奥能登談合事件は、平成19年3月の能登半島地震の災害復旧工事が端緒となったようであるが、類似の浅野川洪水の災害復旧工事では談合がなかったか疑念がわいたので奥能登談合の分析と同じように、入札結果を少し調べてみた。(データと分析の詳細はホームページへ)
入札結果資料は、石川県土木部監理課のホームページから、浅野川洪水災害関連砂防工事11件を抜き出した。いずれも石川県発注の総合評価方式に係る入札結果である。
奥能登談合では、業者間で落札率を石川県発注は95%以下、輪島市発注は97%以下という暗黙の了解があったらしく、高値安定で落札されていた。
一方、浅野川洪水災害関連砂防工事では、落札率が95%以上で3件、90から95%で3件、90%弱が1件、82から84%付近で4件、合計11件となっており、落札率がばらついている。ちなみに、82から84%は最低制限付近で落札されたものである。
入札結果毎に簡単な分析を加えて談合の有無を調べてみた。ただし、この分析は、結果の数値から見て談合の疑いが認められるという独断と偏見の筆者の想像である。入札結果にある各社の技術評価点は、事前に公表されているわけではないので、各入札参加者はわからないことになっている。したがって、談合しても、落札者を決めることはできない、談合できないしくみになっているからである。
総合評価方式では、落札するために「入札価格」だけで決まらず、入札者の技術が「技術評価点」として評価される。「技術評価点」を「入札価格」で割算して求められた数値が「評価値」であり、この評価値の最高点をつけたものが落札者となる。
奥能登談合では、95%という談合の目安となる落札率があったのでわかりやすいが、浅野川洪水災害関連砂防工事では、落札率がばらついており、わかりにくい。落札率についてグループ分けして分析した。
①90%以上のグループ
90%以上は6件ある。うち2件は、応札が1社だけであり、落札率が96.8%、95.8%である。「無競争型」である。もし1社だけに特定しなければならない理由があれば、随意契約でもいいわけで、それをしないで発注者が一般競争入札としたのは、競争入札すべき環境にあったと判断したわけで、これが競争入札にならないのは、業者間の村の掟にしたがって談合が行われたと考えられるケースである。
残りの4件は、応札者が2社から7社と一応は競争の形が整っているケースである。ここでは、最低制限価格の評価点に着目した。各社が最低制限価格を入れた場合に、計算される評価値であり、各社が取りうる最高の評価値である。最低制限価格を下回れば失格となるのでこれ以上の評価値はとれない。この点数と落札者の評価値と比較した。落札者の評価値よりも大きければ、落札のチャンスはあったということになる。この4件のケースでは、落札者の評価値よりも他の業者の取りうる最高の評価値の方がすべてについて上回っている。つまり、落札のチャンスがありながら、そのチャンスをミスミス放棄しており、「競争放棄型」である。
②90%をわずかに下回ったグループ
落札率88%が1件ある。このケースでは、①の「競争放棄型」と同様にほとんどの業者に勝つチャンスがありながら、放棄している。1社だけは勝チャンスがなく、この参加者の最高点を上回る評価値をいれることによってこれを排除することができることになる。これで決めると落札率88%となる。「準競争放棄型」である。
③82~84%グループ
ほぼ最低制限価格で落札しているもので4件ある。もし、談合があるとすれば、なるべく高い価格で落札したいものだろうが、なぜ最低制限価格ギリギリで落札するのだろうか。落札者のメリットはなんだろうか。考えられることは、最低制限価格にギリギリでいれることによって自分の最高の評価値となる。この評価値を上回ることができない入札参加者に対しては何の借りもできないことになる。格上の技術評価点も飛び抜けて高い企業が1件で応札して最低制限価格で落札している。この企業は入札で談合する必要はなく、何の借りもなく受注している。ただ、この企業が応札すれば、ほとんどの件で落札することができるにもかかわらず、全11件でこの1件にしか応札していない。事前に間接的に談合している「受注調整型」である。
その他の3件は、落札者に対して勝チャンスがあったのは、1社あるいは2社である。落札者は最低制限価格を入れることで自分の評価値を最大にして、これよりも上回る1あるいは2の参加者に対してのみ借りを作り、落札したのではないか。「一部競争放棄型」である。
