしろき老若男女人種を問はず
091123 
 照らす陽に瀑布の上ぐる飛沫にぞ虹の架かるを見はるかしけり
 ずぶぬれを覚悟の上で船に乗り瀑布の下に行くひともあり
091124
 晴れ渡る光が丘の広々と黄葉にあふれ吾ら迎へぬ
 青空と黄葉に映えて真白にぞ煙突美(は)しき焼却場の
 をさなごの記憶の渕で金色に永久に光らむ銀杏もみぢの
091125
 銀杏樹の影も惜しまむもみぢ葉のきらめき散りて大地飾るを
 散りがてに光を浴びてユリノキの黄葉ゆれをり大樹にあふれ
 見はるかす銀杏の大樹静もりて光り立ちゐぬ秋の陽ざしに
 青空に湧き立つ雲の白くして銀杏黄葉の背を飾りけり
091126
 人眠るヒトのねむりを猫眠るネコのねむりを生きとしをれば
091127 
 この国の流行すたりの激しくて木立(コダチ)ダリアのそちこちに咲く
 この国の流行すたりの激しくてシベリアンハスキー今やいづくに
                   *
 ―<「速水御舟―日本画への挑戦―」展(山種美術館)で観し「炎舞」に寄せて>
 人ときに御舟描きし蛾のごとく炎に舞ひて身をば焦がさむ


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日々歌ふ0910(19首)

2009-12-23 10:27:10 | 日々歌ふ2009

091004
 侵略に美学あるごと背の高き泡立草の咲き初めにけり
 秋風に揺るる蓼にぞ咲く花にわれも偲ばむ春の花をば
 溝蕎麦の薄桃色に花咲ける見沼の野辺に季(とき)惜しみけり
 野の花を探し求めて稲穂干す苅田に遊ぶ見沼かな
091005
 愛猫のつかず離れず吾妹子(わぎもこ)とわれの間を行き来し暮らす
 葦原も木立も家もいとしかり稲穂色づく田んぼの向かう
091006
 笠間より友持ちくれし栗の実の光る色にぞ秋を知りける
091023
 メイプルの彩る国に友を訪ひ語り遊びてこころ満ち足る
091024
 デラシネと己喩へつ旧友はモントリオールに根づき暮らしぬ
 ミシガンゆ大湖を越えてトロントに朋の来りて旅を共にす
 ケベックにオンタリオにと果てしなき大地を行けり友の車で
 バーバラとラリーのふたりあたたかく迎へくれけり終の住処に
 半年の冬の迫りし北方の小さき村に黄葉散り舞ふ
 目覚むれば空晴れ渡り銀(しろがね)にカナダの野辺を霜覆ひけり
 霜踏みて牧場を行けば昇る陽に遠き木立の黄葉光りぬ
 ケベックでモントリオールでトロントで旧き街にぞわれら惹かるる
 先住の民こそ見えね国なれど肌さまざまに人の街ゆく
091027
 カナダでは舌と胃の腑に味深きシリア料理の記憶刻まる
 市場にぞ食材活気あふれけるイタリア人の街にしあれば


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日々歌ふ0909(27首)

