雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

日々歌ふ0807(60首)

2008-07-31 23:57:10 | 日々歌ふ2008

080701
 夕光に愛の成就を待つごとくアガパンサスのつぼみ光りぬ
 (夕光=ゆうかげ)
 全身を口と化すごと餌を求めツバメの子らの夏を呼びけり
080703
 ギボウシのうつむく花に身をかがめこころを寄する日のあらふとは
 妖しくもノウゼンカズラ浮かび咲く季のめぐりに不意を衝かるる
 (季=とき)
080706
 ひとを恋ひ愛することの想はるるアガパンサスの花咲くころは
 軒の端にデュランタ咲きし家ありてわれをいざなふ路地奥ふかく
080707
 ―<時計草(Passion Flower)の花を初めて見て>
 UFOと見まがふ花にキリストの受難を見しやザビエルなども
080709
 人の世の腐臭をはらひカンナ咲く黄もあざやかに夏の陽浴びて
080710
 ビル影の谷間に仰ぐニコライの御堂の青く典雅なりける
 カンカンと警報鳴ればガウガウと電車過ぎ行く街のありたり
 ―<道の端に咲く花の崑崙花と知りて>
 はるかなる崑崙山に降り積むる雪の白きを道の端に知る
080711
 沐浴を終へしばかりか裸身に水したたりて未草咲く
 (裸身=はだかみ、未草=ひつじぐさ)
 そこかしこアガパンサスの咲き満てど人世に深き闇の迫りて
080712
 睦まじき異国の父娘過ぎ行くを見送り写すわれ許されよ
 (父娘=おやこ)
 むらさきの露草みれば想はるる母の好みし花のあれこれ
080713 
 地味に見え実はおしゃれなカルガモの朱きブーツを短く履きて
080714
 締め切りの前夜徹する悪癖のわれを自称す<ギリギリス>とて
080716
 ムグンファとムクゲと言ふを海隔て未だ知らざる互ひの民の
080717
 ―<南米原産のアメリカデイゴの雑種・サンゴシトウに寄す>
 腕をあげ天を仰ぎて咲く花の異形に想ふ流されし血を
 見上ぐればイロハモミジの一枝の赤く染まりぬ梅雨も明けざるに
 ―<リー・チーシアン監督作品『1978年、冬。』を観て>
 文革の終る世界の片隅で切なき恋の生れて死にゆく
 (生れて=あれて)
080719
 うつむきて桔梗の咲けど屈せざる気品の匂ふうすむらさきに
 日々これが最後と過ぎて明日からはつひに最後の夏休みなる
080720
 花も咲き実も生るものと知りてなほ蒟蒻の実と信じがたかり
080721
 南国を遠く離れて咲く花のひときは赤き色のかなしき
 ウイキョウの黄の花浮かぶ情景のはるかに遠き太田胃散に
 たかが猫されど猫なれ面ざしの深きに打たる一会の猫に
080722
 四、五階のビル壁すべて埋めつくし花朝顔の猛く咲きゐつ
 ファーブルと奥本教授の夢詰まる虫の館の千駄木にあり
 (奥本教授=奥本大三郎埼玉大教授。『ファーブル昆虫記』全10巻の単独訳をめざす仏文学者)
080725
 逝く友を悼み登れば山頂の前期高齢われらを招く
 登り来てふりかへり見る山並みの彼方に覗く蓼科の峰
 名は体と爆裂火口のすさまじき跡をば残す硫黄の峰は
 山頂に立てば息のむ横岳よ赤岳、阿弥陀よ!迫る峰々
 いつの日か縦走せむとて横岳に連なる高き赤岳見惚る
 山路来て不意に明かるく陽のさせばひときは明かくコオニユリ咲く
080726 
 夏山の涼しき風の露結びうすむらさきの風露とならむ
 虫愛づるうすむらさきのはかなげな花を名づけて風露といふは
 腰かがめ眼凝らせば白蝶の翅のやぶれて蜜を吸ひをり
 飲んでよし冷やしてよしの湧き水に山小屋の夏なほすずしかり
 明けぬれば天空高く白月の下弦に浮かぶ山の朝に
 山中の立て札記す<テン、オコジョ、カモシカその他先住民以外>立入禁止と
080727
 陽のささぬ山路のそでの木のうろに苔の光りてわれを誘ふ
 若駒の面を連ねてコマクサの健気に咲ける砂礫岩地に
 (面=おも)
 白絹を織りなすごとに滝川の巌を激る水音とほく
 (激る=はしる)
 君見しや白滝を背に青あをと桂葉枝垂れゆれゐるさまを
080728 
 木曽路なる川のほとりに咲くといふあをむらさきの淡き花知る
 暮れなづむ山あひに咲く苧環の思ひを秘めてうつむくごとに
 (苧環=をだまき)
 スカンポの群れ咲く崖に爆裂の記憶とどめて硫黄が岳は
080729 
 火の山の石の狭間ゆつややかな葉をしげらせて黄花の咲くも
 木洩れ陽のときをり照らす深山路に浮かぶ若葉の色ぞかなしき
                  *
 不忍の池埋めつくすハスの端に睡蓮ひとつ青冴えに咲く
 池の端に青冴えふかき一輪の睡蓮咲きて浄土の生るる
080730 
 空も焼け水面も焼けてなほ人のいのちくらしの焼かれざらむを
                 *
 蓮池の花のつぼみに塩辛の蜻蛉とまりて世はこともなし
 塩辛と麦藁蜻蛉の関係を知らずに生きて六十路かな
 砂浴びを邪魔されたとて近頃は雀もキレるわれを睨みて
 野点する人なき夏の池の端に緋色も深き傘の目に染む
 (野点=のだて)
080731
 十キロを日々走らむと現役の最後の夏は汗のしたたる
 去りがたく振りかへり見し庭園に夕光戻り緑あふるる
 (夕光=ゆうかげ)
 鮮やかな色むらさきに咲く花のつぼみのどこか桃の実に似て


