雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

欅を歌ふ

2006-08-25 17:22:33 | 生きとし生けるもの
樹木が好きです。
しみじみ好きになったのは、中年以降でしょうか。
楠、欅、百合の木が、きっとぼくの好きな樹木ベスト3。
楠を詠った歌が29首だとすれば、欅の歌は?
そう思って調べると、楠の歌とダブっているのも含めて26首です。
百合の木はまだ調べていませんが、今のところやっぱり2位でした。


060825 日々歌う
巨樹ありぬ林町なる徳川の屋敷の深く欅一本
(一本=ひともと)
児らととも最後の夏に父描く欅樹高く今も聳ゆる

060719 日々歌う
したたかに梅雨の戻れば繁る葉の欅も楠も緑滴る

060422 日々歌う
楠も銀杏も欅も吾が娘知らぬと知るも北の丸にて

060412 日々歌う
降りしきる夜来の雨に欅樹の黒と萌黄のなほ深まりぬ

060405 日々歌う
濡れ光る黒鮮らけき欅樹の萌黄眼に染む雨の窓辺に

060316 日々歌う
鬱蒼と欅と楠の巨樹並ぶかたへに吾の<筋トレ>の場のありたり

060226 日々歌う
雨止まむ薄日の洩れて欅樹の小枝に溜まる滴光れば
伝蔵も別れを告げむ秩父なる欅の巨樹に藤絡み咲く
(伝蔵=井上伝蔵)

051227 日々歌う
木枯らしに応ふるさまの際立つも欅のゆるる楠のざわめく

051223 日々歌う
薄日さす欅の肌に影落ちて生ける証にアケビの二葉

051213 日々歌う
時をりの風に舞ひ散る欅葉の螺旋を描き落ち行く果ては

051128 日々歌う
数百の鴉啼き交ひ舞ひ飛べば欅紅葉の宵方に消ゆ

051116 日々歌う
朝陽さす欅紅葉の赤々と窓に浮かびて鴉は舞ひぬ

051112 日々歌う
一陣の風吹き渡りいつせいに欅の紅葉宙に舞ひけり
風強み欅紅葉は狂ひ飛び吹雪となりて地吹雪も舞ふ

051016 日々歌う
欅樹の濡れ葉に混じる紅葉も量増しけりな雨の上がりて
(紅葉=もみじば、量=かさ)

050929 日々歌う
空の青欅の緑グランドの何色なるか女生徒の歓声
(歓声=こえ)

050919 日々歌う
目の前の欅の梢揺れをりて鴉が枝葉啄み食めり

050915 日々歌う
さやさやと欅も楠もたゆたひて涼しき風に身を委ねをり
欅樹に囲まれ子らの赤白の帽子の躍る歓声上がる
仰ぎ見る楠の青葉の若くして欅早くも梢色づく

050810 日々歌う
驟雨来て欅の樹下に雨宿る蝉の時雨も降りやまずけり

050518 日々歌う
青嵐欅波打ち身をよじり樹下の紫蘭は身も世もあらず

050414 日々歌う
どこまでも真青な空にカラス飛び高き欅に若葉光れり

050412 日々歌う
濃淡を雨に深めて新緑の欅・楠 連なる巨木

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楠を歌ふ

2006-08-25 12:58:04 | 生きとし生けるもの
昨日の<日々歌う>で楠を歌いました。

黒き実の土を覆ひて公園の大楠告げむ季節の逝くを

ふと思いつき、これまで自分が楠を歌った歌がどのくらいあるだろうと調べてみました。
ブログはこの点、とても便利です。
あっという間にわかりました。
昨年、1月末に突然歌を歌い始めて以来、楠を詠んだ歌は昨日のものを含めて29首もありました。
ほとんど毎月詠んでいます。
多分、ぼくがもっとも親しい樹木が楠なのでしょう。
それが自ずとこのような歌になったのだと思います。
季節の移ろいと、それに託した自分の折々の心が改めて思い返されました。