2009-12-22 16:58:02 | 日々歌ふ2009

090901
 稲みのる見沼田んぼに雑花(あらばな)の可憐に咲きぬときにしぶとく
090902 
 マヌカンの案山子の立ちて稲守るNPOの関わる田には
090904
 蓼紅く野に咲き群れて秋来るをわれ知らざればかなしかりけり
090908
 スポーツと水と油の運動に青春賭けし時代のありき
 青春の悔いのひとつはスポーツを楽しむ余裕持たざりしこと
 革命をわれら夢見ぬデモクラシー、リベラリズムも深く知らずに
 政権の交代すれどデモクラシー、リベラリズムの深まりなくば
                  *
 野の花にまじり咲きゐし韮花にこころ奪はる気品の白く
 かの韮も喰わるることのなかりせば花咲く道のありたるものを
090909
 知らざりし名を知ればこそ野の花は野辺の繁みゆわれにほほえめ
090911
 川の辺に花の朱々咲き初めて彼岸迫るを教へくれけり
090912
 瓜赤く野辺の繁みに隠れ生(な)り秋を告げゐぬ吾(あ)をもいざなひ
090914
 毛虫さへ愛しきものとなりにけり雑花(あらばな)求め野をさまよへば
 ひさびさに午後の都バスに乗りみれば六十路の己れ若く感じぬ
090915 
 晴れやらぬ空にしあればなほ人を紅くいざなふ彼岸の花の
090916
 周平もかつて入りし病院にガン疑はるる友を見舞ひぬ
 CTで診たるかぎりは進行のガンにしあると友は告げらる
 携帯のメールの鳴りて目覚むればガンの疑ひ老友(とも)晴れたりと!
                  *
 気まぐれにハル来りては去りゆきぬ季(とき)にしあらず猫にしあれば
090919
 稲田背に彼岸の花の赤々と目に染み咲きぬデジャヴュ伴ひ
090928
 ―<いつまでもブログに下らぬ散文書くなとのコメントありて>
 なににつけ下るくだらぬ紙一重好み立場で変はるのあらむも
                  *
 ―<第56回日本伝統工芸展で中田博士(29歳)の「真珠光彩壺」を観て>
 端正な白磁の壷に絶妙なゆがみを入れぬ若き作家は
                  *
 道の端にカラタチの実の黄に光る故郷かつて吾にもありき
 送電の鉄塔さへも美しくすつくと立ちて秋は来にけり
 土面(つちも)より一糸まとはぬ裸身にてイヌサフランの花の咲き群る
090929
 ―<長澤英俊展「夢うつつの庭」(遠山記念館)を観て>
 抽象の造形なれど古民家に溶け込み映えて見事なりけり


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日々歌ふ0908(34首)

2009-12-21 15:03:27 | 日々歌ふ2009

090804
 読みうれど書くことできぬ文字ありて変はることなし薔薇と憂鬱
 無知なればメナムが河の意味なるを知らず想ひきメナムのほとりを(改作)
 フィヨルドの旅と見紛ふ美しき家並み映りぬ信濃の湖(うみ)に
 白馬の麓も高き湿原に野の花求め老友(とも)と遊びぬ
090806
 核のなき世界めざすとオバマ言ふ ならば来たれよけふヒロシマに
090807
 われもまたクリスマスには吾子(あこ)のため俄か聖者となりにけるかも
090809
 浦上の廃墟となりし聖堂の悲惨の姿いまも残らば
090810
 彼方には核密約に符合せる史料・証言あまたあれども
 柄になく太郎引きけりアランをば<悲観は気分、楽観は意志>と
090811
 眼裏(まなうら)の瞳つぶらな三つ編みの転校少女おぼろなりけり
 亡き母の八十路を過ぎてうなされきあはれあはれよテストの夢に
 首長き吾妹のわらふわれを見てさても短き首にしあると
 通勤の途次に聴きけりiPodでフィッシャーディスカウの<冬の旅>をば
090814
 闇に咲く白き瓜花見むために見沼の野辺ゆつぼみ採り来ぬ
 安曇野は安曇野なりきいつ来ても嶺の連なり野の広がりて
090819
 その姿日々刻々に変へゆけど富士は不二なり見れば見るほど
090820
 富士見つつ野の花見れば天地(あめつち)のいづこに吾の立つかを思ふ
090821
 血の色に空の染まれど夕焼けにあらざる日々の未だ絶えざる
090822
 ニツポンの世紀が来るぞと浮かれゐし時のありけり鼻高々で
 美しき国にしあるや大海の彼方此方に日米ありて
 円卓の歴史彩る騎士たちよ中華料理よ回転寿司よ
 マイナスに潜むプラスを知らばこそ教師の業(わざ)に醍醐味のあれ
 誰ぞ知る幾千万のいのち断つ戦(いくさ)をなせし真の理由(わけ)をば
 百二百ボルト駆け抜けビリビリとわが身のうちに電気の走る
 戻ること能(あた)はぬ旅を共にする知恵をば持たむわれもわれらも
090823 日々歌ふ
 ―<高校時代の恩師「緑の魔人」新島先生を偲びて>
 甘きもの好む恩師はささやきぬ「アンコの海でのたうちまはらむ」と
090825
 ぬけぬけと<責任力>などといまさらに叫ぶ太郎の見苦しきかな
090828
 PC(パソコン)の前に座れば愛猫の乗り来て邪魔す喉を鳴らして
 睦言を猫語で交はす人ならば八十路過ぎゐむ愛猫ハルと
090830
 ともはあれ自公の政治音立てて崩れ去りゆく音を味はふ
090831
 民(たみ)勝つと言ひ切ることをためらひぬ自公敗れて民主の勝てど
 勝利せる民主の民に潜みゐる自民の民を民(たみ)よ忘れじ
 ムダ遣ひなくすと言へど軍事費に触るる勇気を民主持たざる
 of・forにbyこそありてゆるぎなき民が主(あるじ)の政治とならむ


