【16219】084:林 そのかみに背負ひてゆける林道のメバル街道なるをたどれり(今岡悦子)
若狭から京都へ向う鯖街道は知られています。鯖の生き腐れと言われるほど痛みの早い鯖を、その昔は若狭の海から京都へ走って届けたのだとか。
メバル街道というのは初めて目にしました。きっと同様の街道だったと伝えられる林道が残されているのでしょう。
どこの海からどんな町にメバルが運ばれたのでしょうか。想像が膨らみます。
「メバル」は「背負ひてゆける」と「街道」の両方にかかっているのでしょうが、ちょっとわかりにくいかもしれませんね。
【16206】081:洗濯 やさしげな男が着ているTシャツは怒り肩なり洗濯ばさみの(今岡悦子)
Tシャツの類を干すときには気をつけないとこうなりますね。ぼくは針金ハンガーをなで肩に曲げたのを2本使うようにしています。
「やさしげな男」は知り合いなのか、たまたま見かけた他人なのか。やさ男ということなのか。いずれにしても、洗濯ばさみでついた怒り肩Tシャツでは笑ってしまいます。
Tシャツを洗って干したのはそのご当人なのか、つれあいなのか、母親なのか。それによっても意味がちがってきますね。
【16198】053:髪 気がつけば目で追っている髪型が似ているだけの後ろ姿を(五十嵐きよみ)
街中や駅の雑踏の中などで、こういうことがぼくにも時おりあります。
たいていは昔の恋人とか別れて住む娘のことだったりするのですが、一瞬目が離せなくなって追っているそうした心理と情景がするどく切り取られていてさすがですね。