えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・新年の忖度

2020年01月11日 | コラム
 最寄りのゲームセンターはまだ近所の学校が休みのせいか閑散としていた。筐体の大半はトリプルキャッチャーで、奥のほうに二本手のアームの橋渡しの景品はあるものの、取られ残りの景品が立ち並んでいる。トリプルキャッチャーにはいっこうに慣れない。一応、アームの差し込み具合やアームの落下中にホールドするボタンのタイミングといったこつは存在するものの、大手のゲームセンターではガチャンとアームが閉じても数秒間空中にとどまり、景品が自重で落下するように調整されているので、最終的には景品の下に敷かれているプラスチックボールなどのご機嫌に左右される。小さな筐体のアームも少し前までは針金の先端をスプーン状に叩きのばしたような、ボタンのタイミングさえつかめていれば景品を素直に取れるものが多かったのだが、今では他の筐体と同じくSEGAの「UFOキャッチャー」式にプラスチックのアームと金属の爪が別々になった、取りづらいものに変わっていた。それでも興味本位で百円を入れて試す。偶然、景品のひっかかりが成功して目的のぬいぐるみが吊り上がり、取り出し口の近くへ落ちた。

 これがいけなかった。

 案の定、偶然は一回こっきりで、昼休みと共に小銭が消えてゆくが景品は爪にひっかかることもなくアームをすり抜けてかすめ、開始早々から店員を呼ぶことになった。新しい景品を入れる支度をしていた青い髪の店員は、はきはきした調子で景品を取り出し口のふちに立てかけると、「また何かあれば」と去っていった。同じやり取りにごめんなさいを付与して直してもらうこと三回、千円が尽きたあたりで景品はようやく諦めたように落下する。面白くないのだが、面白くない。

 やっぱりそれがよくなかったのか、欲しかったがトリプルキャッチャーであきらめていた景品がシーズンオフで橋渡しの台に移されたのを見て百円を投じ、昨今には珍しく計算通りにアームがしっかり動く力強さへ調子にのり、狙いを失敗して再度ごめんなさいと店員の情にすがる一幕が開催されるのは次の日だった。面白いのだが、面白くない。久々に箱ものに手を出してみようかとも思ったが、ツメがかすめるだけで止まるアームへ苛立つ他の客を見て、そそくさとその場を後にした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ・星明りのドラム缶 | トップ | :布団の中から合わせる顔がない »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

コラム」カテゴリの最新記事