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日々歌ふ0907(29首)

2009-12-17 23:39:16 | 日々歌ふ2009

090701
 案内(あない)され一夜(ひとよ)訪ひなば忘られぬ古き都の蔵と町家を
 野に遊び地を走りしてつかの間の自由のときをわれ楽しまむ
090702
 河原辺にひとり降りなば喧騒のはるかに遠し古き都は
090703
 絢爛の祭りを前に端境の古都を旅せりひとりゆるゆる
090704 
 根つめて翻訳なせる吾妹子(わぎもこ)の肩をもまずに一日(ひとひ)終はらず
090707
 見上ぐればキスゲの花の黄に染まりわれら迎へぬ霧降る山は
 ベルゲンの一日(ひとひ)想へり霧降の山の気候のめまぐるしきに
090708
 近々と愛でては仰げ咲き群るるキスゲの花を霧降る山に
090710
 すれ違ふ一期一会の人影の霧に霞みぬキスゲ平で
090711
 ―<サイモン&ガーファンクルの東京公演(東京ドーム、7/10)>を聴きて
 サイモン&ガーファンクルの古稀近き熱唱酔はす二時間の余
 いささかの古さもなくばサイモン&ガーファンクルの名曲に酔ふ
 鳴り止まぬ拍手喝采に歌ひける"Sound Of Silence""The Boxer"!
090714
 紅(べに)の字を名にもつ女(ひと)の呉れし花ひとしほ深く紅(くれなゐ)に咲く
090716
 尾瀬ゆけば至仏・燧の峰を背に天地(あめつち)広くキスゲ咲き群る
090718
 キスゲほど目にはつかねど尾瀬の野に紫にほふカキツバタ咲き
 つかの間の夏にしあれば尾瀬の野にちひさきものらいのち育む
                *
 残る日をおまけといつか思ふ時来るやも知れず深く生きれば
090719
 つかの間に虹の架かりて消えゆける天空見たり吾と吾妹と
090721
 愚狂なるわれら選びぬ階段の多き家をば終の住処に
                *
 先になり後になりして尾瀬の野を吾妹と行けりキスゲ咲くなか
090722
 ボロ屑のごとく人をば切捨てて恥じざる者ら屑の屑なる
 民の血を吸ひて赤きかクメールの地にぞ訪ねきアンコールワットを
090725 
 尾瀬の野を戻り来れば午後の陽に目覚め咲きけりヒツジグサたち
 つかの間の夏にしあれば尾瀬の野にちひさきものらいのち育む
                *
 なに恥じてなに誇るかを品性の目安となして人世渡りぬ
 児らあまた早とちりなし彼の山の兎美味とて唱ひ想ひき
 源平の盛衰あれど永らへし蛍滅びて夏闇深し
090726
 野をめぐり眼(まなこ)凝らせば長きこと見れど見えずのいのち見え来る
090731
 霧つつみ風吹きすさぶ高原に花もとめけり露にぬれつつ


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日々歌ふ0906(21首)