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色むらさきに咲く花の

2008-07-31 23:19:11 | 日々写す



             鮮やかな色むらさきに咲く花のつぼみのどこか桃の実に似て


           
                         
                   ノボタン(野牡丹)のつぼみ 小石川植物園にて


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蒟蒻の実と信じがたかり2

2008-07-31 21:41:43 | 日々写す



             花も咲き実も生るものと知りてなほ蒟蒻の実と信じがたかり


           

                                    小石川植物園にて


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題詠blog2008<010:蝶>から

2008-07-31 12:52:24 | 題詠blog2008から

たったいま生まれたばかり一面の菜の花に蝶白々と舞う(青野ことり

一読して、鮮烈、清冽なイメージが眼裏に浮かんできます。

<咲き始めたばかり>ではなく<たったいま生まれたばかり>の、<一面の菜の花>畑。
そこに、<紋白蝶舞う>ではなく<蝶白々と舞う>のです。

老若男女の別なく、閉塞状況にイラ立つ息ぐるしい鬱屈の日々がこの列島を覆っています。
ともすれば、人びとは前途に希望を見失い、自他を傷つける破壊的な衝動に身をゆだねかねません。
根本的には、そうした社会の閉塞状況そのものを変えなければ、もちろんどうにもならないことでしょう。
しかし、たったひとつの希望でも、たったひとりの恋人でも、たったひとつの心を打つ美しい情景でもあれば、しばらくは人びとを生の岸辺につなぎ止めてくれます。

青野ことりさんが歌ったこの情景は、まさにそうした情景なのです。
現実の情景なのか、心象風景なのかはわかりません。
しかし、眼裏にこのような情景を浮かべながら、僕たちは自らを死に追いやったり、他人(ひと)を無差別に刺し殺したりはおそらくできないでしょう。

