【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

有名人

2010-11-05 18:11:44 | Weblog
ネットでよく見かける、著名人の言動をとても荒っぽいことばで非難したりクサしたりする行為は、ジョン・レノンを殺すことで数分間だけ有名になろうとした人間と、同根のような気がします。

【ただいま読書中】
陰陽師(7)天后』岡野玲子 作、夢枕獏 原作、白泉社、1999年(2001年25刷)、771円(税別)
陰陽師(8)大陰』岡野玲子 作、夢枕獏 原作、白泉社、1999年(2001年25刷)、790円(税別)

まずは「囲碁」です。19×19の「天地」に白と黒、つまり陰陽の世界が広がります。
安倍晴明の屋敷になぜか菅原道真が雷となって落ち、それに天徳四年(960年)の宮中歌合わせの話が絡みます。あろうことか源博雅は、二手に分かれた女房たちの右方の講師(歌を詠み上げる役)を仰せつかります。遊びとはいえ、天皇のお声掛かり、しかも歌の“勝負”ですから、宮中にはまた例によっておどろおどろしいものが渦巻くことになります。道真(の怨霊)と真蔦は碁を打ちますが、それは同時に、碁盤を通じて都をフィールドとして呪的な手を打つ“碁”でもありました。
歌合わせで不当な扱いを受けた壬生忠見に対して博雅が朗々と詠う「こひすてふ……」の歌が、まっすぐこちらの胸に突き刺さります。そしてその結果の「凄い情景(博雅の言葉を借りるなら「なにやら凄いことになっているのではないか? 菅公は怒り狂っているようだが……キラキラと美しい花びらも舞い散っているようだ」)」の凄惨さとこの世のものならぬ美しさ。そして、他人を救って自分は墓穴を掘る博雅の“特殊能力”。この第7巻はさまざまな陰陽がらみの“ハイブリッド”が登場して、退屈しません。
第8巻。都はひどい旱(ひでり)となり、雨乞いの祭がおこなわれることになります。晴明にも声がかかりますが、彼はそれをすっぽかし、若狭に出かけます。晴明も雨を降らせようとしている様子ですが、彼は「降る雨の質」を問題にしている様子です。若狭からまっすぐ南下する晴明(と博雅)が目指すのは、天の川。
この旅の過程は、単に雨を降らせるための道行きであるだけではなくて、常に心をニュートラルに保っているように見える晴明の心の奥底にひそんだ“過去”を「水」によって浄化する過程でもあったのです。まったく、いつも複雑に話が組み立てられていて、なかなか読み解くのは大変です(私の読解力が足りない、を言い換えただけですが)。



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