2009-12-16 16:26:27 | 日々歌ふ2009

090605
 初夏(はつなつ)の尾瀬を訪ねて思ふまま歩く幸せつひに得たるも
090608
 銀(しろがね)に野をも花をも染めゆきて尾瀬の朝(あした)に霜は降りけり
090610
 つり橋のゆらりゆらりとゆるるごと暮らしのゆるる心のゆるる
 忘れ得ぬ言の葉浮かぶ藤村の<心の宿の宮城野よ>とふ
090613
 一票を投じきたりし選挙ほどたかがされどのことほかになし
 定年後気がつけばつひ下向きて歩きをりけり野の花求め
090614
 さみどりと影の綾なす早苗田を守る人らの心かなしも
 紅暗き器見るたび惜しみけり角偉三郎漆の異才を
090617
 小鹿野なる山間(やまあひ)ふかく誘(いざな)ひて菖蒲とりどり咲き群れにけり
090618
 ランパルとふ名手のありてフルートのバッハ知りける日々の遠かり
 青光る鰯に秋刀魚、鯵、鰹、食みつ生きたし日毎さばきて
 金色(こんじき)の巨大なウンコ見上げつつ笑ひ下りぬ隅田の川を
090620
 褪せぬままCDとなりフェリアーの声深々と今なほ流る
 大のをとなほぼ二人分Konishikiの痩せてなほある三人分は
090622
 瀬戸物とつぶやきみれば自ずから茶碗、どんぶり、雑器の浮かぶ
 野の花も木に咲く花もかなしかり生きとし生けるものみなすべて
 夕張のメロンは今も香るらむマスクメロンを母にぞ生れし
090629
 絢爛の祭りを前に端境の古都を旅せりひとりゆるゆる
090630
 花寺の花は終はれど人知れず可憐に咲ける雑花(あらばな)の見ゆ
 酢をつくる三百年の歳月を刻みし蔵のふいに現る
 哲学の道でものをば思ひけりカメラを友にひとり歩きて


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日々歌ふ0905(34首)

2009-12-16 16:10:36 | 日々歌ふ2009

090502
 つばくらめ飛ぶがごとくに野に咲けるちひさき花を知るぞうれしき
090505
 朝霧に煙(けぶ)る秩父の山肌に血の色深きツツジ咲き初む
090506
 杉を背に萌黄に浮かぶ一本(ひともと)の大樹のあれば里去りがたし
090508
 赤玉とワイン同義のこの国で誰ぞ知りけむソムリエなるを
090510
 大のつく震災襲ふ日のいつか来るをわれらの知るや知らずや
 懐かしき春の小川のさらさらとぴる・ぽる・どぼんと流れをりけり
090513 
 腹周り容貌(かほ)に言ひ訳きかぬもの顕れやすき年齢(とし)とはなりぬ
 ガンジーの名を冠る人沖縄にありたることを吾は忘れじ
090514
 身をこごめ野に咲く花の小さきを数多知り初む見沼の里で
090515
 百歳になり給ひしかと亡き母をあれこれ思ふその命日に
090516
 撫子の色深ければ吾もまた惑ひにけりな虫のごとくに
 空見上げユリノキ咲くを教へけり野の花深く愛づる人らに
090517
 妊娠をもたらすことの生涯にひとたびにして子もひとりなり
 秋来れば炎となりて鳥を呼ぶピラカンサスの花の白きよ
 妻好む梅花空木(バイカウツギ)の花白く清楚に咲くを吾もよろこぶ
 書を捨てて野に出でたれどいつかまた書に戻る日の来ることあらむ
090522
 強欲の挙句のツケを首切りに回す輩の世にぞはばかる
 沢道を辿り登れば山葵田の葉群もあをくふひに現る
090524
 赤々と牧場を染めてヒナゲシのひとのためにぞ咲き乱れける
090526
 四匹の猫をみやげに吾妹子の終(つひ)のすみかに越し来りけり
 本庄のちひさき川にクレソンの群れ咲く花の白きを訪ぬ
090527
 君が代を式の度ごと悪党ら歌はせねらふ再びの道
 本来の意味をば越えて<アドレス>とナニゲに使ふわが六十路かな
 見沼なる代用水の西縁(にしべり)にキツネノカミソリ群れ咲く夏よ
 湯を保つたかが壜にぞ魔法とて形容なせしこころを偲ぶ
090528
 一心に沼のほとりで白鳥の親子つひばむシロツメクサを
090529
 手賀沼のほとりを訪ね宗悦(むねよし)と兼子を偲び蕎麦を食みける
 昼暗き坂道たどり宗悦と兼子・リーチの夢が跡訪ふ
 谷越しに叫び交はせし柳らと志賀の姿のまぼろし浮かぶ
 暮れ方の並木に白くヤマボウシ咲きみちけりな花にあらねど
                  *
 済をチェと州はジュと読む隣国の離島にむごき歴史ありけり
 人生をいづれ引退する時の訪ふまで老ひを楽しみ生きむ
 桃色もピンクもともに怪しげな色合ひかつて帯しときあり
090530
 老ひてなほ野良に働く人びとの見沼の歴史支へをりけり