青野さんの歌った<たったいま生まれたばかり一面の菜の花に><白々と舞う>蝶は、はるか昔、終戦直後に若き黒田三郎の歌った<僕のなかを明日の方へとぶ/白い美しい蝶>と思わず重なりました。


  僕はまるでちがって  黒田三郎

僕はまるでちがってしまったのだ
なるほど僕は昨日と同じネクタイをして
昨日と同じように貧乏で
昨日と同じように何にも取柄がない
それでも僕はまるでちがってしまったのだ
なるほど僕は昨日と同じ服を着て
昨日と同じように飲んだくれで
昨日と同じように不器用にこの世に生きている
それでも僕はまるでちがってしまったのだ
ああ
薄笑いやニヤニヤ笑い
口をゆがめた笑いや馬鹿笑いのなかで
僕はじっと眼をつぶる
すると
僕のなかを明日の方へとぶ
白い美しい蝶がいるのだ 


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庭園に夕光(ゆうかげ)戻り

2008-07-31 10:04:53 | 日々写す



            去りがたく振りかへり見し庭園に夕光(ゆうかげ)戻り緑あふるる


           

                                        六義園にて


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080731 日々歌ふ

2008-07-31 09:58:20 | 日々歌ふ


十キロを日々走らむと現役の最後の夏は汗のしたたる

去りがたく振りかへり見し庭園に夕光戻り緑あふるる
(夕光=ゆうかげ)

鮮やかな色むらさきに咲く花のつぼみのどこか桃の実に似て


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池の端に緋色も深き

2008-07-30 17:17:23 | 日々写す



           野点(のだて)する人なき夏の池の端に緋色も深き傘の目に染む


 

                                                 不忍池にて


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近頃は雀もキレる

2008-07-30 11:51:55 | 日々写す



              砂浴びを邪魔されたとて近頃は雀もキレるわれを睨みて


           

                                        不忍池にて


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塩辛の蜻蛉とまりて

2008-07-30 11:03:11 | 日々写す



              蓮池の花のつぼみに塩辛の蜻蛉とまりて世はこともなく

               塩辛と麦藁蜻蛉の関係を知らずに生きて六十路かな


           

                                        不忍池にて


いやあ、驚きました!
自分の無知さ加減に、です。
子どものときから親しんできたシオカラトンボとムギワラトンボ。
ほぼ60年間、別種のトンボとばかり思い込んできました。
<塩辛>の、<塩>はともかく、<塩辛>ってなんだと思い、調べてみたところ、Wikipediaにシオカラとムギワラの想像もつかなかった関係が書いてあったのです。

「雌雄で大きさはあまり変わらないが、老熟したものでは雄と雌とで体色が著しく異なっている。雄は老熟するにつれて体全体が黒色となり、胸部~腹部前方が灰白色の粉で覆われるようになってツートンカラーの色彩となる。この粉を塩に見立てたのが名前の由来である。雌や未成熟の雄では黄色に小さな黒い斑紋が散在するので、ムギワラトンボ(麦藁蜻蛉)とも呼ばれる。稀に雌でも粉に覆われて"シオカラ型"になるものもあるが、複眼は緑色で、複眼の青い雄と区別できる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%9C

みなさんはご存知でした?
そうですよねえ…。
無知(思い込み?)ってこわいですねえ。
トホホホ。


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080730 日々歌ふ

2008-07-30 00:07:41 | 日々歌ふ


空も焼け水面も焼けてなほ人のいのちくらしの焼かれざらむを

                *

蓮池の花のつぼみに塩辛の蜻蛉とまりて世はこともなし

塩辛と麦藁蜻蛉の関係を知らずに生きて六十路かな

砂浴びを邪魔されたとて近頃は雀もキレるわれを睨みて

野点する人なき夏の池の端に緋色も深き傘の目に染む
(野点=のだて)


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