2007年7月25日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> いい音のするステレオ?その3

 スピーカーの性能を決定するのに「箱を響かせない」というファクターがあることはこれまでにお話しいたしました。では箱が共鳴しなければ必ずいいスピーカーができるのかというとそうは簡単にはいきません。お聴きになったことはあると思いますが、さらに周波数特性と応答性というファクターがあります。一般的に周波数特性という言葉は、皆さんにも馴染みがあるのではないかと思いますのであまり詳しくは説明しませんが、スピーカーの性能を考える上で重要な要素であることには違いありません。しかし周波数特性が良いのにもかかわらず、実際の音を聴いてみるとさほどでもないと感じるスピーカーが多いのは、さきほどいったもうひとつの要素である「応答性」という従来カタログ上のスペックとしてはあまり重要視されてこなかったファクターが大きな要因になっていることが多いのです。応答性とは、スピーカーの振動板の入力信号に対する応答特性のことをいいます。つまり入力にパルスのような信号が入った時、振動板が止まることも含めて、それに正しく応答することができるかということです。当然応答性の悪いスピーカーでは、ギターの立ち上がる瞬間の微妙な音を再現できません。どうしても音が鈍り、名器が名器でなくなってしまいます。しかし物には全て質量があり、それを急激に動かしたり止めたりするというのはとても難しいことなのですが、これをうまく解決しないことには、いくら周波数特性がすぐれているスピーカーを作っても、原音再生は到底望めません。また振動板を瞬時に動かしたり止めたりすることができても、箱が振動していたのでは余計な音が発生してしまいますし、しかもその箱の振動も、振動板と同じように止まってくれなくては余計な音がいつまでも響くことになってしまって、これまた意味がありません。

そしてもうひとつ忘れてならないことは、振動板の材料的な強度です。応答性を高くするためには、振動板の質量を限りなく小さくしてやる必要がありますが、そうすると振動板が自らの振動によって歪みやすくなってしまい、正しい波形を再生することができなくなってしまいます。このようにオーディオのスピーカーはさまざまな制約に縛られて成り立っていますが、音の発生源として考えた時、ギターの場合、音はパルス波形に近く、表面板などを弦の振動に敏感に反応させてやることが必要なだけでなく、反対にどこまで長く振動していられるかが問われることになり、それはそれでまた難しい問題を抱えています。いずれにしてもギターは、音そのもののパワーは他の楽器と比べて大変小さいですが、ダイナミックレンジは広く、しかも音色の変化は無限で、繊細な響が特徴です。そんなギターのもっている周波数範囲はかなり低く、決してスピーカーで再生し易い帯域ではありません。従ってクラシックギターの音をよく再現してくれるスピーカーは大変少ないということがいえますし、反対にクラシックギターの音をうまく再生してくれるスピーカーは、その他の音もよく再生できるといえるかもしれません。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)

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