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日々歌ふ0904(29首)

2009-12-15 22:53:50 | 日々歌ふ2009

090404
 菜の花の向かうに高き一本の立木のごとき生もあるべし
 (一本=ひともと)
 安曇野にわさび田訪ね定年の春楽しまむ白き花愛で
090405
 菜の花は山の斜面に咲き満ちて恋人たちの春を包みぬ
 半ば越す六十路の大地踏みしめて汗をかきつつ走るよろこび
090406
 仁右衛門の名を持つ島にめづらかな赤き実深く色づき生れり
 たくましき漁師をかつて布良(めら)の地で描きし人よ青木繁よ
 (布良=めら)
090407 
 銚子なる外川の名こそかなしけれローカル駅の終のつひなり
 (外川=とかわ)
090408
 唯一国核を使ひしアメリカの責任つひにオバマ認めり
                *
 押し寄せる波濤に独りサーファーの挑み遊びぬ白里(はくり)の海で
 (白里=はくり=九十九里)
090409
 野辺に咲く花々求め埼玉の見沼の里を一日歩きぬ
 (一日=ひとひ)
 知らざりし野の花あまた咲く野辺を平日歩く幸の訪ひける
090410
 菖蒲また絶滅危惧の対象と見沼の里で知るぞかなしき
 (菖蒲=あやめ)
090411
 犬吠ゆる岬の海の荒波の押し寄せ砕け尽きることなし
 大利根と黒き潮のぶつかりてだんばら波の立つを想ひき
090412 
 白富士を背にぞ花々咲き満ちて会はせくれける死者とわれらを
 いつしかにシャガの花咲き職終へしわれを慰むうれしかりけり
090413
 名にし負ふクロフネツツジの大輪の花咲き初めり薄桃色に
 絶滅を危惧されつつも群れ咲きぬ可憐に白き一輪草の
090414
 幕内や大関などと耳慣れし相撲のことば意味を知らざり
090417
 常識を知りたるうへでそれを超え生きむと願ひ生き来しあれど
 霧雨の冷たくあれど十キロの六十路走ればたぎるものある
090418
 敦盛と共に直実花となり今ぞ滅びの際(きは)に立たむか
090421
 汚れなき時短くて花も葉も一期一会の水芭蕉なる
090422
 道すがら山の端白くニリンソウ群れ咲くままにしばし戯る
090424
 奥深き秩父の山の懐に古き御寺の静もりてをり
 夕陽背に新緑光る山の辺にしばし忘るる人をも世をも
090425
 六十路行くわれら誘ひ朝霧の見る間に木々を溶かしゆきけり
090430
 豚からもあれよあれよと人の世に病広がる警告なしに
 六十路にて逢ふひとありぬ老若も性別問はずありがたきかな


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日々歌ふ0903(54首)