060724 日々歌う
梅雨寒の雨の上がればヒグラシの声の谺す楠の木立に

060719 日々歌う
したたかに梅雨の戻れば繁る葉の欅も楠も緑滴る

060716 日々歌う
微かなるニーニー蝉の鳴き声を大楠繁る梢に聞くも

060702 日々歌う
大楠の葉音聞きつつ懸垂と腕立て伏せをけふも重ねぬ

060602 日々歌う
黄昏るる楠の大樹の傍らに男の独り立ちすくみをり
(男=をのこ)

060515 日々歌う
楠に花の咲けるを知ればこそ六十路の旅のよろこびもあれ

060501 日々歌う
常緑の楠の落ち葉を踏み分けつ仰げば高く若葉きらめく

060422 日々歌う
楠も銀杏も欅も吾が娘知らぬと知るも北の丸にて

060410 日々歌う
花赤く咲けるがごとに楠の緑覆ひぬ萌ゆる若葉の

060319 日々歌う
轟々と疾風吹き荒れ大楠の枝葉をもぎぬ春の嵐の
(疾風=はやて)

060316 日々歌う
鬱蒼と欅と楠の巨樹並ぶかたへに吾の<筋トレ>の場のありたり

060209 日々歌う
裸木の梢ゆれ舞ひ楠の葉の身悶ゆる朝春の遠かり

060205 日々歌う
冬陽浴び冷たき風にざわめけど葉群豊かに楠はきらめき
(葉群=はむら)

051227 日々歌う
木枯らしに応ふるさまの際立つも欅のゆるる楠のざわめく

051104 日々歌う
黒々と艶めく色に染むといふクスノキの実を吾は見ざりし

051023 日々歌う
花咲けば実もなるものか吾が無知よ楠の葉群の橋に迫りて
楠の名を妹わからぬに一葉を手折り渡しぬその香嗅げよと

050915 日々歌う
さやさやと欅も楠もたゆたひて涼しき風に身を委ねをり
仰ぎ見る楠の青葉の若くして欅早くも梢色づく

050905 日々歌う
雨に濡れ楠の葉色のやさしくてわれ仰ぎ見む新緑のごと

050718 日々歌う
楠の葉がきらめき光りざわめきてガンガンガンと夏来りけり

050521 日々歌う
地味なれば虫の眼以外に映らざるかそけき花の楠を覆ひぬ
校門の見れども見えぬ大楠は子らの頭上で花に覆はる
楠の在るをも知らず校門を子らは黙々けふも過ぎ行く
何年も通ひなれたる校門の大樹を問はれ戸惑ふ子らは

050416 日々歌う
一面の緑の海にそこだけがほんのり赤む楠の新緑

050412 日々歌う
濃淡を雨に深めて新緑の欅・楠 連なる巨木

050223 
楠の葉のさやぎきらめき目にすれば春一番の吹くも楽しく

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生きとし生けるもの

2005-03-31 17:45:01 | 生きとし生けるもの
 歌を詠うようになって、これまで心のどこかでそう感じていたことを言葉として定着させ、表現することができるようになりました。
 その得がたい収穫と喜びの一つが、通勤の途次の道端で日々出会う木々や草花、小鳥たちへの愛着と共感の気持ちを歌にできたことです。
 職場の側にある小学校の植え込みのドウダンツツジの数株を、世話をされている方を除いて、ぼくほどに毎日毎日共感を持って眺めている人間は、おそらくいないでしょう。
 その誰も知らない大事な想いをこうして歌に表現できることは、本当にうれしいことでした。
 ここに歌われている木々や草花、動物たちの姿や表情は、ぼくの心の中だけで生きて死んでいったはずのものでした。
 歌うことができてよかったと、心から思います。
 

