竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

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なぜクラゲに骨がないの?「猿の肝」の比較研究

2010年08月21日 | 日記
奈良の市窪猿の話は「猿の生肝」という話型で全国的に語られています。
奈良の話では、ヒラメが告げ口しますが、全国的にはクラゲが告げ口をして、
その罰で骨抜きにされたと語る事例が多いです。
つまり、クラゲに骨のない由来などで結ぶ動物昔話になっています。

全国的に多い話のパターンを紹介します。

竜宮の乙姫が病気になり、猿の生肝を食うとなおるという。
竜王の命令で、亀が猿をだまして連れてくる。
ところが門番のクラゲが、猿に生肝を取るのだと告げてしまう。
猿は肝を木に干してきたと亀をあざむき、
陸地につれ帰らせて逃げてしまう。
クラゲは罰として骨を抜かれ、あのような姿になる。

奈良の話では、竜宮城の乙姫さんが気まぐれに
「猿の肝 食べてみたいわぁ」と言うのですが、
たいていは病気を治すために猿の生肝を調達にいくことになっています。

文献では『今昔物語集』巻5に、妻の亀が懐妊して生肝を欲しがったので、
夫の亀が猿を連れに行く話があります。

国際的には「心臓を置き忘れた猿」(Monkey who Left his Heart at Home)
と呼ぶ話型に属し、
この昔話の原型は、古代インドの説話集『パンチャ=タントラ』や
ジャータカ(本生経)に、猿とワニの組み合わせでみえ、
東西アジアの諸地域には、これらの文献の諸国語訳をとおして、
伝えられた時代があったようです。
朝鮮では兎と亀、タイのシャン族では猿とワニ、
チベットでは猿と亀として語られます。
東ヨーロッパにも知られ、また、アフリカ、南アメリカにも類話があります。

参考資料:『日本昔話事典』(弘文堂)の項目「クラゲ骨なし」(中島恵子著)より


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