犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>裁判で技術の議論をする意味 つづき17

2016年02月17日 | 辰巳ダム裁判
犀川総合開発事業で多目的ダムを建設

 犀川の整備水準は、すでに犀川ダム、内川ダムが造られて辰巳ダム事業以前から治水整備水準が高かったのでさらに高くなった。治水のために、さらにダムが必要とされていたわけではないが、治水の整備水準を上げざるを得ない事情があった。

 (裁判の判断との関係はないが、)「河川総合開発事業」という国のしくみがある。戦後、電源開発、食糧増産に加えて水害防止の3つの効果を目論んで進められた事業で、この看板の中身は多目的ダム建設である。石川県もこの流れに参画し、二級河川犀川の一滴の水も無駄にしないで利用するために多目的ダムが計画された。そして、第一次犀川総合開発事業で犀川ダム、第二次で内川ダムが建設された。

 引き続いて、辰巳ダムを造ることを目的とした第三次犀川総合開発事業が開始された。ダムを造る事業だから、理由は後から、つけられる。発電、上水はボツになって、河川維持用水の一部(辰巳用水に配分)と治水が建前の目的となった。発電と利水は住民の生活実感とも結びついた、目に見える実体があるので誤魔化しにくいが、治水は机上で創造される危険という観念であり、裁量の幅があり、融通はきくということで、金沢市民の安全のためには辰巳ダムが不可欠ということにされた。

 第三次犀川総合開発事業では、治水のために、ダム案、ダム無しの代替案の検討も行われているが、辰巳治水ダム建設事業費の中で実施されている。辰巳ダム建設をするための事業費で、辰巳ダムが妥当であるかどうかの検討が行われており、妥当であるという結論がでなければ、辰巳ダム建設事業費をあてる意義がないのであり、結論が最初から決まっていた。

 役所には、この河川総合開発事業の担当部署として「河川開発課」があった。国に設置されると、事業を進めやすくするために都道府県もこれに習うので、石川県に設けられていた。昔、上京した折りに、国の河川開発課にアポ無しで訪問したことがあるが、担当者は親切に対応してくれた。辰巳ダムは問題があるダムだから、建設を止めるべきだ、みたいなことを当方の作成した資料や冊子を提出して説明したことがあった(^_^;)。辰巳ダム事業が進みはじめて、途中で石川県の「課」が「室」に格下げとなり、事業が終了してほかにダム建設の計画もないので無くなった。

 今後、石川県内で治水ダムが造られるとしたら、大きな洪水氾濫が起きて治水事業の見直しを迫られる機会かな。その際は、多目的ダムではなくて、治水単独のダムということになるのだろうか。
(つづく)
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