050128

燃え盛る紅葉の後の枯れ姿 こんもりひつそり ドウダンツツジ


050131

風もなく潅木揺れてふと見れば二羽の目白が黄花ついばむ


050201

如月の到来告げる明け鴉オドロオドロに啼き叫びたり


050203

明けやらぬ空を切り裂きグァッグァッとカラス急かすな早出のわれを


050205

声高くヒヨドリ二羽が飛び立ってゆれる楠の葉朝日を浴びる

ツツジよりスズランのごと白き花ドウダン飾る季節なつかし


050208

雪柳・桃・沈丁花・姫林檎 花木うれしも ともに春待つ

道かどのハクモクレンは切られしか蕾ふくらみ春待つはずに

窓近く枝差し伸べる桜樹のつぼみ氷雨に打たれかじかむ


050209

つかの間に空気ぬるみてやはらかく雀楽しげわれも浮き立つ

群れ雀なにをついばむ黙々と 空き地枯れ草 朝の日溜まり

雀たちチチチチチチの大合唱 夕陽に浮かぶ高き梢で

アルミ箔咥えてカラス止まりをり梢の上で首を振り振る


050210

そういへば近ごろ聞かぬあのカラス バカアバカアと啼く胴間声


050212

遊歩道誘ひしままにうかうかと山に登りぬ四万温泉郷

登るほど陽射し景色は開けたり未踏の落ち葉踏む息荒く

水晶を採りしと謂はるる山頂に立てばをかしきなぜここに立つ

落ち葉雪踏みしめ下る森木立 野猿カモシカ幻像のごと

宿に着き水晶山に登りしと言へば笑はるよくぞ今頃

明けぬれば四万はしんしん雪の中 子連れ野猿らいかに過ごさむ

050218

雪柳かすかに芽吹き白き花まぶたに咲けり霞のごとく


050219

鈍色に街寒々と静まれり空き地に白く夜半の雪跡


050223

枝揺れて眼凝らせば紅の花に隠るる目白一羽二羽

忙しく梅の蜜吸ふつがいなれ二羽の目白よ春は近きか

楠の葉のさやぎきらめき目にすれば春一番の吹くも楽しく

楠さやぎそよぎざわめききらめきて春一番は吹き渡りけり

月まるく春一番の吹きし空おぼろのどかに浮かびをりけり


050225

両端に鉛結ふ糸夕空に放てばヤンマ絡まり落ちぬ


050228

点々と春告ぐ色は濃かりけり水路の端(はた)に福寿草見ゆ

雪原に矯められ刈られ身もだえし林檎樹立てりオブジェのごとく

モーツァルト静かに聴けば百舌啼きて冬惜しまむか如月去るも


050302

猫たちのごろ寝うたた寝するを真似 人も転がる床暖房に

飼いをりしうさぎは鼬(イタチ)に喰はれけり白き毛皮の骸(むくろ)残して


050303

面影の橋を過ぎれば神田川水音急に高く聞こゆる


050304

畦に撒く泥を探ればピチピチと小鮒掌(て)に撥ぬかいぼり(掻き掘り)懐かし


050305

逃げ走る飼ひ豚捕らふ途(みち)難く辛くも掴む螺旋の尻尾


050308

芽吹く見て真白薄紅あえかにも心の真中ハナミズキ咲く


050315

春やよひ神田川沿ひを遡る一瞬雪舞ふ中野弥生町

遡行して水細れども神田川魚影悠々カモ遊びをり


050319

道の端に可憐に咲きしイヌフグリ果実のせいでふふふの汚名

翌檜の孤独深むるウソといふ 待てば椎(マテバシイ)なる切なき表記

スダジイの頭陀椎なるを知ればなほむさ苦しくも頭陀爺と聞ゆ

ジャスミンの二階の窓をも埋め尽くし日光(ひかげ)失ふ人棲む家よ

三春なる滝のごとくに咲き激(ばし)る枝垂桜を目にして死なむ

愛されず憤怒の相で猛く伸ぶローズマリーの花は星のごと


050320

シャンツァイ(香菜)をンゴー、ンゴーと覚えしはハーノイなりき食うまき街

火炎樹よブーゲンビレアよ沖縄でベトナムで咲け熱帯の花

黄に染めよ菜の花畑雲南を ヤゴ喰ふわれに菜種油染むる

いつもとはちがふ裏道ふと思ひ曲がれば辛夷しんしんと咲く

何輪か狂ひ咲けれど木瓜の花ふたたび咲かむ真春の来れば

あをめるを見るたび想ふ琢木を今年も芽吹く柳やはらかに


050325

森閑と白木蓮の咲きわたる路地に佇み独り見上ぐる

刈り込まれ瀕死のごとき植え込みの連翹咲けり ああよく咲けり
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