さる6月7日(アメリカ時間、以下同様)に、イラク戦争と占領をアメリカ憲法と国際法に反する不法かつ道徳的にも許されないものだとして、イラク派遣命令を拒否した最初の米軍将校である28歳の日系米人エーレン・ワタダ中尉への、共感と支持が大きなうねりとなってアメリカ社会を動かしつつあります。
来る27日には、全米でワタダ中尉を支持する全米統一行動がよびかけられ、多くの都市でデモや集会が準備されて注目を集めています。ワタダ中尉の所属するワシントン州フォート・ルイス駐屯の陸軍第二歩兵師団第三旅団の最新鋭部隊「ストライカー旅団戦闘チーム」が、その前後にイラク北部モスルに派遣される可能性が強いのです。
ワタダ中尉は今もフォート・ルイスで勤務していますが、イラクへの搭乗を拒否すれば、軍は直ちに中尉を逮捕して軍法会議にかけようとしています。最高2年の禁固または重労働を課そうとしているといわれます。
19日にシアトルのルーテル教会大学で、ワタダ中尉の2回目の記者会見が開かれました。
記者会見には、ハワイから駆けつけている両親とともに、アン・ライト(Ann Wright)という年配の女性が同席しました。
ライトさんは、26年間在籍した陸軍を大佐で退役した後、国務省に16年間勤務し、ナンバー7の高官となりましたが、イラク戦争の開戦に抗議して辞職した女性です。以来、ライトさんはイラク戦争を不法な侵略戦争だとして抗議する運動の先頭に立っています。
ワタダ中尉の父ボブさんは、「息子には法と国の最高の法としての憲法に従うよう教えてきました。…この地球に住む人々を慈しむよう教えてきました」と言い、「息子は困難な道を選びましたが、それは正しい道なのです」と強くワタダ中尉の決断を支持しました。
イラク戦争の開始以来、すでに8000名の一般兵士が<逃亡>しているといわれますが、ライトさんによると、投獄されているのは公然と戦争を非難した一握りの兵士だけだそうです。ワタダ中尉は、将校として初めてこの一握りの兵士に続こうとしているのです。
しかも、ライトさんが指摘しているように、ワタダ中尉はアメリカ憲法と国連憲章、ニュルンベルク裁判で国際的に承認された原則などを再確認し、侵略戦争の実行・計画・謀議とそれへの加担が明確に禁止されていることを根拠に、それらに反する<不法な戦争>への参加を強要する<不法な命令>を拒否する立場を、初めて明確にしたのです。
アメリカ憲法と国連憲章、ニュルンベルク裁判で国際的に確認された原則などを公然と踏みにじっているのは、むしろブッシュ政権のほうなのだということを堂々と宣言しました。
ワタダ中尉のもとには、誹謗・中傷のメールもたくさん来ているようですが、それを上回る共感と連帯・激励のメール、手紙が殺到しているといいます。しかも、後者には軍のあらゆるレベルのメンバーが含まれているそうです。
ワタダ中尉の行動とその支援の広がりは、すでにベトナム戦争以来の軍の中における反戦の最大の動きとなりつつあると言われ始めました。
イラクで身を挺して取材を続ける独立系のジャーナリストDahr Lamailが指摘するように、イラクから米軍を実際に撤退させるためには、兵士と将校の中にワタダ中尉の勇気と決断に続く数百、数千の後続者が現れ、アメリカ国民の世論が沸騰することが不可欠です。
弱冠28歳の一人の日系米人ワタダ中尉の勇気と決断は、そうした歴史の画期を生み出すかもしれません。
27日の全米統一行動の成功を祈りましょう。
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