JCP市原時夫です

千葉県房総の睦沢町から、政治・経済・歴史・オペラ・うたごえを考えるgabuku@m12.alpha-net.ne.jp

占領時代を詳しく知り、時代を知る。鈴木正四氏と松本清張

2013年03月25日 | Weblog

 鈴木正四さんの「戦後日本の史的分析」を大手の本屋さんの古書フェアーで偶然みつけたものです。同じ時期に、浅田次郎オリジナルセレクションによる、松本清張傑作選「悪党たちの懺悔録」を見つけました。
 「戦後日本の史的分析」1969年6月1日発行ですから、ちょうど私が高校を卒業して、松戸の日本ファイリングという会社に工員として勤めたときです。
 1970年に日本共産党に入党したので、それ以後の政治は実体験しているのですが、ちょうど、それ以前、戦後からそれまでの日本歴史の分析の本です。特に、戦後のアメリカによる占領期が全体の半分ちかく詳しく書かれており、大変に役立ちました。
 もちろん、今日からみれば、時代の制約による認識の誤りもあるのですが、「世界との関連ぬきの現代史とか、発展段階のはっきりしない戦後史とか労働運動のない政治など、私などには考えられもしないものがあまりに多い」と批判し、「歴史は[事実による論理]の学問であると考えるので、基本的な事実を学問的に分析総合して、」具体的な戦後日本の発展過程をえかくことだけを心がけた」とかかれているように。
 事実にもとづく、全体的、発展的な視点は今の私にとっても大いに役立つ本でした。
 戦後の歴史が、アメリカの世界的な支配戦略と世界の発展、その中での日本の位置づけとそれに追随し従属していく、大企業・支配者の思惑とそれとたたかい民主主義とくらしを守る、労働運動・庶民との戦いのなかで歴史が動く姿をリアルに描いています。
 偶然ですがこの本を元に「悪党達の懺悔録」を読むと事件をめるぐ巨大な背景を舞台にした人間模様がよりリアルにつかめました。改めて松本清張のすごさを感じたのです。
 「カルデネアスの船板」は戦争中、戦争に大政翼賛会として、皇国史観の一員だっt人物が、戦後、史的唯物論に転向、されに、政治の右傾化の中で、戦前に戻っていく、歴史家を画いています。
 「戦後日本の史的分析」を見ると、この、政治の変化の過程がよくわかります。そして、鈴木正四氏は戦前も戦後も一貫して、平和と民主主義を命がけで貫いた人物でることを考えると、松本清張氏のエンターテナーとしての力量と共に、鈴木正四氏の生き方に感動を覚えます。
 加藤周一氏が戦争に協力した知識人を強く批判していたこととを思い浮かべました。
 もう一編は、「黒地の絵」です。朝鮮戦争にかり出される、米兵が一時的に駐屯した地域の住民を蹂躙し、狂わされた一人の人物の思わぬ復讐劇です。
 松本清張氏は、犯罪を犯した米兵の置かれた位置、狂わされた日本人の姿を冷静に見つめています。
 「戦後日本の史的分析」を読むと、この事件の真犯人は、アメリカ・日本の支配者だということが分かります。
 なお、ここでは、戦争のきっかけは南朝鮮からの、武力侵攻としていますが、今日では北朝鮮の武力侵攻からはじまったと明らかになっています。
 そして、スターリンの思惑も。
 松本氏はこうした、大きな政治の動きに触れながら、読者を惹きつける作品に仕上げています。
 おもしろうと言うより、ぞっとする作品です。
 浅田次郎氏のすぐれたセレクションの力でしょう。
 鈴木正四氏は、もっと早く知っていたら、加藤周一氏、ピカソとともに逢いたかった一人です。理解しているというのでなく、どんな人間なのだろかということです。

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