JCP市原時夫です

千葉県房総の睦沢町から、政治・経済・歴史・オペラ・うたごえを考えるgabuku@m12.alpha-net.ne.jp

人に温かい「猫を抱いて像と泳ぐ」小川洋子著

2010年01月23日 | Weblog
 以前に読んだ「博士が愛した数式」でもそうですが、一人一人に暖かい目が、この作品に貫かれています。
 ラストは、「あっと!」驚きますが、淡々とチェスの試合が進みます。チェスを勝敗ではなく2人で作り出す芸術作品として、扱っているところがすごいです。
 「おかしいと思わないかい?だって、偉いお父さんなら、自分が真っ先に犠牲になっても家族を守るはずだろう?なのに、キングは最後まで痛い目に遭わない」チェスを教わった少年の気持ち。
 「いつしか彼は自分がポーンを撫でているのではなく、ポーンに抱き留められているのかもしれないという錯覚に陥った」ポーンは猫。
 「慌てるな、坊や」
 「いいや、運は無関係だ。運がよかったと思える試合でも、それは天から偶然降ってきたのではなく、本人が自分の力で導きだしたものだ。」
 本を読んでいて、ラストの数ページで、書き手の姿がなぜか浮かんできました不思議な本です。

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