2009-12-15 22:37:22 | 日々歌ふ2009
090301 
 妻亡くす友と二人でひさびさに酌み交ふ酒の温もりかなし
 蓼科に永住せむと家持てど妻先立ちぬ友を残して
 最大の失敗だつたと在日の友は嘆けり妻喪ふを
 六十路来て予想だになき喪失の痛手に友は苦しみをりき
 手遅れの肺ガン病みて逝く妻の最期を語る友の横顔
 名にし負ふ論客なれど一篇の詩集編みゐぬ妻逝く友は
 四十年の歳月流れ在日の親しき友と行く末思ふ
 いかに生きいかに死すべき道あらむ六十路の友と一夜惑ひぬ
 三・一のけふを迎へて在日の友は想はむ喪ふものを
                  *
 見えざるは神の御手にはあらずして格差広げり市場原理の
090304
 レポートの評価残れど授業済み終はり近づく教師生活の
 テスト持ちドアを開ければ生徒らの面のほころび拍手起こりぬ
 (面=おも)
 放課後に別れ惜しみて生徒らの写真を共に写しくれけり
 先生!と呼ぶ声ありて振り向けば教へ子笑みて追ひつき来たる
                  *
 いつからかノート代はりとなりにけるPCなくば暮らし立たずも
 カネがカネ生むを求めて狂ひけり心貧しく富める者らの
090305
 いづこにもくちばし長き人をりて不意に現るいざ食む前に
090306
 彼のアラン六十五歳で教職を辞せると知りぬわれと同じく
090308
 学校にいまだ棲みゐて赤シャツも野だいこなどもしぶとかりけり
 亡き母の揚ぐる天ぷら美味なれど母食まざりき油に負けて
090309
 氷張る冬の朝を知らぬまま六十路に春は近づきにけり
 卒寿越え独り暮せる師は言ひぬコンビニなくば生くる能はずと
090310
 吾が胸の片隅占むる石灰の既往の病今に伝ふる
 行く末の不透明なる時代にぞ吾ら去りゆき子らは生き行く
090311
 言の葉の響き似たればたはむれに余裕くしゃくしゃと言ひしことあり
 大陸ゆ牛車と騎馬の伝はれどつひに来たらず馬車の文化の
 (牛車=ぎっしゃ)
090312
 てっぺんのさびしくなれる頭をばザビエル禿げと呼びしひとあり
 捨てがたき『世界』の始末を社会科の職場に託し定年迎ふ
090316
 ―<送別京都旅行の帰途、近江今津の丁子屋に立ち寄る>
 鴨食みつ濁れる酒を酌み交はす琵琶湖のほとり別れ惜しみて
 鴨肉を焼きし煙を逃がさむと窓を開くれば波音聞こゆ
 なれ鮨と濁り酒をも買ひ求め親しくなりぬ近江今津の
 (親しく=ちかしく)
090317
 冠を被ることなき人生を求め生き来し定年迎ふ
090318
 かにかくに飲みて語らひなほ飲みて日々の飛びゆく定年迫り
 教へ子のわれを見つけて飛び来たり写真を共に撮らむと言ひき
090320
 ―<四十年勤めし教職を去る日の来りて>
 教職を子らに惜しまれ去るときの来りて吾のこころ満ち足る
 われ愛す伸びゆく子らに寄り添ひて日々歳々力尽くすを
 (日々=にちにち)
 改めてしみじみ思ふ吾にとり教ふることは学ぶことたりと
 われ学び教へ来りぬ生徒らに己の頭で考へ抜くを
 替へがたき勲章ならむ敬愛の二文字ぞ子らの吾に与へし
                    *
 行きがけの序でに稼ぐ駄賃をば転じし言葉も死語となるらむ
090321
 ロンドンゆ来たる男女と相席で蕎麦をすすりつ彼我を語りぬ
090322
 意図を超え意図に反して人は生き死にゆくものと知るぞかなしき
090323
 ふるさとの馬糞でさへもなつかしき佐藤・鈴木を喩へて言ひし
090325
 溜め込める本と諸々始末しぬ四十年を勤めし職場で
 授業なき校舎で独り退職の始末を為せば子らの訪ひ来る
090326
 →に進み来りぬPCの記号を早く打たむと試し
 (→=矢印)
 一茎の葦にしあれど天地の広大無辺われら知りける
 (天地=あめつち)
090327
 鉢植ゑのすみれの花とわが職の共に終りて春の深まる
 越前と越後の響き越中とかなりの差あるゆゑぞおかしき
090328
 カンパチにマグロ、ヒラメにホタテ貝手巻きに食める幸せありぬ
090329
 クリックをすばやく二回繰り返し電脳宇宙にひとは飛び立つ
 <分かれ目>と涙でひとの歌ひ来しはたと気づかむ係り結びと
                  *
 満開の枝垂桜を一番に見むと行けどもすでに人ある


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