落札価格がばらついていても談合がないとはいえない。
2011.11.13 中 登史紀
入札結果資料は、石川県土木部監理課のホームページから、浅野川洪水災害関連砂防工事11件を抜き出した。いずれも石川県発注の総合評価方式に係る入札結果である。
奥能登談合では、業者間で落札率を石川県発注は95%以下、輪島市発注は97%以下という暗黙の了解があったらしく、高値安定で落札されていた。
一方、浅野川洪水災害関連砂防工事では、落札率が95%以上で3件、90から95%で3件、90%弱が1件、82から84%付近で4件、合計11件となっており、落札率がばらついている。ちなみに、82から84%は最低制限付近で落札されたものである。
入札結果毎に簡単な分析を加えて談合の有無を調べてみた。ただし、この分析は、結果の数値から見て談合の疑いが認められるという独断と偏見の筆者の想像である。入札結果にある各社の技術評価点は、事前に公表されているわけではないので、各入札参加者はわからないことになっている。したがって、談合しても、落札者を決めることはできない、談合できないしくみになっているからである。
総合評価方式では、落札するために「入札価格」だけで決まらず、入札者の技術が「技術評価点」として評価される。「技術評価点」を「入札価格」で割算して求められた数値が「評価値」であり、この評価値の最高点をつけたものが落札者となる。
奥能登談合では、95%という談合の目安となる落札率があったのでわかりやすいが、浅野川洪水災害関連砂防工事では、落札率がばらついており、わかりにくい。落札率についてグループ分けして分析した。
①90%以上のグループ
90%以上は6件ある。うち2件は、応札が1社だけであり、落札率が96.8%、95.8%である。「無競争型」である。もし1社だけに特定しなければならない理由があれば、随意契約でもいいわけで、それをしないで発注者が一般競争入札としたのは、競争入札すべき環境にあったと判断したわけで、これが競争入札にならないのは、業者間の村の掟にしたがって談合が行われたと考えられるケースである。
残りの4件は、応札者が2社から7社と一応は競争の形が整っているケースである。ここでは、最低制限価格の評価点に着目した。各社が最低制限価格を入れた場合に、計算される評価値であり、各社が取りうる最高の評価値である。最低制限価格を下回れば失格となるのでこれ以上の評価値はとれない。この点数と落札者の評価値と比較した。落札者の評価値よりも大きければ、落札のチャンスはあったということになる。この4件のケースでは、落札者の評価値よりも他の業者の取りうる最高の評価値の方がすべてについて上回っている。つまり、落札のチャンスがありながら、そのチャンスをミスミス放棄しており、「競争放棄型」である。
②90%をわずかに下回ったグループ
落札率88%が1件ある。このケースでは、①の「競争放棄型」と同様にほとんどの業者に勝つチャンスがありながら、放棄している。1社だけは勝チャンスがなく、この参加者の最高点を上回る評価値をいれることによってこれを排除することができることになる。これで決めると落札率88%となる。「準競争放棄型」である。
③82~84%グループ
ほぼ最低制限価格で落札しているもので4件ある。もし、談合があるとすれば、なるべく高い価格で落札したいものだろうが、なぜ最低制限価格ギリギリで落札するのだろうか。落札者のメリットはなんだろうか。考えられることは、最低制限価格にギリギリでいれることによって自分の最高の評価値となる。この評価値を上回ることができない入札参加者に対しては何の借りもできないことになる。格上の技術評価点も飛び抜けて高い企業が1件で応札して最低制限価格で落札している。この企業は入札で談合する必要はなく、何の借りもなく受注している。ただ、この企業が応札すれば、ほとんどの件で落札することができるにもかかわらず、全11件でこの1件にしか応札していない。事前に間接的に談合している「受注調整型」である。
その他の3件は、落札者に対して勝チャンスがあったのは、1社あるいは2社である。落札者は最低制限価格を入れることで自分の評価値を最大にして、これよりも上回る1あるいは2の参加者に対してのみ借りを作り、落札したのではないか。「一部競争放棄型」である。
落札価格がばらついていても談合がないとはいえない。
2011.11.13 中 登史紀