【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ノーベル賞は何かの試験紙?

2010-11-01 18:53:46 | Weblog
国がノーベル賞受賞を妨害した(辞退させた、授賞式に行かせなかった)例がいくつかあります。
1938年化学賞リチャード・クーン、1939年化学賞アドルフ・ブーテナントと同年の医学賞ジェラルド・ドーマクはヒトラーによって辞退させられました。
『ドクトル・ジバゴ』で有名なボリス・パステルナークは1958年文学賞をスターリンによって辞退させられました。
アウンサンスーチーは1991年に平和賞を受賞しましたが、軍事政権に自宅軟禁をされていて授賞式は欠席した、と私は記憶しています。
そして、中国の劉暁波。今刑務所だから授賞式には行けませんね。というか、中国政府(外務省)は公式にノルウェーに文句を言ってました。
ヒトラー、スターリン…………こうして並べてみると、なるほどねえ、と言いたくなるラインナップです。

【ただいま読書中】『破滅の日 ──海外SF傑作選』福島正実 編、講談社文庫、1975年、360円

破滅テーマアンソロジー。目次です。
「太陽系最後の日」アーサー・C・クラーク
「ロト」ウォード・ムーア
「大当りの年」ロバート・A・ハインライン
「終りの日」リチャード・マティスン
「夏は終りぬ」アルフレッド・コッペル
「ひる」ロバート・シェクリイ
「豚の飼育と交配について」レックス・ジャトコ

様々な「世界の終り」が登場します。
太陽がノヴァ化する数時間前の太陽系。破滅に瀕した都市から車で逃げ出す一家の道中。路上で急に裸になる若い女性。荒れ果てた乱交パーティー。世界が終わる日に手に入った退避壕への入場切符。宇宙から落下してきたひる。世話をする豚が一頭もいない植民地。
一つのテーマなのに、よくもまあこれだけバリエーションがあるものだと感心します。しかもこれですべてではないのですから。(長編では『地球最後の日』『渚にて』『復活の日』『マレヴィル』『トリフィド時代』『海竜めざめる』『ポストマン』にJ・G・バラードの「~世界」シリーズ。そうそう、短編だと『無情の月』はぜひこのアンソロジーに入れたいところです)
しかし本書は、作品配列がよく考えられています。読者が退屈しないように、破滅のパターンが次々かわり、舞台は大きくなったり小さくなったりリズムを持っています。そして最後が「豚の飼育と交配について」ですからねえ。いや、本当に豚の飼育と交配のお話なんです。最後の一行で笑っちゃう破滅テーマの作品って、まったくよくもまあこんな話を思いつけたものです。感心。



人気ブログランキングに参加中です。よろしかったら応援クリックをお願いします。