えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

<遊び心のプログラム>番外編:機械の機嫌

2014年10月11日 | コラム
 旅行から帰ってきてまずすることは部屋のニンテンドウ64のスイッチを入れることだ。以前ほんの一週間ほどほったらかしていただけで『風来のシレン2』のデータを吹っ飛ばした実績を持つかれは先代の64に引き続いて気難しい。恐る恐るスイッチを入れる。機器に電気が通じたことを示す赤ランプが点るが、画面からは「ぶちっ」と電線がはじけたような音と一瞬黒い画面を白い真一文字の光が明滅したきり沈黙を保っている。朝から出かけなければいけない次の日よりも今正常に動かない機械の方が心配になり何度もスイッチを操作した。画面は暗いままだった。電源アダプタや画面を表示するために接続するコードをつなげ直しても頑なにゲーム機は黒い画面を表示し続ける。

 意を決しゲーム機へ差し込みっぱなしのソフトウェアのカセットへと手を伸ばした。力を込めてカセットをゲーム機から引き抜く。ぐらつく端子が上手く噛み合うことを願ってゲーム機の差込口へ灰色のカセットを押し入れ、もう一度電源のスイッチを入れる。電子レンジの回転音を上下に揺らしたような不安定な音と共に赤青緑の光の三原色で構成されたブロックが乱雑に画面へ現れた。スイッチを切った。カセットを数回抜き差ししてしばらく、やっとゲームのタイトルロゴが画面へ表示される。
悦び覚めやらぬまま一息ついて中途のデータを選んでゲームを始めた。

 何事もなかったかのようにキャラクターを操作して先の苦労も忘れたころ、ふいに文字を構成する白いドットがぐちゃぐちゃに散らばって画面は私の手に握られたコントローラの操作を一切受け付けなくなった。凍りついた画面を称してフリーズとはよく称したものだが、ゲームが動かない現状をことばに託しても仕方ないのでスイッチを切り、電源を点けた。正常に表示されたロゴに安堵したのもつかの間、真っ先に表示されたのは無機質な白文字でデータ消失を告げるメッセージだった。

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